第34話 Lady of the last


飽くなき嫉妬に支えられた敵意は

膨大な混沌へと誘われてゆく

明日の我が身を冒涜するほどの痛み

それが絶対な力へと昇華した時

目の前に対峙するのは正義か悪か



 第三十四話  『Lady of the last』



 暗い部屋に灯るろうそくの炎。

その明かりがゆらゆらと揺れ、外からの空気が部屋に流れ込む。


「何を書いておる?」

「あ、師匠……」

「ほっほ、隠さなくともよいぞ、ベン」

「あ、いや……とても人に見せられるものじゃないだぎゃ、恥ずかしいだぎゃ」

「ベンよ、詩とは己の感情の投影。恥じることはないぞ」

「……」

ベンは顔を俯かせた。

「シトヴァイエンが沈んだそうじゃな……」

「オラもさっき聞いただぎゃ、レジオヌールの戦武艦もついにやられてしまっただぎゃ」

「やはりヤマトは強いの……そしてタケルも……」

ボブソンは、ベンの顔をちらりと見た。ベンはさらに下を俯いた。

「アニキ……いや、タケルという男は確かに強いだぎゃ……体も、心も……だども……」

ベンは、拳を握り締め、肩を震わせた。

ボブソンは、机の上のベンの書いた詩を手にとって読んだ。

「いい詩じゃな……なんというか、相手への尊敬の念を感じる」

「べ、別にオラはタケルを尊敬なんかしていないだぎゃよ……あの男は酷い人間だぎゃ、だからオラはあの男を倒す! そして人間を滅ぼすだぎゃ!」

ベンは勢い良く立ち上がって叫んだ。それを諭すようにボブソンは優しく言った。

「おまえは強うなった……ワシの無我意流(ムガイル)を習得し、そして己の心とも向き合えるまでにもなった……」

「師匠、オラは……オラは本当に強くなれただぎゃか? これでタケルに勝てるだぎゃか?」

ボブソンの肩を強く掴むベン。その顔には不安の色は隠せなかった。

「おのれを信じることじゃ、ベン。一番頼りになるもの、そして最後に頼れるものは己自身なのじゃからな」

「おのれじしん……わ、わかっただぎゃ! オラは強い、だからタケルにも勝つ!」

「そうじゃよ、ベン。己に負けている者が、他人に勝てる道理はなかろう」

「わかっただぎゃ! ありがとう、師匠っ!」


 ダダダッ!

