FA:斬魔機皇ケイオスハウル


 雪が降る。それは天上の機械巨神が自ら冷やす、澄んだ空気より生まれるのかもしれない。そしてロボ作品も降ってくる――。

 十一月がまさか三十日までしか無いとは、思いもしなかった――。




 斬魔機皇ケイオスハウル

 https://kakuyomu.jp/works/4852201425154969266

 作者 seal さん(@hibiki)




 カクヨム初期から連載しており、つい最近約40万文字の旅路を終えた、カクヨムロボ界隈なら誰もが知っているであろう超有名作品。

 何でも無いある日、父親と愛犬を惨殺した謎の生物に立ち向かい、健闘虚しく脳だけの姿にされてしまった主人公。しかし幸か不幸か邪神と出会った彼は、その怪しい相棒と協力関係を築き上げ、機械の体と邪神の力を持つ兵器にて、世界を救う戦いへと足を踏み入れる。

 クトゥルフ神話、ファンタジー、SF、冒険譚、成長など多くの要素を取り込みながらも決して破綻せず、最後までやりきった、圧倒的パワーと魅力がどくどくと中から溢れるロボット作品だ。

 

 今回、『小説家になろう』版である、『斬魔機皇ケイオスハウル~異世界勇者ニャルラトホテプ!~』についての話が少しばかり出て来る。が、前にもお話した通り、この作品の評価そのものには関連しないから、そこんところ宜しく。実のところ、中身云々よりも、平茸的にすれば存在そのものが重要である。

 なぜなら、なろうでも布教活動が出来るじゃない!




 ・Step1:作品概要(今回、引用です。何か問題があれば連絡を。)

 高校生だった『佐々佐助』は突如現れた異星人により家族を奪われ、自らも脳だけの姿となってしまった。

 これを哀れんだ邪神『チクタクマン』は、佐助を救う代わりに、彼を自らの使徒として異世界へ送り込む。

 異世界の名前は幻夢境(ドリームランド)。

 外の世界から訪れた人間達が核の炎で世界を海に沈め、邪神を素材とした人型兵器エクサスで終わり無き戦いを続けるマッドさマックスの世紀末世界である。

 佐助はここでチクタクマンの指示により邪神を崇めるカルト教団や邪神の生き残りを追いかけることとなるが……。


 『ケイオスハウル』――それは迫る闇へと吼える者。

 人・神・機を統べ世界の破滅を食い止めろ!




 ・Step2:いいとこ発見

 正直なところ、平茸はクトゥルフ神話等についてよく知らない。クトゥルフロボ物で有名な某アダルトゲームも未プレイ。その領域へあまり触れてこないまま、機械の森に生えていたことになる。

 そんな平茸でも、気持ちよく作品世界へと浸れた事を、まずは保証しておきたい。詳しくは三番目の項目で。

 ところで、この『世界に浸れる』という要素は、意外に作り上げるのが難しいと感じる。

 何故なら、その世界に浸るには都合が良すぎても悪すぎても駄目なのだ、と考えている。

 都合が良すぎればそれは読者側からも結果が分かりきっている芝居となってしまうし、悪すぎれば今度は期待のしようがない。その丁度良い塩梅を保つのは中々に厄介だろう。

 さて、ケイオスハウルの舞台となる『アズライトスフィア』は、決して楽な場所ではない。

 現生人類の枠を飛び越えた戦闘民族が幅を利かせていたりと、中々にブッ飛んでいる。

 だが、このStepの二番目で詳しく書くが、そこに生きている人間達は非常にイキイキと描かれている。

 多くの謎を提示しながらも、読者と平茸を確かに引っ張っていく動力がそこにはあった。

 作中に登場する人型兵器エクサスは、人の使う魔術のみならず、邪神や神話生物の部位を使用するなどして、結果とても怪しい兵器の一群を形成している。

 それでもエクサスは無くてはならない存在だ。いくら血が流れたとしても、人々はこの力を手放すことは出来ない。ロボスキーとしての月夜平茸が信仰する、ロボットが存在する事での光と闇をよく描けていると言えよう。

