第13話

 翌朝。太陽が未だすべて出てきていない。彼は熟睡している。


「ちょい、いつまで寝てんの? 速く行くわよ」


 理は誰かに蹴られて起きる。


「え? っておい! お前、何勝手に家の中に入ってんだよ!」


 寝巻のまま、掛布団を抱きしめてにらみつける。その先にいるのは御紫衣楚歌。


「ほら、行くわよ。着替えて」


 自分の質問に答えようともしない楚歌に理はあきらめる。勝手に自宅に入ってきたこと、ありえないくらい早朝であること。いろいろと突っ込みどころはあるがこれ以上言っても無駄だと感じた。


「わ、わーったよ。ちょっと支度すっから待っといてくれ」


 のそりと布団から起き上がる。


「ち、ちょっと! 何でズボンはいてないのよ!」

「ん? 茶でも飲むか? ちょっと待っとけいれてくる」

「そのまま歩くな! 服着ろ!」


 理の格好は上によれよれのTシャツ、下にはトランクスのみというとてつもなくラフな服装だった。


「俺はいっつもこれで寝てんだよ。別に裸じゃねぇから問題ないだろ」

「は!? 問題あるから! そんな汚いもん見せないでよね!」

「いやいや……。海パンと変わんねーだろ」

「変わる! バカ! 変態!」

「親父の裸くれぇ見るだろうがよ。いちいちうっせぇなぁ」

「お父さんの裸だって見たことないから! ウチは五人姉妹だから男はほとんどいないの!」

「へいへい、そーですか。で? お茶飲むか?」

「要らないわよ! 頭おかしいんじゃない!?」

「普通、客が来たら茶ぐらい出すのが礼儀だろうが!」

「変に小まめなの止めて!」


 理はパンツ一丁のまま軽く舌打ちをした。


「わかったよ。もう着替えっから向こう行っとけ」

「何で私が向こうに行かなきゃなんないの!? アンタが行きなさいよ!」


 理は開いた口がふさがらない。


「いや、だからよ、ここ俺の部屋だから着替えもこの部屋にあんだわ。だからここで着替えねーとなんねーんだよ」

「私を邪魔者みたいに扱ってるのが気に食わないの!」

「そうかいそうかい。俺も譲る気はねえ。ここで着替える!」


 理は上のシャツを脱ぐ。


「ひゃっ!」


 楚歌は顔を抑えて真っ赤になる。顔を覆う指の隙間から目がはみ出ている。


 慌てている楚歌をしり目に理はパンツに手を掛けた。


「な、なにをしてんの! アンタ!」

「俺は一日二回パンツ変えるんだよ。寝汗が気になんの」


 楚歌の歯がガタガタと震え出す。


「し、死ね! くそ露出狂!」


 楚歌のパンチが理の顔面を打ち抜いた。

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