そこに獣人の部下がやってきた。

「ボブソン様、ベン隊長、発進の準備が整いました!」

「よし!……いよいよだぎゃね、首を洗って待っているだぎゃよ、タケル!」

ベンの鋭い眼光は、遠く離れたタケルのもとへと放たれた。

レジオヌールのシトヴァイエンが沈んだ今。

力を温存してある獣人族にとって、ヤマトと餓狼乱を落とす絶好の機会であった。

そして、獣人族にはもうひとつの切り札があったのだ。

戦武艦『アシュギィネ』は、黒々とした鱗を光らせゆっくりと発艦する。

ブリッジで腕組みし、不適な笑みを浮かべる獣人族の王、『我王』。

その真意には、人間にとって皮肉な運命が待ち受けているのだった。



 一方、こちらはタケル達、餓狼乱。

傷だらけの戦武艦シトヴァイエンをなんとか着艦させ、消火活動と応急処置に勤しんでいた。

「どうだ、なんとかなりそうか?」

「だめですアニキ! メイン動力炉もハイドロブースターもイカレてますぜ! 直す時間よりも、まず部品が足らねぇですぜ」

「そうか……まいったなこりゃ……」

タケルは頭を掻きながら、皆の方を見た。しかし、それに答える良い案を持つ者はいなかった。

「いいんですよ、タケルさん。もうこの艦は諦めますから……」

「そうはいかねぇぞ、シャルル。これはおまえの国の象徴だろ? これが沈んだら、レジオヌールのみんなの希望も消えちまうことになる、それでもいいのか?」

「タケルさん……そ、そうですね」

シャルルはタケルの優しさが嬉しかった。

一時は戦火を交えた相手を、恨む事なく味方として受け入れてくれることに。

「とりあえずやってみっか! おうい! 手の空いているヤツは、全て修理に掛かってくれ!」

タケルの合図によって、シトヴァイエンの修理にとりかかる餓狼乱の部下たち。

「どうだ、般若の容態は?」

「ええ……あまり良くないようですね……どこかで安静にしないといけません……」

「そっか……戦武艦の修理、部下の休息、どっちも八方塞がりだな」

タケルは頭をボリボリと掻いて、顔をしかめた。

そこに、サクシオンの長老であるオババがやってきた。

「すいませんですじゃ、タケル様。サクシオンが不甲斐ないばっかりに、迷惑をかけてしもうた……」

「そんなことないさ、気にするな、オババ。それより、艦を修理するのにどこかいい場所はねぇかな?」

「ふむぅ……残念ながら、適した場所を教えることはできませんですじゃ」

「そっか、オババが知らねぇんじゃどうしようもねぇなぁ……困ったぜ」

オババはしばらく黙ってうつむいていたが、あることを思い出したように顔をあげた。

「あの、適した場所というわけじゃないんじゃが……ないわけじゃないですじゃ」

「なに、本当か? どこなんだそこは? そこへ案内してくれ!」

「……ですが、そこは少し訳ありというか……」

「この際、少しぐらいの危険は承知だ。いまはぜいたく言ってる場合じゃねぇんだ」

「そこは、大きな火山に囲まれた場所……ワシらはそこを、『追憶の淵』と呼んでますのじゃ」

「火山に囲まれた場所か……なんだか穏やかそうじゃねぇな?」

「そこには、ちょっと変わった地球の民達が住んでいますのじゃが、ちょっと気難しい連中でな……まぁ、襲って……あ、いや、危害はないと思いますじゃ」

「その言い方、気にいらないねぇ」

紅薔薇が口を挟んだ。

「ほんとね、同じ地球人同士なのに、まるで仲が悪いみたいじゃない」

キリリも、どうやらオババの言葉が気になったようだ。

「でもよ、どっちにしろ、ここにいても戦武艦は直せねぇんだろ?」

「そ、そりゃそうだけど……」

「大丈夫、私がなんとか説得するから」

そこに、体の衰弱したマリューがやってきた。

「簡単に説得できる相手だったら苦労はないわい……」

「どういうこと? オババ様」

意味不明なオババの言葉に、皆が不安に思った。

「おい、まだ寝ていなきゃダメだろ、マリュー」

「そうだよ、寝てなきゃねー☆銀杏はもっと寝ていたいのに☆」

「おまえは寝すぎだろ」

タケルは銀杏の頭をかるく叩いた。

「でへへ……☆」

「こんな大事な時に寝てなんかいられない。それこそ、ラバスやルポシエ達に笑われてしまう!」

「行って話し合ってみないとわからねぇか……五分五分だな……」

「今回はやけに慎重だね? タケルらしくないじゃない」

「そうそう、隊長らしくないない☆」

「あのなぁ、銀杏。俺は隊長じゃなくて、リーダーとしての責任があってだなぁ」

「う……ん……☆」

「聞いてるのか、銀杏?……おい銀杏!」

ドサリ。

銀杏はふらりとその場に倒れてしまった。それを抱えるネパール。

「酷い熱です!」

「だ、大丈夫か、銀杏?……ムリもねぇ、立て続けに戦ってきたから疲れが溜まったんだな」

「銀杏さんはまだ子供ですからね」

「シャルル、おまえもじゅうぶん子供だろ!」

「あ、そうですね、はは」

連続する激戦によって、般若、マリューに続き、銀杏までもが倒れてしまった。

「どうします? このままここにいても、疲れは溜まる一方ですよ?」

「わ、わかった。みんなの治療も兼ねて、追憶の淵とやらへ行ってみるか。何もなきゃいいが、もしもの時は頼りにしてるぜ、マリュー」

タケルは、マリューの肩に手を置いた。

「あ、ああ、やってみるよ」

マリューは少しばかり顔を赤くした。


 そして。半壊したシトヴァイエンを、アマテラスとサンドサーペント号で吊り上げ、追憶の淵へと向かって発進する事になった。

「それにしても、戦武艦クラスのシトヴァイエンを、よくも小型のアマテラスとサンドサーペントで持ち上げることが出来たなぁ」

「どうやら、ヤマトの世界に比べて、ここは重力の負担が少ないみたいですね。シトヴァイエンを持ち上げるだけの出力は十分あるようです。ただ、ニ機の戦武艦でバランスをとらないといけませんね」

「ああ、これじゃ、あんまりスピードは出せねぇなぁ」


 その時、紅薔薇は、腕を組んで何やら考え込んでいた。

(……いくら銀杏が子供だからって、仮にも、もと白狐隊のひとりだよ?

戦闘力や体力は普通の人間の数十倍……ちょっとやそっとで倒れることなんかないハズ……

いやな予感が当たらなきゃいいけど、もし、私の考え通りだとしたら大変な事になる……

ただの思い過ごしならいいけどね……)


 サクシオンの同胞がいるという追憶の淵の民。

はたして、タケル達を素直に受け入れてくれるのだろうか?

そして、紅薔薇の不安とは?



 その頃、ヤマトでは。

「追憶の淵か……」

撫子と萌の精神は、時間によって入れ替わっていた。今は撫子のようだ。

「そこにいる地球人たち、少し興味があるな」

タケル達と同様に、ヤマトの撫子もその情報を得ていた。

地球人の中には、この荒れた大地で満足に食べ物もない生活をしている人間もいた。

その者達に、わずかな食料を与え、情報と引き換えにしていたのだ。

しかし、それは対等な交換に終わる事はなく、情報を引き出された地球人は容赦なく殺された。

「虫ケラの分際で、こちらと対等に条件を出すとは片腹痛い。黙って教えれば良いものを、貴様らには死がお似合いだ」

情報だけ聞き出し、地球人を無残に惨殺する理幻。その場は赤い血で染まっていった。

「撫子様、それでは早速、その追憶の地という場所に向かいましょう」

「うむ、こちらの光明も深手を負ってしまったからな。出来ることなら修復させたい……」

「それならば、その追憶の淵の地球人を脅せば済む事です。なぁに、四、五十人ほど見せしめに殺せば、ヤツらも言うことを聞くでしょう」

「いや、そうではない」

「は? と言いますと……」

「その追憶の淵という場所には、何やら府に落ちないインガを感じる……用心するに越した事はない。抜かるではないぞ、理幻」

「は! この理幻、撫子様の為に全身全霊を尽くす所存で御座います!」

「よし! 光明を追憶の淵へ向かわせろ!」

タケル達と同様に、戦武艦を修理する為、追憶の淵へと向かうヤマトの軍。

またしても、そこで餓狼乱と一戦交える事になるのだろうか?

「それにしましても、よろしいのでしょうか?」

「何がだ?」

「あの裏切り者どもの始末で御座います」

理幻の顔を向けた先には、烏丸神と鉄円が壁に貼り付けられ、その体は傷だらけになっていた。

「この我を欺こうとした罪は重いが、それでもなかなか見所があるな……まだ奴等には使い道がある、そう始末に急ぐこともあるまい……ふふ」

貼り付けにされた烏丸神は気絶していた。鉄円は唇を噛み締めていた。



 そして、数時間後。タケルたち餓狼乱、撫子たちヤマトの軍は、追憶の淵へと近づいていった。

その時、すでに獣人族は、タケル達より早く追憶の淵に到着していた。

「くる……もうすぐここに餓狼乱がくるだっぴょ……そしてヤマトも……」

インガの光に包みまれたポリニャックは、目を閉じ静かに口を開いた。

「おめぇのその極端に先読みする能力、そして戦場全体を一度に把握できる能力。そのニつが、俺の戦闘のインガと合わされば、ヤマトなんか屁でもねぇ。それがタケル相手だとしてもな!」

「ガオウサマ……ダーリ、いやタケルを甘く見てはダメだっぴょ」

「きさま! 我王様に向かってなんて口を聞くのだッ!」

ガイザックは、ポリニャックの耳を乱暴に掴んで、高く持ち上げた。

「いたた! 痛いだっぴょー!」

「放してやれ、ガイザック」

「し、しかし我王様!」

「なんだ? 俺に口答えするってぇのか?」

「い、いえ……失礼しました」

ガイザックは仕方なくポリニャックを放した。

「んで、ポリニャック。奴のどこを甘く見たらいけねぇんだ?」

「ダー……じゃなくてタケルは、いつまでも同じタケルじゃないだっぴょ……」

「同じじゃないですと? どういう事ですかな?」

ハイネロアは、シルクハットのふちを指の先で軽く持ち上げた。

「そう、タケルは進化しているだっぴょ……それも、ウチらが想像もつかない程に……」

「ふん! 笑わせるではないか! 進化だと? それならば、俺たちはもっと強くなればいいだけだ!」

ドスン!

ガイザックは床を足で踏みつけ、自らの力を誇示した。

「そうじゃないだっぴょ……タケルの進化とはただの強さじゃないだっぴょ……いくらガオウサマが強くなったとしても、それには遠く及ばないだっぴょ……」

ざわ……

ブリッジ内にざわめきが起こった。

ポリニャックの言った言葉は、獣人の王、我王に対して侮辱の言葉に違いなかったのだから。

「まるで、タケルは、人間という生物から更に別の生物へと進化していくみたいな言い方ですね」

「くだらねぇ……じゃあ俺は、タケルと戦っても勝つことができねぇって言うのか?」

「わからない……わからないだっぴょ……でも、もうひとつ、小さい何かが突然目覚めて、大きな力へと変化するだっぴょ」

「大きな力……だと?」

「そうだっぴょ、しかも、その力を目覚めさせるのがガオウサマだっぴょ」

「俺が? 目覚めさせるだと?」

ポリニャックは無言でうなずいた。

(力が……目覚める……)

