Going ago/Coming ago 08

宴もたけなわ、少ないとはいえそれなりに腹も膨れた頃合いに城主は言った。

「さて、ここらで1つ余興を催そう、おい、アレを」

会場にはざわめきが走る。

当然だろう、演目や娯楽などは会場で演奏されている太鼓くらいしかないのだから。

そして、このような政治劇の場では予めあらゆる順序が決まっている。

現代の国会を見ていてわかる通り、基本的には事前の打ち合わせなどでほぼすべてを決めているし、そのように調整もしている。

現代の国会はもうすでに国民へのアピールの場であり、ただの茶番に過ぎない。


そのような排他的な、というか保守的な人物たちにとっては、寝耳に水であったのだろう。

私たちは元よりそんな打ち合わせなど受けてないので関係ないが。


そうして暫く、数人の家臣が持ってきたのはデカい木箱であった。

前の世界では嗅ぎ慣れた、鉄錆と油の香りを伴って。


「かなり昔にこの地に参った商人から譲り受けた代物だ」

だろうな、木箱はかなり古びている。

しかしこのような極北の地にこんな宝物があるとは。

「このガラクタを見事正しく用いて見せた者には望みの褒美を与えよう」

実に政治的な一言だ。

実際それが正しいのかどうかを決定するのは城主本人。

彼の代物を扱えたにせよ、褒美をもらうには納得させるというプロセスが必要。


ぽえーっとしている主は実に麗しいのだが、さて、どう動くべきか。

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