 個人個人で好きな要素に目を当ててもらっても構わない。どれもが混沌的物語グルメだ。

 ここに書き記すのは、あくまでも平茸流の視点である。参考程度に、面白さを提示していくこととする。


 ○タイトルに違わない、気持ちの良いごった煮感――まさに混沌。しかし無法ではなく、作品要素のどれもがこの作品に必要だと思わせることに成功している。


 項目を語る前に、作品世界について補足説明をさせてもらう。あらすじの『ドリームランド』と、今Stepの前置きに記した『アズライトスフィア』は、ほぼ同一の場所を指していると思ってもらって差し支えない。

 しかし単なる別名でもない。そのあたりは、本編第六話前編「今昔幻夢郷」に詳しい。


 本題に入ろう。この項目で何が言いたいか。

 この作品には、軽妙な掛け合いや(まともな人間にとっての)常識はずれな行動といった、笑いがある。

 社会の闇、裏切り、奇妙な愛からくる悲しみや涙がある。

 MAらしき機体とか、ふとした切欠で暴走し始めるようなロボが作られている。

 要素たっぷりでSAN値ピンチになりそうだが、それこそ、ケイオスハウルの魅力の一つだ。

 それらが、パズルピース――いや、そんなカッチリしたものではない。ラーメンの具とか、ピザ、そういう例えの方が会うかもしれない。そんな重なりを経て、組み合わさり、融合しているのだ。

  内包されている要素のどれが欠けても、今のケイオスハウルが保っている作品としての、バランスがきっと崩れてしまう。しっかりと食べ合わせは考慮されている印象を受ける。

 そんなたっぷり要素を共に食してこそ、ケイオスハウルという一つの作品として出来上がるのだと思う。

 そして読む事で、我々はケイオスハウルの作中世界を、主人公の佐助君と共に、冒険が出来る。

 

 そして私個人の感想でしかないものの、最後の終わり方は中々に乙なものだった。無論、ネタバレは回避する。

 打って変わってSF的な要素が入り込んでくるが、そういったちょっぴり感じる『奥の味』的なものが、平茸は大好きなのだ。SF畑、ロボ畑と自負している平茸だが、しかし物語中で現実の物理法則へと意識が引き戻されるその瞬間、その刹那がたまらなく快感である。そんな性癖を持っている人は、クトゥルフやファンタジーだといって敬遠せずに、一周試してもらいたい。一緒に邪神でイキましょう。

 私情を除いたとして、物語的にも、あそこは重要だと思っている。何故なら、始まれば最後、あの途方も無く後にはどうにもならない隔絶がいつかやってくるのだろう。しかし、それでもあの時間はこれからの彼にとって、追憶の中で何度も立ち寄る記憶となったはずだ。人生の経路として、失われることはないだろう。ある意味では、これ以上ない別れと救いなのかもしれなかった。ただの菌類は、そう書き記す。


 ○個性豊かな登場人物(?)達と、巡る陰謀の終着点――戦闘民族怖いです。


 私、月夜平茸はキャラクターの名前や特徴、果ては存在を中々覚えられない人間だ。リアルでも人の名前と顔が一致しないし、ゲームでもかなり怪しいレベルである。覚えていられるのは、非常に好みな造詣のキャラクターか、個性が非常に濃く、印象深いキャラクターの方々だ。

 しかし、ケイオスハウルを読了し、レビューを書き始めて、ふと驚いた。

 覚えていられたキャラクターの割合が非常に高かったのだ。これはネット小説どころか、商業のロボ作品でも中々お目にかかることの出来ない現象だった。

 理由は明確且つ簡単だった。様々なキャラクターが絡み合いながらも、決して各個人のパワーが薄れる事は無く、主張し合っているのだ。しかし、物語の芯がブレることはない。これだけ濃いキャラクター達が、一本筋としてストーリーを紡いでいくのなら、ちょっとやそっとの内的・外的要因では、勢いは崩れないだろう。

 詳しくは書かないものの、所謂『集結イベント』的な箇所が作中に存在する。そこで快く集まってくれる仲間達は、集まるべくして集まった、そういう確信を抱けるほど、キャラクター像が明確である。

 お気に入りのキャラクターであるシドお兄さんが出てくるシーンは、もうseal氏を抱きたくなりました。

 