ベンは、その言葉に何かを感じたようだった。

「へん! わかったぜ! それは俺が目覚めさせるんじゃなくて、俺が新たな力に目覚めるってことだな。そうに決まってるぜッ!」

「おお、そうですな! 我王様の力が進化するという予知なのですな!」

「しかし我王よ、今までのポリニャックの予知はほぼ当たっておったぞ? ヤマトの軍を回避する事、地球の地形を把握する事、そして人間どもの集まっている場所を見つける事、どれも間違いはなかったのじゃぞ」

「ボブじぃ、いくらポリニャックでも完全に予知できるってワケじゃねぇ。そこらへんを今回は、ちいっと間違えたんだな。はっは!」

「そうじゃといいが……」

「ボブじぃは心配性なんだよ。なぁに、細かいこと気にするんじゃねぇよ!」

「ではやはり、この地球を統括し、人間どもを支配するのは我ら獣人族なのですね!?」

「当然だ! すべて心配無用だ、ミリョーネ。それにはまず、この追憶の地を利用してやる! タケル達の驚く顔が目に浮かぶぜ! ははは!」

我王は自信満々に笑った。


 特殊な力を持った地球人が住むという、『追憶の淵』。

しかし何故、ここに獣人族の我王たちが、先回りしてタケル達を待ち構えているのだろうか?


 ブリッジを出たベンとポリニャック。

「なぁ、ポリニャック。さっきのあれ……本当だぎゃか?」

「……う~ん、わからないだっぴょ。でも確かに感じただっぴょ……」

「ポリニャックのインガの予知は、今までほとんど当たっていただぎゃ。だから今度も絶対当たると思うだぎゃよ」

「でも、それが、良い事に当たればいいだっぴょが……」

ポリニャックの顔が不安に曇る。

「大丈夫だぎゃ! 絶対良いことだぎゃよ!」

ベンは、ポリニャックの頭を優しく撫でた。


 ベンは思った。

このか弱い命を守ってみせると。このか弱い命を邪険にしたタケルを許せないと。

(ポリニャックの予知……小さな何かが大きな力へと変化する……

それは、きっとオラの事だぎゃ! オラのインガの力が強くなるってことだぎゃ!

そうすりゃ、きっとアニキにだって勝てるだぎゃ!)

タケルに対するベンの執拗なこだわり。

はたしてそれは、タケルを超える事につながるのだろうか?

そして、ポリニャックの予知は一体何を意味するのか?



 一方、タケルたち餓狼乱は。

「あそこか……」

追憶の淵を視界に捉え、アマテラスの向く先には、岩山を加工した城塞が見えた。

「それにしても熱いところだぜ……やけに蒸すなぁ」

「そりゃそうだよ、タケル。あそこを見てごらんよ」

紅薔薇の指差す先には、火山の火口からぐつぐつと煮え立つマグマが見えた。

「ひえぇ! あんなところに落ちたら一巻の終わりだな!」

その恐ろしい光景に、皆の顔が険しく変わった。

それを見たタケルは、何かをひらめいた。

「よぅし! この熱さだから、みんな服を脱ぐ事を許すぞ! 特に女性諸君、豪快にいっちゃってくれ! これは隊長命令である! ぬはは!」

タケルは締まりのない顔で鼻の下を伸ばした。

「何言ってんだい! このスケベ!」

「そうですよ、もう、タケルさんったら!」

紅薔薇もネパールも、飽きれ顔でタケルに怒った。

「ちぇ! ちったぁみんなの空気を明るくしてやろうと思ったのによ!」

「まったく……本当に仕方のないヤツだな」

「あん? オパール、てめぇホントは期待してたんじゃないのか~?」

「な、何をバカな! お、俺がそんなふしだらな想像をするワケないだろう!」

「に、兄さん……鼻……」

「え? あ、あれ?」

鼻血を出しながら怒るオパールには、まったく説得力がなかった。

皆一同爆笑した。結果的にこの場の雰囲気を明るくしたのはオパールだった。


 そこに、オババがやって来た。

「ここに住む民族は、実はこの地球で一番の文明を持っていますのじゃ」

「文明だって? この火山を見ると、逆に退化したヤツらが住んでいそうなんだがなぁ……」

「ここの民は、火山を使って、機械を動かしているのですじゃ」

「なるほど、火山のエネルギーを利用し、科学を発展させたってワケですね。そのエネルギーってなんだろう? 蒸気? 電気? それとも……ねぇ、何でしょうねぇ?」

ザクロが興味津々に話に加わってきた。

「俺に聞いたって知るかよ。とにかく会ってみりゃわかるさ。マリューだって、一度くらい会ったことあるんだろ?」

「……いや、ない……初めてだ」

「そ、そうか、はじめてね……はは……」

タケルとザクロは不安そうな顔を見合わせた。

「あ、あれ」

ネパールの指差す先に、石で作られたオブジェのようなものが、地面を覆うように並んでいた。

「なんでしょう、あれは?」

それを拡大画面で確認するザクロ。

「ひっ! あっ、あれは……!」

「どうしたい、ザクロ?」

「あれは……墓です! 石碑があんなにも並べられています!」

確かに墓石であった。そこには、追憶の地で死んでいった大勢の人間が眠っているようだ。

それは、この地の過酷な状況を克明に表しているようだった。


 その時! ビーッ!

「レーダーに反応あり! 高熱源体高速接近!」

「なにッ! まさかッ!」

火山岩の中から、緑色に光る筋が見えた。

ヴュボォウ! ズドゥムッ!

どうやらシトヴァイエンに直撃したようだ。

「ぐっ! シャルル! だ、大丈夫かッ!?」

「な、なんとか! しかし今のは間違いなく、下からの攻撃でした!」

「ひえぇ! なんでボクたちを攻撃するんですかぁ!? 敵じゃないのに!」

「とにかく、このままでは下から狙い撃ちにされます! 下降してこちらも身を隠さないと!」

「よし! 聞こえていたか、キリリ! アマテラスとサンドサーペントは低空飛行に切り替える!」

「あいよ! そっちに合わせるから、合図して!」

吊り下げられているシトヴァイエンを落とさぬ様、ゆっくりと高度を下げる。

しかし、その間にも、正体不明の攻撃が間髪入れずに繰り出されていく。

ヴュボォウ!

「ぐわっ! こんな調子じゃ、狙い撃ちにされちまうぞ!」

「タケルさん! シトヴァイエンを切り離して下さい! 降りるだけならなんとかします!」

「そ、そうか、すまねぇシャルル。キリリ! 散開して敵を拡散させるんだ!」

「了解! 援護に武神機を出させるよ!」

サンドサーペント号は低空飛行へと切り替えた。

ハッチからは、武神機、『砂蜥蜴』(すなとかげ)が発進される。

「こっちはシトヴァイエンを援護しながら攻撃だ! 敵の位置測定はまだか?」

「測定完了! 主砲発射準備完了です!」

「待って! あれは地球人よ!ここの民が私たちを敵だと間違えているだけよ!」

「でもよ、マリュー!」

「こちらから攻撃したら、船を修理するどころではないわ! 私が説得してみせる!」

マリューは、通信マイクを持って叫んだ。

「私はサクシオンのマリュー! 地球人よ! この船は敵ではないわ! 攻撃をやめて!」

ヴュボシュ! ヴュボシュ!

