(24)これぞ七草

 一月七日。今日の朝食はもちろん七草粥だ。

 ちなみにスーパーで買った七草パックを細かく刻んで、それをお米から作った粥に入れて蒸らし、塩で薄く味を付けるのが我が家流。

 それを、椀によそって出すと、

「おお、美味そうだな」

 みづきさんはそう言って目を細め、ぼくはホッとする。

 普段泊まっていかない限り昼から来るところを、今日は朝からおいでと誘ったのだけれども、どちらかというとタンパク質の多い食事を好むみづきさんのことだから、朝から呼び出しておいて七草粥なんて出したら怒るかな、なんてちょっと不安に思っていたのだ。

「これ、七草粥だけど大丈夫?」

 食べ始めた後で叱られるのもいやなので念のためにそう訊くと、みづきさんは、

「今日は七草なのだから大丈夫も何もないだろう」

 と微笑んだ。

「実は今朝はきっと七草粥なのだろうなと密かに楽しみにしていたのだ。そもそも七草など食べられるものだとは思っていなかったからな」

 まあ確かにゴギョウとかそこらに生えているの見たらとても食べられる感じじゃないよね。

「そんなに青臭くないからきっと美味しいよ」

 そうフォローすると、みづきさんは、そうか、と椀に視線を落とした。

「で、どれが女郎花でどれが桔梗だ? 葛は粥のとろみだろうというのは察しがつくのだが」


 ――それは秋の七草ですよ、みづきさん。

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