第3話茶々の顔

茶々の顔は三姉妹で一番母お市の方に似ていたという。

お市の方に密かに憧れのあった秀吉は一番面影のある

茶々を側室にした。

茶々は近江の生まれである。

近江の古くから続く名家浅井家に生まれ

近江人独特の切れ長の目に丸みを帯びた半月の

綺麗な目をしていた。

近江人といえば三成も長浜で秀吉に拾われ

七本槍の多くは近江ゆかりである。

長浜城主を秀吉が拝命した際配下が必要になったが

秀吉には子がなかった。側室も多かったが

子が産まれることはなかった。

よって城持ちにはなったがそれを運用する

武将がいなかった。そこで長浜のある近江で

多くの者を雇った。

茶々、長浜の縁で関白、太閤時代は周りには

近江人が多かった。

利休と同じく近江人も近江商人といわれるように

己の利益を考える生き物である。

と同時に近江商人には三方良しという考え方がある。

己の利益だけでなく世間も良くなることを考える。

日の本、万民の利益。この時代は争いのない

世の中こそそれであった。


茶々は争いの中生きてきた。

父、兄弟を信長に殺され、母を秀吉に殺され

殺し合いのない世の中をのぞみ。


その全ての答えが

秀吉の子で政権の正当性を継いで行く。

であった。関白の甥でもなくましてや家康でもない。

惜しむらくは秀吉に子種がないことであった。


茶々は女の顔になった。

子を産まねば。


弥三(やさぶ)はおるか。


茶々は修理のことをやさぶと幼名を省略して呼ぶ。


こちらに控えておりまする。


修理は秀吉の馬周りであったが今は幼馴染ということで茶々の側まわりをしていた。

今後について二人で話す最後の結論は子を産まねばならぬ。

それに尽きる。


秀吉には子種がないらしかった。

この相矛盾する問いに対して答えは。。。


程なく子が産まれた。

茶々は満面の笑みであった。が女の顔から

親の顔へと変わろうとしていた。


茶々様、女中がそういうとこのころから


淀殿とお呼び。


叱る様になった。


子が夭逝するとひどく落ち込み顔の頬骨がみえるほどであった。

そんな淀を人々は又産めば良いと慰めた。


程なく秀頼が生まれた。

淀は鬼の顔である。

子を守るためには何でもする。

鶴松の死が一層影を落としている。


鶴松の二の舞にはさせとうないのです。


淀の口癖になっていた。


秀次様に御謀反の疑いがあり。

淀周辺からしきりに噂した。

秀次の次は秀頼であることは秀次も公言していたが

淀周辺は強行であった。

無理強いといっても良い。


何かある。


それぞれの思いがこの頃から激しく錯綜していく。


真実がどこにあるかではなく、何を真実とするか。


物語が動き出そうとしていた。












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