しかし、敵のレーザー攻撃は止まないどころか、ますます激しさを増してきた。

「ど、どうして?……私たちは敵じゃないのよ? 同じ地球人なのよ!」

「くっ! 本当にあれは地球人なのか? まさかヤマトか獣人族なんじゃないのか!?」

「いえ、ヤマトにも獣人族にもあんな強力な兵器はありません!……ただし、開発に成功していなければの話ですが……」

ザクロは自信なさげに言った。

「それじゃあ確かめようがないぜ! どうしろってんだ!?」

「タケルさん、ボクが武神機で出ます。だからこちらからは手を出さないでいて下さい」

「シャルルの武神機なら、高速移動で攻撃をかわし続ける事も可能か……しかし、それは危険だぜ!」

「いえ、もとはと言えば、シトヴァイエンを修理する為のボク達の責任ですから……」

「そ、それでもよ……う~ん、よし! 俺も出るぜ! それなら許す!」

「は、はいタケルさん! よろしくお願いします!」

「紅薔薇はアマテラスの指揮をとれ! キリリ! ここはひとまず後退してくれ!」

「わ、わかった!」

タケルとシャルルは出撃する為、カタパルトデッキへと向かおうとしたその時。

「す、すまんですじゃ、タケル様! この老いぼれが余計な事を言ったために、危険な目に合わせてしまったようですじゃ!」

「なぁに、いいってことよ。どっちみち八方塞がりだったんだ。オババのせいじゃねぇさ」

「うぅ、そう言って頂いて有難いですじゃ……タケル様、気をつけてくだされ! ヤツらは人間の心を忘れておるのですじゃ!」

「人間の心を忘れてるだと?……どういうこった?」

「それは……」

オババが何か言い辛そうにした時。

ズガァァン!

「た、タケルさん早くしないと!」

「わかったシャルル! とにかく行ってくるぜ!」

タケルはカタパルトへと移動し、伝説の武神機を呼び出す為、空に向かって叫んだ。

「天空雷鳴! 破壊の限りを尽くせ! ヤマトタケル! とう!」

タケルは決めポーズと決めセリフを叫び、空中に向かってジャンプした。

そして、雷と共に現れたヤマトタケルとメンタルコネクトを完了させた。

「メンタルコネクト完了だぜぃ! ん? 何してるシャルル! 早くしろ!」

「えぇ~……タケルさんは伝説の武神機を呼ぶのに、いちいちあんなことしてるのか……」

「どうした? 早く俺みたいに伝説の武神機を呼ぶんだ!」

「えと……その……」(なんだか恥ずかしいなぁ……)

「早くしないとシトヴァイエンもみんな沈んじまうぞ!」

「わ、わかりましたよ! えっと……皇帝見参! 光を照らせ! カムイ! やぁっ!」

タケルと同じく、決めポーズと決めセリフとを叫び、空中に向かってジャンプしたシャルル。

その顔は恥じらいで真っ赤だ。

「お、皇帝見参ときたか! なかなか決めてくれるじゃねぇか、シャルル」

「いえ、まぁ、ははは……」(けっこう気持ちよかったかな……)

「いくぜ、シャルル!」

「はい、タケルさん!」

伝説の武神機ヤマトタケルとカムイは、正体不明の敵の前に飛び立っていった。


「タケル様……あなたの守ってくれた地球を汚してしまったのは、ワシらなのかもしれん……」

オババの言葉には、とても申し訳ない気持ちが込められていた。

「そんな、オババ様・……私たちサクシオンは、この地球を童魔から守ってきたわ」

「たしかに、マリューたちはサクシオンとして立派じゃ、誇りすら感じる。じゃが、この地球を守ろうとする人間ばかりが全てではないんじゃよ……」

「どういうことなの、オババ様?」

オババの言葉の意味とは、一体何なのだろうか?


「さあいくぜ! シャルル! ハデにぶっ飛ばしてやらぁ!」

「だめですよタケルさん!あくまで和解を前提に行動しないと!」

「先にケンカをふっかけてきたのは向こうだぜ? 味方だと言っても通じねぇぜ!」

「そ、それはそうですが……」

「あっちにだって大将がいるハズだ! そいつに直接会って話しをつける! いいな!」

「わ、わかりました……」

(ほんとにムチャクチャだなぁ……でも、このままでは一方的なのも確かですね……)

「ん? あいつらか。攻撃してきたのはあのヘンな武神機か!」

タケル達の前方に、モグラのようなずんぐりとした武神機が見えた。

「なんだ、ありゃ?肩に『土竜』って書いてあるぜ?」

「あれは、『モグラ』と読みます。まさにモグラそのものですね」

「てんで弱そうだぜ! シャルル! そっちをたのむ!」

タケルとシャルルは散開し、各個に敵を叩こうとした。

敵の武神機は、タケルに見つかると、逃げるようにして岩陰に隠れてしまった。

「あ! てめぇ隠れるなんて卑怯だぜ! このモグラ野郎!」

「タケルさん、深追いしないで!」

「くそ! こう岩が多い場所だと、へたに攻撃できねぇな……どうすっか……」

タケルも一旦、岩陰に隠れる事にした。ここなら敵からも見つからない。ところが。

ビュオム! ドガッ!

ヤマトタケルは背後から攻撃を受けてしまった。

「ぐわっ! いつのまに後ろにいたんだ!?」

だが、敵の姿は見えない。タケルはもう一度、敵から見えないよう岩陰に隠れた。

バビュオウッ! ズドドドッ! ドガァン!

「ま、またかよッ! うお!」

バランスを崩したヤマトタケル。後ろを振り返っても、そこには敵の姿はない。

「くそ! いったいどこから攻撃してやがんだ!?」

「タケルさん! どうやら敵はこちらの見えない場所から攻撃してくるようです!」

「そうみてぇだな……わかった! モグラだから、たぶん土を掘って下から攻撃してくるんだな!」

タケルは、地面に怪しそうな穴が空いてないか見回した。

「とくにそんな穴はあいてねぇが……ぐわっ!」

またもや、その攻撃はヤマトタケルの背後から行われた。

「ちっきしょう! どこから出やがるんだ? 姿をみせやがれ!」

「上です! タケルさん!」

「上だと?……そこかッ!」

シャルルの声を聞いたタケルは、振り向いて上方を見た。

そこには、上半身をニョロリと伸ばした敵が、岩陰からこちらに攻撃しようとしていた。

「でやッ!」

ヤマトタケルは両腕からインガ手裏剣を投げつける! それが見事、敵に直撃。

「ざまぁみろ! 下だと思わせて上から攻撃するなんてズル賢いヤロウだぜ!」

モグラの武神機が倒されると、残りの敵は逃げてしまったようだ。

「この敵は、上半身を蛇腹のように伸縮させて攻撃するようですね」

「ああ、変わった武神機だぜ。それにしてもわからねぇ……襲ってきたり逃げたり一体何をしたいんだ?」

「さぁ……どうします? このまま敵を追いますか?」

「いや、それはコイツに聞いてからだ」

「え? まさか……」

「コクピットはワザと破壊しなかったから生きているはずだ。武神機乗りを引きずり降ろしてやるぜ」

(あの状況でそこまで考えて狙ったとは……さすがはタケルさんだ)

「あれ、この武神機には誰も乗ってねぇぞ? 無人だってぇのか?」

「まさか……無人機であれほど正確な攻撃は出来ないと思いますが……」

「でもよ、コクピットには誰もいねぇし、変な機械が乗っているだけだぜ?」

「これはただの機械ではありませんね。どこか人型のような……あぶないタケルさん!」

ビュオム! バジュウ!