 更に言えば、ここで私は『メタ的な不信感』という話題を取り上げたい。

 どういうものかと言えば、「このキャラぶれてね?」「なんでここでこんな事言ってるの?」このあたりである。

 恐らく皆様方も同じ事を思うと考えるのだが、読む側は基本的に、キャラクターが作者の都合でブレることが無いように願っているのだ。

 ブレる事に物語上の理由があれば構わない。が、作者側の理由では少々マズいことになるだろう。

 一貫性の喪失とも言えるかもしれない。

 しかし、中々これを完璧にゼロへと導くのは極めて困難だ。無論諦めてはいけないし、そうでなくともゼロへ近似させる努力は肝要だ。

 この作品は、そんな努力の結晶であると思う。キャラクターの言動や行動に、読者が前述の『メタ的な不信感』を抱かせる要因を、極限までカットし完成させている。きっと血と汗諸々の結晶だ。

 

 まとめると、非常にキャラクターが立っている、そういう事になる。

 ……最後にやっと浮かんだ、簡潔な答えなんです。色々、すみません。


 ○クトゥルフ知識がなくとも読みやすい!――平茸からは感謝の涙。


 Step2の前書きに書いた通り、平茸はクトゥルフnoob(初心者)である。

 しかし、主人公の佐助君は違う。現実世界においてクトゥルフ作品や、クトゥルフ系TRPGに触れてきた人間である。その筋に関しては、ある意味知識人とも言える。

 そこがこの作品へのとっつきやすさを生み出している、そう平茸は考えた。

 クトゥルフ以外の香りに誘われてやってきた未来の読者達にも、主人公が知識を持っていることによりある程度自然に、且つ的確な状況での説明が入るため、わけが分からない生物や邪神が出てきたとしても、心配は要らない。過剰な説明は入らないので、クトゥルフ非童貞の方々にも安心である。

 そしてきっと、クトゥルフ道への入り口としてもいい作品、好適だとも思う。平茸はそう感じた。




 ・Step3:ロボット

 ○ラーズグリーズ(ビグr……何でも無いです。)

 コンセプト明確、パイロット鋭角、狙い正確――ドリル最高。

 はなから雑魚を相手にする役割ではないことを、これ以上無いほどに一話で雄弁に、戦闘において語っているのが非常にお気に入り。

 このドリルは、私の肴になってくれたかもしれなかった武装だ!


 ○レッドキャップ(ファランクス改)

 エンジンメイス好き。火炎放射好き。ギター好き。お兄さん好き。

 パイロットの彼には色々と暗い過去のなんやかんやがありつつも、この機体で神話生物を叩きのめしている間は少しだけ楽になれそうな、そんなマッドでハイテンション、とてもアナーキーなエクサスである。

 何時の日か、その火炎放射器でそこらの汚物だけでなく、心の闇も消毒できることを祈ろう。




 ・Step4:平茸が選ぶおすすめ

 ○湖猫酒場

 お兄さんに惚れそうです。胞子と胞子を交し合いたい。

 湖猫――エクサスのパイロット――の生き延び方を快く伝授してくれる彼の事を語るには、平茸汁なしではとても不可能である。

 地味ながらも、ウェイトレス(?)の彼女が言った言葉も実はお気に入りだ。


 ○決戦、クトゥグア

 主人公たる佐助君がどのように生き、いかなる指針の下で行動するか。それが良く分かる話だ。

 最後まで読んだ後もう一回読み直してみると、それはもう、気が狂うほど気持ちが良い。


 ○富夫さんグルメ

 ケイオスハウル作中、一番好きなエピソードとなった。

 割と平易なエピソードではあるが、実に内容が濃い。他の異世界人が寄り集ってこの世界へ及ぼす影響、神話生物グルメ、新たな対話の形、邪神同士の関係――その他も含め、六千字程度にまとまっているとはとても思えない充足感である。超オススメ。


 注:今回、泣く泣く中盤まででお勧めポイントを挙げさせてもらった。

 やはり読者方には新鮮な面持ちで佐助君の人生を読んでもらいたいということで、様々な真実が暴かれる中盤から終盤にかけてはネタバレを回避する方向で、今回作品の紹介をさせていただく。ご了承願いたい。

