全ての毛無し族へ……

 デブをテーマにしたエッセイは既にカクヨム内で読んでいるのですが、まさかハゲをテーマにしたラブコメが存在するとは思いませんでした。カクヨム奥が深い。

 本作の主人公は鷲頭眩輝(わしずげんき)くん。高校生二年生。「この名前でハゲてなきゃ嘘」と言えるほどのツルピカネームですが、親(ちなみにハゲ)が名前に込めた期待通りにハゲています。「二年のハゲ」と言えば校内のどこでも通用しそうなぐらいの勢いで若ハゲがアイデンティティです。そんな受験やら就職やらを彼方に放り投げて生え際の後退に悩み続けている高校生の少年が、とある美少女ととある秘密を共有するところから物語は始まります。

 この作品の良いところはとにかく鷲頭くんが明るいところ。ハゲだけに。まあ実際はそういう物理的な意味じゃなくて、精神的に明るい。ハゲをコンプレックスにしてはいるのですが、卑屈ではないんですね。先生(やっぱりハゲ)に自分の使っている育毛剤を薦める程度にはオープンです。おかげでハゲネタに暗さや後ろめたさを感じることなく、素直に笑わせてくれます。

 ヒロインの鷹山さんも良い。彼女は天然でポンコツなトラブルメーカーであり、これは調理の仕方を間違えると「うわあ。殴りたい」と思わせる危険な属性なのですが、作者様の筆力でちゃんとかわいく書けています。鷲頭くんは鷹山さんの「秘密」を守るために奮闘し、しかし彼女がポンコツ過ぎるゆえに予想していなかったトラブルに巻き込まれまくります。つまり守ろうとしているヒロインに背中から撃たれる構造になるわけで、ここでヒロインの魅力が無いと「もうそんな女捨てたら?」と冷めてしまうものですが、本作に関してはそんな心配はございません。少なくとも僕は、読んでいて素直に応援できました。

 話の構成も伏線撒きと回収が巧みで良く出来ており、要所要所に挟まれる小さなギャグも面白く、自信をもってオススメ出来るラブコメ作品です。欠点は画的にアレなことと(漫画原作コン応募作品なのに……)、一部の男性読者にとってはホラー作品に変貌しかねないところでしょうか。毛無し族の皆様は心を強くしてご覧になってください。……さ、リアップしよ

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