突然、コクピットに詰められた機械から、タケルに向かって緑色の光が発射された。

「うお! あぶねぇ! この野郎!」

バキッ! ブチブチ!……ガシャァンッ!

タケルはその機械を殴り、コードを引きちぎって引きずり降ろした。すると。

「ウギギ……ギガガ……」

箱型だと思われた機械は、手足を伸ばすと人型の形をしていた。

まるで、人間の代わりに武神機に乗せられているようであった。

「ウギ! ニンゲン! コロス!」

「なっ!? こいつ!」

ドガシャァン!

またしても攻撃しようとしたので、タケルは馬乗りになって頭の部分を正拳突きで潰した。

「ウゴ……ガガガ……」

「こ、これは一体何だったのでしょうか……」

「わからねぇ……だが、人間を殺すと言っていた。これも追憶の淵の民の仕業なのか?」

タケルとシャルルは、その奇妙な人型の機械を黙って見詰めていた。

オイルが漏れて虫の息のその機械は、どこか人間の死に際に似ていて切なかった。


「タケル! 大変だよ!」

突然、紅薔薇からの通信が入った。

「どうした紅薔薇ッ!」

コクピットの通信モニターを覗き込むと、紅薔薇の険しい顔が映っていた。

「敵に完全に包囲されちまったんだよ! それに……」

「なにッ! わかった! すぐにもどる!」

タケルとシャルルは、急いで武神機に乗り、アマテラスへ向かって戻った。

「ちぃ! 見事にやられたようだぜ!」

「ですが、後退していたアマテラスがなぜ……?」

「わからねぇ、とにかく急ぐんだ!」



 タケル達が戻ると、そこには、先ほどのモグラのような武神機がざっと五十機ほど。

アマテラスとサンドサーペントは、地上に着陸して包囲されていた。

そして、そこには見慣れた機体もあった。

「あれは……ベンの乗っていたガルバインとかいう武神機! まさか、獣人族だってのか!?」

そこにはやはり、獣人族の戦武艦『アシュギィネ』が巨大な姿を現していた。

「いったいどういうこった? てんでワケがわからねぇ!」

「追憶の淵の民と獣人族……どんな繋がりがあるのでしょうか?」

「ひさしぶりだな、タケル!」

アシュギィネのブリッジから、拡声器を通した声が聞こえてきた。その声は我王であった。

「我王……てめぇ!」

「レジオヌールのシャルルとかいう小僧も一緒か。人間同士仲直りでもしたのか?」

「うるせぇ! こっちの事情に首を突っ込むな!」

「はっはっは! それにしても、こうも簡単にワナにはまるとはなぁ! てめぇの悔しがる顔は最高だな!」

「へん、足りねぇ脳ミソで、ちったぁましな作戦立てたみてぇだな、我王!」

「はん、てめぇに言われたかねぇぜタケル! それに、脳ミソだったら俺の方が多いけどよ」

「あ? 何言ってやがんだ? サルよりも人間様の方が脳ミソ多いに決まってんだろ!」

「ん? サル以下のてめぇなんか、脳にハナクソでも詰まってんだろ!」

「んだと! じゃあてめぇはバナナのすり潰したヤツが入ってんだろ!」

「なんだとこのヤロウ!」

「やるのかよ、てめぇ!」

二人の低脳な口ケンカは続いた。

「が、我王様、あんなヤツの言うことを真に受けていては……」

「うるせぇ! 殺すぞこの野郎!」

「ひっ! も、申し訳ありません!」

黒ヒョウの獣人、ハイネロアは我王の剣幕におされた。

「人質を取られているのにいい度胸だな、タケル。よし気に入ったぜ。今から武神機を降りてこっちに投降しろ。そっちのガキも一緒だ」

「タケル! そんなヤツの言うこと聞くんじゃないよ!」

「だいじょ~ぶだって、紅薔薇。動物園行きのチケットが手に入ったと思えばいいのさ」

「タケル……」

タケルとシャルルは、アシュギィネのカタパルトに着艦し、武神機から降りた。

そこには、我王と部下、ボブソン、それにベンとポリニャックがいた。

タケルはベンに目を合わせた。そしてポリニャックをチラリと見た。

「よう、久しぶりだな! ジッちゃんにポリニャック。おっと、目つきの悪いオオカミもいたなぁ」

「……」

ベンは、ただ黙ってタケルを睨んでいた。我王はタケルに話しかけた。

「どうだタケル? 今の気分は?」

「はん、悔しくねぇよ。別にケンカに負けたワケじゃねぇからな」

「そりゃそうだ、それは俺様も同じだ。こんな事で勝っても嬉しくもなんともねぇ」

「教えろ。どうして、てめぇたち獣人が、追憶の淵の民とつるんでやがる? 俺達と同じ人間同士なのになんで攻撃してきやがるんだ?」

「そうか、おまえは知らないらしいな。追憶の淵の民の正体を」

「何?」

「同じ人間かどうか知らんが、もと人間だったことは確からしいな」

「もと人間だった?……どういうこった?」

「それは今から連れて行く所でわかるさ。さぁ小型艇に乗れ」

「た、タケルさん……」

シャルルは、心配そうな顔でタケルを見た。

「大丈夫だ。こいつが人質を取るなんて汚ねぇマネするのは、何かワケがあるんだろ」

「ふぉふぉ……さすが察しがいいの、タケル」

ボブソンが白くて長い顎髭をさすりながら言った。

「じっちゃんには負けるさ……それよりもどうしたい? ベンよりもインガが劣ってねぇか?」

「ほっほ! そこまで感じ取れるとはたいしたものじゃ、ワシも年かのぉ」

だが、タケルは気づいていた。

ボブソンのインガの力が落ちているのではなく、ベンのインガが大きく成長していることに。

それを、あえて言葉に出さないタケルは、ベンのインガを認めつつあったのかもしれない。


 追憶の淵と呼ばれる地。

火山岩によって構成された地の奥深くに、その場所はあった。

熱気で蒸し返す洞窟内。石の階段を降り、それがどこまでも深く続く、続く。

その不気味な雰囲気に、誰ひとり口を開く者はいなかった。

タケルの額から流れた汗が顎から滴る。それが地面に落ちるとジュウという音を立て蒸発する。

やっと辿りついた底には、ぶくぶくと煮えたぎる溶岩の池。

