第4話家康の顔

その頃家康の顔は長年の苦労が滲み出て

そのとぼけた性格とあいまって狸顔と呼ばれていた。

しかしである。

趣味が薬というだけあって元気はつらつ、それに加えて

豊家の混乱である。

活発にならざるを得ない。

しかも加藤福島秀吉子飼いの武将ならびに大政所と顔を合わすと

嫌われ者のはずがなにやら好意すら感じる。

これは嫌われ役を三成が引き受けてくれているからである。

茶々もまた嫌われ役を演じずにはいられない事情があった。

秀頼を大政所、秀吉から避けさせねばならなかったからである。

なかでも祖母である大政所は何かにつけ面倒をみたがる。

本来なら乳母をつけなければならないが茶々はそれを断り自らが育てていた。

それも大政所が気に入らない所である。

大政所は悩んでいた。

豊家は秀吉と作ったが、壊れつつある。

いや秀頼がうまれた時点で壊れた。

後を託すにはあのお方しかいない。


その家康がしたり狸顔で動き出そうとしていた。

忍びからの報告も聞いている。

自分の目で確かめねばなるまい。

秀頼の顔を。

そして修理の顔も。


後に家康は修理を謀反の疑いで

江戸へ軟禁する。


秀頼に面会を求めた。

しかし断られ家康の子、秀康を大坂へ

向かわせた。

一時期人質として大坂城にいた。

北政所を母と呼ぶほど。


秀康よく見よ、これが近江顔じゃ。


似顔絵、切れ長の目に半月型の顔。


この絵に似ているかどうか、

確かめて参れ。


はっ。


大坂城大広間


秀康殿大儀であった。


そこには似顔絵通りの若者がいた。

このまっすぐな秀康は皆から好かれた。

徳川家家老大久保も心酔した一人である。


大坂城に来たからには母上に会わねば。


北政所の部屋の中。

先ほどの大広間は人と人の間が広かったが

今は膝を突き合わせている。


母上久しぶりでござる。


久しいの、大きくなられて。

北政所は涙ぐんだ。

子がなかったので人質の大名の妻子を

非常に可愛がった。

秀吉も人たらしと呼ばれるが

子飼いは裏切ったが

北政所は裏切られなかった。

本当の人たらしである。


母上。。

母上に嘘はつけん!

秀頼は修理の子ですな!





  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る