 序盤から中盤は勿論のこと、中盤から終盤は更に濃密な戦いが繰り広げられる。




 ・Step5:最後に

 はてさて、何と今回で平茸の企画は三回目。つまり三作品を紹介したことになる。

 平茸の予定からすると、三回目というのは企画の一つの区切りだ。自分がどれだけやれるかの試金石でもあった。この執念がカクヨムロボ界にどれだけ溢れ出るか、そして自らの飢えを確かに見た。

 元々、最初の三作品は一回目を書き始める前、既に決まっていたものの、紹介する順番までは少し決めかねていた。

 しかし今では、現順番しかありえなかったと思えてならない。もう、言わばロボの思し召しに違いない。

 この記念すべき三回目に、このケイオスハウルを選んだのは、きっと偶然ではないのだろう。

 暗く深い奥底からの呼び声に誘われた結果なのかもしれない。

 協力してくれた方々に改めて感謝をこの場で述べつつ、淫靡な本筋へと戻っていくとする。


 ケイオスハウルという作品は、総じて作中に魔力が満ち満ちている。精神を高揚させて、期待を奥底から引きずり出し、無限熱量にて平茸の子実体を焼き締め惚れさせる類の、アレだ。

 ……とどのつまり、すっごく興奮、励起する。胞子がp軌道から飛び出しちゃう。

 そのお陰で、大体三十話あたりから一気に、朝の日差しを浴びながら一気に読み通してしまった。

 この現象、ケイオス・ハイとでも言い表すべきか。

 そう――笑いあり、涙あり、ロボあり、邪神ありの痛快娯楽冒険譚。

 この作品は、平茸の中ではこう、呼んでおくとする。


 ちょっとしたおまけとして、小説家になろう版について簡潔に書いておこう。

 こちらはカクヨム版の改稿版、と言える位置づけだ。展開は基本的にそう変わらない。

 初期の文章を、書くことで高まった力で再編集しているといった変更か。

 オススメは、カクヨム版→なろう版で読み通すこと。なろう版は心理描写などの補完がなされているため、カクヨム版ケイオスハウルにまず浸ってから、気に入ったキャラに少し着目して読む、などがいいかも。

 どちらもしっかり人に薦められる作品だ。SAN値の心配をすることなく、足を踏み入れてみようじゃないか。


 今回はより本能的に書き殴る感じのレビューにしてみた……果たしてどうなのかは自分では良く分からないのだが、きっとケイオスハウルが持つ魅力は、ほんの少しでも伝わってくれたのかなあ、と平茸の胞子たちは信じている。

 四十万文字近い作品である。確かに大ボリュームだ。それでも、平茸からお勧めする理由がある。

 ケイオスハウルを通じて、物語の何が面白さに繋がっているか、そのヒントが得られるかも知れないのだ。

 確かにそのものを直接得られるわけではない。だが、面白い作品は、面白いのだと言える。

 どんな影響を受けようと何だろうと、怖れる必要はない。きっと誰でもウェルカムである。


 そろそろ本当の終わりに近づいてきたところで、唐突に平茸はこう言っておきたい。

 ロボットのパイロットってのは、ただのヴィークル乗りってだけの存在ではない――。

 そして人型兵器の功罪を、やはり背負っていかねばなるまい、と。


 今回の紹介でケイオスハウルと出会ってくれた方がいれば、それは平茸にとっても非常に喜ばしいことだ。

 そして次回からは、より様々な作品を紹介していこうと思う。詳しくは近日中に、近況にて。

 平茸がよりロボに狂って、子実体をもうそれは硬化させて取り返しのつかないことになる可能性は、否定しない。

 全ては、皆様が本当にお気に入りとなるロボと、いつか出会って欲しいが為である。

 おなじみStep6とStepEXは、今回欲望が色濃い。興味のある方に言うと、「読めば分かる」だ。

 コタツをコクピットに見立てて、「中がオーブンみたいだ!」と一人で叫びだす可愛そうな菌類がここに居る。

 いつもの通り、ネタバレも少しはある。しかし、マズいところは避けたつもりである。それに、いつも本気。


 こい願わくは、皆様にも平茸の身に起こったような、良きロボとの出会いがありますように。

 seal氏(@hibiki)には、大変に待たせてしまって、とても申し訳ない。それでも気長に観察していてくれたのは、もう五体投地しかない。感謝感謝感謝であります。

 それでは、次回またお会いしましょう。






 ・Step6:あの行列の先には

 ○複合的に様々な要素を取り込み、美味しく融合させ、期待を裏切らない。


 まず平茸がケイオスハウルを読み始めたのは、私が月夜平茸として子実体を形成する少し前――要はアカウントを作る少し前だ。そこから間もないうちに性欲が爆発し、挑戦状登録ページをカクヨムへ叩き込むことになる。