そこにかろうじて顔を出している小さな岩。それを足場に飛んで渡る。

全員が渡り終わると、その足場は溶岩の下に沈んでいった。

後戻りできない状況に、誰もが不安を隠せなかった。

「さぁ、とっとと行くぜ」

我王は、何事もなかったように皆を先導していく。

そして、水蒸気で霞んだ先に、ブ厚い鉄板の扉が現れた時、そこが終着だと知った。


「ここに一体何があるってんだ? 俺に何を見せるつもりなんだ? 我王」

「さてな、ここから先は俺にもわからねぇ」

「なんだと? ふざけてんのかッ!」

「落ち着いて下さい、タケルさん。我王さんは誰かの指示によって、ここに辿りついたのです」

「誰かの声? そんなの俺には聞こえなかったぜ?」

「へん、よく気づいたな、シャルルとかいうガキ。俺にしか聞こえてねぇと思ったが、どうやらおめぇにも聞こえていたようだな」

「ほ、本当なのか、シャルル?」

シャルルは黙ってうなずいた。


 グゴゴゴゴ……

鉄の扉はゆっくりと重く動いた。そして、その先にあったものとは。

「て……寺?」

そこは庭園の風景。そして墓石に鐘突き堂。それはまさしくお寺の風景であった。

今までの蒸し暑さと打って変わり、ここはひんやりと涼しかった。

こんな溶岩が立ち込める地底深くに、寺があるなど誰も予想できなかったであろう。

「シャレた風景じゃねぇか、なぁタケル」

「ふん、シャレにもなってねぇや。なんでこんな所に寺があるんだ?」

「あ、あそこ!」

ポリニャックが指差す先には、墓石の上に光る火の玉が浮遊していた。

「うおっ! ありゃ人魂!? 冗談じゃねぇ!」

「ヒトダマ? なんだか可愛らしい光だっぴょ」

「何か人の形に変わっていくだぎゃ!」

ベンが叫ぶと、その人魂は人間の姿になった。そして、タケル目掛けて勢い良く向かってきた。

「うわぁ! ま、マジかよッ!?」

驚いたタケルは、一瞬動揺してしまった。タケルはその人魂に首を締め付けられた。

その姿は、白い着物に腐乱した顔や手足、まさに亡者であった。

「ひいッ! は、はなせぇ!!」

タケルは驚きのあまりシリモチをついてしまった。その姿を見てベンは笑う。

「ぷぷっ! なんだぎゃ情けない、そんなに驚くこともないだぎゃ」

ベンは、タケルの側に瞬時に移動し、亡者めがけて肘撃ちを喰らわした。

ボゴォン!

亡者の頭は弾け飛んだが、まだ生きているらしくタケルの首をつかんだままだった。

「ありゃ? けっこうしぶといだぎゃね。それにしてもみっともないだぎゃね、タケル」

「う、うるせぇ! 俺はオバケが昔から大っキライなんだよ!」

タケルは顔を赤らめながら、亡者を体から引き離した。

その首からは、コードのようなものが垂れていた。

(まるで機械みてぇだな……なんだ?)

「それにしても、なんだよここは……まるでお化け屋敷だぜ……」

「あっ! あれはなんだぎゃ!」

「次はなんだよベン、突然でけぇ声だしやがって……ん?」

ベンの指差す先。寺の奥の大きな岩山に、巨大な人影が見えた。

「あれは武神機!?……いや、ちがう、岩の彫刻か……?」

岩山を削って形作られた武神機は、まるで丁重に祭られているようだった。


「あれは追憶の淵の、平和の守り神なのですよ」


 すると、寺の境内の奥から、透き通った美しい声が聞こえてきた。

そこに現れた少女。その容姿は、エメラルドのように美しい長髪が特徴的だった。

少女の傍らには、全身を機械で覆われた鋭い目つきの男が立っていた。

「おまえなのか、俺の頭に直接命令してきたえらそーなヤロウは」

我王は、その少女の正面に立ちはだかった。

「このお方は追憶の淵の後継者、ガラ・ハ様だ。無礼であろう、獣人族の長よ」

少女の側にいた機械の男がそう言った。

「よい、ゲキル。それよりも、獣人族の長たちと、古の勇者を持成しなさい」

「フン! お高くとまりやがって高飛車な女だな。俺はキライだねぇ、こういうタイプは」

「はは、そうだな。我王とは全くの正反対だからな」

「なんだとタケル? それは俺が、女らしくねぇってことか!?」

「いやいや、そこまで言ってないぜ。でも、自分のことわかってるみてぇだな?」

「てめぇ……殺す!」

「客人! ガラ・ハ様の前での無礼は許さんぞ!」

「へいへい、ここはおとなしくしてようじゃねぇか。な、我王、俺が謝るからさ」

「ち!……仕方ねぇな、ここは引いてやる」

(ふぉふぉ!我王のヤツめ、タケルとは気が合うらしいの)

ボブソンは顎鬚をさすりながら思った。


 タケルと我王たちは、ガラ・ハに招かれ、寺の中へと進んでいった。

途中、機械の男たちが道を作るように脇に整列していた。その数およそ五百人ほど。

「まるで、邪馬台国の卑弥呼だな……」

「こいつらあんまり穏やかな雰囲気じゃねぇなぁ。みんな恐いツラしてらぁ」

「客人、黙ってついてこられよ」

「ど~も気にいらねぇなぁ、アイツ」

「それは俺も同じだ。どうやらそこだけは気が合うようだな、タケル」

「よせやい、気が合うのはケンカだけにしておこうぜ」

「ふふ、それもそうだな」

タケルと我王はニヤリと笑った。

「む?」

その時、タケルはある視線を感じ取った。

タケルに向けられた鋭い視線。それは、ある男から発せられていた。

他の追憶の淵の民とは違い、体の半分だけ機械化されているようだった。

「タケル、てめぇも気づいたか……あのインガ……」

「ああ、こんな強いインガを浴びせられて気付かねぇワケがねぇ。あいつ、相当できるぜ」

「ちったぁ、マシなやつもいるってことか。面白くなってきたな」

タケルと我王は、その強力なインガを発している男の前を素通りした。

それを見たボブソンは冷や汗を垂らした。

(むぅ……あの男、なんという攻撃的なインガじゃ。よく我王もタケルも涼しい顔をしていられるのぅ……それにベンもよく平常心を保っておる……ワシも歳をとったもんじゃ、ふぉふぉ)

