入山交渉

 夏休みの始まりに何やってんだろと思いながらも美咲と一緒に、警備をしている入り口まで歩いていった。美咲の方を見ると、堂々としている迫力が態度によく現れていた。どうしてここまで気を強く持てるのだろう。

「君たち何かようか。ここは今立ち入り禁止だ。」がたいのいい迷彩服を着た男が言った。

「そうなんですか?でも私たち、ここをいつも通って学校から家に帰ってるんです。」

 工藤は思わず美咲の顔を見て困惑の表情を浮かべた。嘘を付いた?それに対して美咲は、私に任せてと言っているような表情を作った。

「残念だけど今は立ち入り禁止だ。どんな理由であろうとここに人は入れれない。」

「でも何で立ち入り禁止なんです?それに自衛隊の人でしょ。警察なら分かるけど何で自衛隊が?」

 もう一人の警備してる男が不愉快そうに言った。

「君たちに教える義務はないよ。帰り道ならここの国道沿いを真っ直ぐ歩いていけば山の向こう側に行けるよ。」

「国道沿いから歩いたら山から行くより倍も時間がかかってしまうんです。どうしてもダメですか?」

「ダメだ。悪いけど言う通りにしてほしい。」

「高瀬さんもういいよ。戻ろう··」

 工藤の発言を美咲は無視して話を続ける。

「ひどい···こんな暑い中遠回りしろって?そういうこと言うんだ··わかった。」

 そう言い終えると美咲はスマホを取りだし警備してる男達を撮影した。

「おい!!何撮ってんだ!!」男達は思いもしない行動に戸惑い、声を荒げた。自分も美咲の破天荒っぷりの行動にびっくりして言葉が出てこない。

「その携帯を渡せ!」

「嫌!、そんなに入れてくれないんだったらこの写真拡散するよ?」

「高瀬さんもういいって!」

「あんたは黙ってて!」

あ··あんた?急に何でそんな慣れ慣れしい言い方を··

人が変わったような態度をとっている今の美咲に何を言っても無駄だと思い、全て任せようと思った。今年の夏休みは学校の指導で謹慎生活かもなと思うと美咲との出会いを後悔してしまう自分がいた。

「小娘が···生意気だ」

「聞こえてますけど~?」

「どうします上官?このままでは情報がネットに公開されますよ。」小声気味で部下らしき男が言った。

「··上に報告するしかない。」二人を睨み付ける眼差しで言った。

「おいお前たち今から本部に連絡する。その上でこの山を通行できるか出来ないかを決める。もしダメな場合だが··」

「ダメなら?」

「それは連絡してみないとわからないな。」

「ありがとうございます。私たちは帰れればそれでいいので。そうだよね?」

 急に振ってきたから驚いたが頷き返した。


それから十分ほど待った後、電話していた男が戻ってきた。

「喜べお前ら。本部は同行者二人を付けて山を通行するなら許可するそうだ。特別だぞ。」

「ありがとうございます!」

「あ、ありがとうございます。」意外な回答にびっくりした。てっきりダメかと思ったが。


美咲はこの時さらに破天荒な計画を頭の中で考えていた··



 

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