 読むずっと前から、カクヨムロボ界隈が中々の賑わいを見せており、その中でもある三作品は圧倒的な人気がある。そんな話は、同じ墓穴へ落ちたという意味での穴兄弟友人から聞かされていた。

 ケイオスハウルがどれだけ人気なのかは、今更ここでつらつら長ったらしく書く次元の話ではない。

 数字だけを見ても、PV約32000、フォロワー340人超、星250超。そんな数の暴力を受ければ、言葉も少なくなる。

 それでもこのStepは「どれだけ人気なのか」ではなく、「どこから人気が湧き出るのか」を探求する場所だ。

 ここでひるんでいる暇は無い。

 そんなこんなで興味を持った私はカクヨムへと足を踏み入れ、こうやってロボレビューを司る新しい平茸をやっているのだが、人気のある三作品の正体は皆様お分かりの通りだと思う。勿論、その内の一つは、ケイオスハウルだ。

 更に平茸は、紹介人として読む前に情報収集をした。どんな作品で、どんな層が読んでいるか、である。

 そこで分かったのは、ケイオスハウルの間口はとことん広いということだ。

 属性・ジャンル問わず読者を受け入れて、口コミなどでもよく広がったのだと思う。

 作品展開について話をするのもよし、中に多々含まれる小ネタで盛り上がるのもよし、とても話の種にもってこいの作品だろう。

 だが、それだけではここまでの人気に説明がつかない。長編作品は読者が定着して、はじめて伸びる。

 なればこそ次の説明に使えるのは、平茸のような「噂を聞いて読み始めた読者」だ。


 読者は個人個人で、己の中にかくあれかしといった期待を持っている。平茸も、そうだ。

 その中身は「とにかく嫌味なく面白くあってくれ」なのかもしれなく、はたまた「ロボ・シコリティが高ければよし」かもしれない。

 様々な期待を胸に作品の中へ入る読者達、そしてこの作品は深く広い間口を持ち、中で要素の一つ一つは深く溶け合い、様々な手で彼らを満足させていった。それこそ人気の秘密ではないか、と平茸は思う。


 この作品、『斬魔機皇ケイオスハウル』は、読者を裏切らない。

 

 三十万文字以上、計八十話以上の大ボリュームの中で、その淡い期待を包み込み、消化してくれる。

 濃いキャラクター像や明確な物語の道などが、小さな心中の祈りも抱きしめてくれよう。

 読者の持つ願望の中の『ケイオスハウル』を受け入れながら、しかし完全な予想通りではない展開を以って迎えてくれる。その快感の中で読了まで持っていけるのが、この作品が持つ人気の理由なのだと思う。

 平茸の欲望も勿論快く消化してくれたこの作品、未だ読んでいない方は、何かこの作品に願いを持って入ってみてはどうだろう。

 きっと、最後にはささやかな祝福があるはずだ。
















   WARNINGWARNINGWARNINGWARNING

 ここからは更に深刻なネタバレと毒成分、そして平茸自身の趣向や偏見が含まれている可能性があります。精神が不安定な方、自分に責任を取れない方、ネタバレされると死んでしまう方は、このStepEXを読むのは控えてください。

   WARNINGWARNINGWARNINGWARNING
















 いいんですか? ネタバレがガッツリありますよ?

 確かな意思を持って、冷静に読むことが出来ますか?

 それでも読むという方は、この先へどうぞ。












 ・StepEX:コクピット論

 StepEXは、今までのレビューと意味合いが違います。

 なので、近況ノートのような口調で毒もありますので、ご了承を。

 そして、強烈なネタバレもあります。何かマズければ、御一報ください。


 ○エクサスの多様性について――特にコクピットについて


 告白させてもらいます。コクピット好き! 大好きなの!