ボブソンの顔は嬉しそうだった。それは、弟子であるベンの成長振りを実感したからかもしれない。

「彼はここの民で一番の実力者コロサスです。私の右腕的存在でもあります」

ガラ・ハは、コロサスに笑顔を向けた。コロサスも軽く礼をして笑いを返した。


 どこか異様な雰囲気が流れる中、タケル達はガラ・ハに先導されていった。

溶岩に囲まれた洞窟内は結構な広さだった。

そしてしばらく歩くと、寺の本堂が見え、皆はそこへと入っていった。

「客人、ここは梵庭寺と呼ばれている神聖な場所だ」

「ボンテージ? なんだか変な名前の寺だな」

「うわぁ! 見て下さいタケルさん、中はけっこう広いんですね!」

シャルルは寺の中を見て驚いた。天井や壁には意味不明な絵が描かれていた。

皆は巨大な仏像のある前に招かれ、そこには座布団が並べてあった。

「苦手なんだよなぁ、こういう雰囲気は。正座しろってことだろ?」

ゲキルという機械の男は黙って頷いた。

「なんだか堅っ苦しい座り方だな、これじゃぁ反撃の際にスキができちまうぜ」

「これこれ我王、ここは争いの場ではないゆえ、そんな心配はせんでよい」

「よいしょ……あれ? いや~ん、うまく座れないだっぴょ!」

「ははは、ポリニャック。レディだったらもっと上品に座れるハズだぜ」

「そんなこといったって……うわ!」

コテン。ポリニャックは上手く正座ができずに後ろに転んだ。

「うさぎの少女、そなたは足をくずしてもよい」

「あ、ありがとだっぴょ」

「じゃあ俺もそうしようかな? 正座すると足がしびれちまってよ……ハハ」

ゲキルが無言で頷いたので、タケルも足を崩して座った。

なんとか皆が座り、その場が整った。

「さぁ、教えてもらおうか。なんであんたら追憶の淵の民と、獣人が手を組んだのかをな」

「手を組んだつもりはないぜ、タケル。俺たち獣人が、こいつらを利用させてもらっただけだ」

「客人、勝手に喋るのはやめてもらおう。これから、ガラ・ハ様からお話がある。皆、心して聞くがよい」

「け! いったい何様のつもりだか……まぁいいや、さっさと始めてくれ」

我王はイライラしながらも、なんとか自分を抑えているようだった。

ガラ・ハと呼ばれる少女は、本堂の奥の椅子に腰掛け、静かに目を瞑ると両腕をそっと上げた。

「では話を始めます……まずは、この地球の歴史について語らねばなりません。そして、我ら追憶の淵の民の始まりとその使命とは何かをお話します……」

「あ~、前フリからして長くなりそ……」

タケルは早くも眠くなりそうだった。


 ガラ・ハは、古の戦いから、現在の地球の事を話し出した。

黒い大渦の災い。そこから生み出された童魔と呼ばれる悪しき生物のこと。

そして、古の戦いの後、地球は『灰色の太陽』によって自ら汚染してしまったこと。

この汚染によって、人類は自らの手で人口を半分にまで減らしたが、尚も人々同士の醜い争いは絶えなかった。争いを嫌った人々は、この追憶の地へと移住し、独自の文明を発展させるに到った。

それが、追憶の淵の民の歴史だった。


「ふわぁ、そうだったのか。いろいろ大変だったみてぇだな~」

「でも、以前ならまだしも、今は人間同士が協力して生きていかなければいけない時じゃないんですか? サクシオンの人達だって、平和を望んでいるんですから」

「それはそうです。でも、私たちとサクシオンが手を結ぶ事は絶対にありません」

「なんでだよ? よっぽど深いワケでもあるのか?」


 ガラ・ハは答えた。

それは、人間の身勝手で非道な行為であった。

汚染された地球を復元するのは絶望的だと知った人間は、この環境で強く生き抜く為の人体強化案を提唱した。その為、動物を実験体として、強い肉体とはどんなものかを実験した。

だが、無理な異種交配や遺伝子操作の結果、ほとんどの動物たちは絶滅の道を辿った。

生き残ったのは、わずかな家畜の種類だけであった。

サクシオン達も、その非道な人間と同類だと思われているようだ。


「ひ、ひどいだっぴょ! 人間ってサイテーだっぴょ!」

「ほんとだぎゃ……自分たちの為に、罪のない動物を絶滅させるなんて、まるで悪魔だぎゃ!」

「ふん、残虐性では俺たち獣人よりも、人間のほうが上ってこったな。胸クソわるいぜ!」

タケルは何も言い返せないままだった。


 ガラ・ハは話を続けた。

希望を絶たれた人間は堕落し、醜い争いは増加していった。

以前、動物実験をしていた科学者は、そんな人間達に嫌気がさし、ここへ集まったという。

そして、人が住みにくい環境でも、自らを機械化することによって対応させたのだ。

それは、科学者たちの技術のおかげでもあった。

しかし、人体の機械化の影響もあってか、極端に女の出産率が低下した。

生まれてくるのは男だけに偏ってしまい、女はわずか数人になってしまった。

機械化された女では女の赤子を産む可能性が極端に低い。

そんな迷信が根付く頃、女は機械化されず生身のまま、この厳しい環境で生きなければならなかった。

その為、ガラ・ハは神聖なる存在。

『後継者』として崇められ、選び抜かれた男だけが、子孫を残す役目に抜擢されるのだった。


「……」

タケルは下を向いて黙ったままだった。

「どうだ客人? これで我ら追憶の淵の民が、何故そなたらを攻撃したかわかっただろう」

追憶の淵の民は、地球人を敵だと思っているのだ。それはサクシオンたちまでも。

「ひとつわからないことがあります。なぜ、追憶の淵の民と獣人族は協力したんですか?」

「……」

ゲキルは、ガラ・ハの顔を伺った。我王はそれを黙って見詰める。

「それは、獣人族とは、人間と動物の正統進化だと思うからです。確かに彼らは凶暴な一面がありますが、一部の人間のように醜い心を持ってはいません」

「そうだっぴょ! ウチらはみんなで仲良く住みやすい場所を作りたいだけだっぴょ!」

「そうだぎゃ! 人間みたいに征服欲なんてしないだぎゃ!」

ガラ・ハは黙って頷いた。

「人間が犯した罪、動物への謝罪の意味もあったからで、私たち人間は、それを償う義務が……」

「……おいおい、ちょっと待てや」

我王が話を中断させた。

「黙って聞いてりゃ謝罪だ義務だの、それって結局おまえら人間が、おれたち獣人族を見下しているだけじゃねぇのか?」

「いえ、そうではありません。私たちはただ、優れた民族としての当然の行いを……」

「それが、お高くとまってるんだよ! てめぇらが獣人族より優れてるって聞こえるぜ!」

「それは邪推というものです。さて、ひとまず休憩にしましょう。ゲキル、お茶の用意を」

「かしこまりました、ガラ・ハ様」

ガラ・ハは話を途中で中断させ、部屋の奥へと消えていった。


「おい! 待てよ、このやろう!」

「よせ我王、ここで争いしても分が悪いぜ」

「そうですね、ここの人たちは、外界とは隔離された概念で生き続けているます。ボクたちが争いをしている以上、たとえ同じ地球人であっても、それは邪魔者でしかないのですね……」

「だとすると、この荒れた地球をなんとかしようって事は、いらねぇお節介ってことなのか?……」

「そのようです。でも、ここの人たちと敵対する訳じゃないですから、修理くらいならお願いできそうですよ」

「そうだな、ここは素直に頭を下げてみるか」

ドン! 我王は畳を強く叩いた。

「へん! ずいぶん弱気じゃねぇか、タケル。そんなことだからこの地球はいつまでもこのままなんだよ。結局、人間ってのは、お互いの利害でしか動けねぇチンケな生き物なんだな!」

「うぐ!……言わせておけば!」

「たしかにそうかもしれません……」

「なんだと? シャルル!」

「ほう……ガキがたまには良い事言うじゃねぇか?」

「この地球をもとの美しい星に戻し、ヤマトの世界を救うつもりなら、人間も獣人もすべての人が手を取り合う必要があるんじゃないですか?……ボクはそう思います」

「へ! 都合の良い時だけ協力するとかぬかしやがって。どうせてめぇら人間は、また自分の欲を抑えきれずに自滅するだろうよ。そんなやつらと手を組むのはゴメンだぜ!」

「そうだっぴょ! 人間はおろかな生き物だっぴょ!」

「オラたち獣人は、自分の住む世界を潰すことなんて絶対にしないだぎゃ!」

「……ちょっと席はずさせてもらうぜ……」

タケルは立ち上がり、くるりと振り返るとその場から去った。

「あ、タケルさん、待ってくださいよ!」

「都合が悪くなれば逃げるだぎゃね! 情けないだぎゃ、タケル!」

「よせ、ベン」

「だども我王さま……」

「ヤツの気持ちはわかる。これはもう、純粋なケンカじゃなくなっちまってるんだからな……」

我王は、去っていくタケルの背中を見詰めていた。



 一方、こちらでは、追憶の淵の民がひっそりと数人集まっていた。

それは、只ならぬ張り詰めた雰囲気の中での話し合いだった。

「それで……そっちの計画はどうなっている?」

「は! コロサス様、準備は整っております。ほとんどの民が我らの考えに賛同していますから、反対派は僅かだと思われます」

「よし、機は熟した。これからはガラ・ハなどに従う必要はない! 我らが女を選ぶ時代なのだ!」

「コロサス様バンザイ! コロサス様バンザイ!」

コロサスと呼ばれる片目の機械男。

一体、この追憶の淵の民の間で、何を計画しているのだろうか?



 そしてこちらは、大木の下に場所を移したタケルとシャルル。

紅葉した落ち葉が敷き詰められていたが、それは造葉であった。

「シャルル……俺は何がなんだかわからなくなっちまった……」

「タケルさん……」

「だってそうだろ? どいつもみんなスジが通っていやがる!」

「でも、それを言うなら、ボク達だってスジが通っているハズです。けして好き勝手に地球を征服したいわけじゃないんですから……」

「……それもそうだ、シャルルの言う通りだな……」

「どうでしょう? タケルさんが古の戦いの勇者だったと言ってみたらどうですか? そうすれば、きっと協力してくれるハズだと思います」

「そうかもしれねぇ……でも、それじゃあサクシオン達と和解させられねぇ。だって全然悪くねぇんだぜ?」

「そ、それはそうですね……でも……」

タケルは、サクシオン達が悪く思われているのに納得できなかった。

そうだとしたら、あまりにもサクシオンたちは報われないことになる。

それは、童魔からずっとこの地球を守ってきたのは、紛れもなくサクシオン達なのだから。



「客人……タケルさんでしたね?」

タケルとシャルルが振り返ると、そこにはガラ・ハとゲキルが立っていた。

「私たちはあなた方の仲間になる事は出来ません。しかし、敵対するという事でもないのです。無意味な争いはしたくないのです」

「ガラ・ハ……わかっているさ」

「あなた方を攻撃したのは済まないと思っています。でも、ここには外界の民を嫌っている物も多数おりますので、それでは示しがつかないのです」

「それもわかっている。あんた方を悪いとは思っちゃいねぇさ……ただ、なんだか知らねぇが虚しいんだ……とっても虚しくてたまんねぇんだよ」

「私達が獣人族と協力したのは、あなた方にこの地球の辿ってきた忌まわしき歴史を見せたかったからです。そうすれば、これ以上無駄な争いをしなくなると思ったからなのですよ」

「甘いなぁ、ガラ・ハさんよ」

「え?」

「どうやら、みんなに後継者と持ち上げられて浮かれてしまったようだな」

タケルの厳しいひと言に、ガラ・ハはハッとした。

「貴様! ガラ・ハ様になんという侮辱を! 貴様らのような愚か者はすぐにここを立ち去れい!」

「へん! そうさせてもらうぜ!」

「た、タケルさん! ガラ・ハさんに謝りましょうよ!」

「いやだ! 俺は思った事を言っただけだ!」

「タケルさん! 船の修理はどうするんですか?」

「知るか!」

「そんな~……」

「あのよ、ガラ・ハさん。ひとつ言いてぇ。あんたら追憶の淵の民は、けして無益な争いはしてねぇかもしれない。けどよ、それは争いを避けて見て見ぬフリしてるだけじゃねぇのか?」

「そ、そんな事ありません! 私たち追憶の淵の民は、もっと地球が高尚に発展するように努力を……」

「こんな地底に寺つくってどこが高尚な発展だよ? 俺には争いごとから逃げて地面の下に隠れているようにしか見えねぇな! まさに土竜だよ、モ・グ・ラ!」

「それは違います! わたしは……私たちは!」


 ドッゴォン!


 その時、寺の本堂から大きな爆発が起きた。

「何事だ? 見張り番よ、どうしたのだ!?」

ゲキルは腕の無線機で仲間に連絡をとった。

「そ、それがゲキル様……コロサス一味が獣人族と共同で反乱を企て、中枢のコントロールセンターを乗っ取った模様です! うわぁー!」

「おい、どうした? おいッ!……だめだ、無線が切れている」

「一体何が起こったというのですか、ゲキル? それになぜコロサスが……」

「簡単だぜ、ガラ・ハさん。さっきのコロサスってぇのがあんたらを裏切ったみてぇだな」

「そ、そんな……今まで私の右腕として働いていたコロサスが何故?」

「あいつはハンパなくインガが強かった。だから、追憶の淵の民の中で一番になりたかったんだろうよ、あんたを倒してな」

「ちょっと言い過ぎですよ、タケルさん。それよりも早くここから逃げないと!」

「そうだな、獣人族と手を組んだってのが厄介だしな」

「でも、お互いが手を組んだのには、よっぽどの理由があるはずですね……獣人族はボクたちを倒したがっているのはわかりますが、追憶の淵の民の反乱軍は何のメリットがあるのでしょう?」

「……客人、尋ねたいが、そちらには女子は多いのか?」

「なんだよ突然。オッサン、欲求不満かよ?」

「いいから答えてくれ」

「ああ、女ならそれなりの数はいるけどよ、それがどうしたって……あっ!そうか!」

「追憶の淵の民は、機械化の影響で女の子の出産が著しく少ない……だから……」

「ち! 紅薔薇たちが危ない!」

「それにレジオヌールの兵の中にも女性はいます!」

「とにかくコロサスを止めないと! ヤツはいまどこに?」

「いる!……それも近くだ!」

「え? なんですって!」


 グゴゴゴゴ……!


 寺の奥の岩山に掘られた武神機像にヒビが入ってゆく。岩が崩れてそこから何かが飛び出した。

「あっ! あれは!」

タケルは確かにそれを見た事があった。黒い武神機。漆黒の色をした大和猛であった。

「ば、バカな! なんでヤマトタケルがここにあるんだ? それも全身まっ黒だ!」

空中に静止しているヤマトタケルは、漆黒の翼を羽ばたかせていた。

それはまさに、これから起こる悪夢を思わせるようであった。

この武神機の正体は?

そしてタケル達は、無事脱出ここからできるのであろうか?

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