 操縦方法とか、何人乗りとかは関係ない、コクピットそのものが……好き。

 その空間をもう抱きしめたくてたまらない。

 あぁ、早くコクピットまみれになろうぜ。


 ――とにかくコクピットを愛している事が伝わったかと思うので、前提の消化はほぼ完了しました。StepEXを続けます。

 ケイオスハウルに登場する兵器群、通称『エクサス』は、基本的に人間が使用する、大体の場合において人型を取る、大よそ六m程度のロボット達です。乗り手は湖猫ウミネコと呼ばれ、エクサスを用い様々な仕事をこなすことが多い。

 エクサスを構成する材料は単純な機械部品だけではなく、神話生物やら邪神の一部を使っていたりもして、怪しくちょっと乗るには憚られるマシーンですね。ケイオスハウルのヤバさは、この際置いておきましょう。

 砲撃型や一撃離脱型など、ロボ界隈に生きる人間にはお馴染みな運用法をする機体も多いので、出自や材料の割にはオーソドックスなロボットなのかもしれません。

 

 そして今回のStepEX、タイトルにある「エクサスの多様性」とは、エクサスの外見や装備の事ではありません。タイトルの通りです。コクピットにそれを求めるのが今回の主題です。

 エクサスは劇中で出てきていない機体以外にも、多くの機体群が存在すると思われます。

 量産、ワンオフ、試作機、その他様々とはいえ、いくつかのメーカーや組織が建造していると取れる描写も存在します。それは妄想が捗って非常に良い。いや、良い。

 ここでの問題は、コクピット内部です。エクサスの種類は一杯あるでしょう。コクピットはどうなのでしょう。

 コクピットとはパイロットが長く滞在する空間で、防護される場所でもあります。

 そして、機体はみな同じ規格のコクピットを使用している――それは恐らく違うかと思います。

 ある程度ユニバーサルには出来上がっていても、機体の運用法・機体サイズの違い、ワンオフならばパイロットの体格にも影響されるでしょう。そこです。

 斬魔機皇ケイオスハウルというクトゥルフ・ロボ・ファンタジーの物語に満足したからこそ、平茸妄想を膨らませるための材料が少しだけ、あとほんのちょっと欲しいのです。

 ケイオスハウルというマシンの異様さを、他エクサスのコクピット描写があと少し存在すれば、より強調できたのではないか……コクピット信者の平茸はそう思いました。

 そして、エクサスというマシン・ジャンルの説得力を、より高みへ導けた……かもしれません。

 コクピットの違いでも機体を描写することが出来るのです。作中の多くが一人称視点なので何でもかんでも出すのは難しいにせよ、分かりやすいチャンスがいくつかありました。

 しかし非常に良い例もありました。第22話「レッドキャップ」です。

 パイロットのシドお兄さんは、ある事情から操縦にギターを使用している描写があり、佐助君がそれに驚いています。本来コクピットにはあるはずの無いギターがそこにある違和感。ギターを使う理由。

 極めて強力なコクピット内部の描写だと言えましょう。ここ、割とガチで好きです。

 おすすめポイントに挙げられなかったのは、お兄さん比率が高まりすぎるからでした。

 

 描写をする、しない、を飛び越え、より機体を魅力的にする手段として、今回コクピット内部を描写に使うという手法をちょっとだけ紹介させていただきました。


 ロボを書く方々全てには、是非にコクピット内部をしっかり描写してもらいたいのです。

 謎空間でもいい、寝殿造りでも構いません。余裕が無ければ、一回とかでも良いのです。

 それで各機体との違い、もしくは反対に一致性が生まれるなら、一つの表現として成り立つ。そう信じます。

 生活空間の一部として取り入れるなら、居住性などの話も可能だと考えます。

 そういった積み重ねで、ロボットは成り立つ――機械巨神のお伽噺は、そこから始まります。


 今回も欲望塗れのStepEXに押し流されず、ここまで耐えてくださった皆様には、本当に感謝申し上げます。


 seal氏には遅延など様々なご迷惑を掛けてしまったようで、大変申し訳なく思います。

 これからの展開も一菌類として、一つのロボ・アカウントとして――そして一人の読者として、応援しております。

 必要になったら胞子を飛ばしますので、森の中にご一報を。

 今回は本当に、ありがとうございました。

   ――月夜平茸


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