5
あの夜。百合子は震える声で言った。
ありえない思いつきを。どこか高揚感に満ち。危ない橋を渡ろうとするような緊張した顔つきで。
「いや、……もとにしてって、右京先輩、どういう」
「そのまんまの意味」
「そのまんま……って、この、これをですか?」
問い
「今の、みんな見たでしょ。ちょっと気持ち悪かったけど、凄いインパクトだったと思わない? あの出だし! 普通じゃない、普通じゃないわ、普通の感性してたら撮れないわよあんなもの! そうよ、あれこそあたしたちが求めていたインパクトそのものじゃないの⁉︎ 心臓が止まりかける恐怖、あれのことよ、あれを使えば勝てる! 大人だってギャフンと言わせられる、コンクールに充分通用できる作品ができるはずよ、ねえそう思わないみんな⁉︎」
息巻く百合子、だが。少ししてから興奮かそれとも酔いか、どちらにせよ燃え上がっていたなにかが冷めたらしい。
「ごめん……いきなり何言ってんだ、って感じだよ、ね」
と、
「確かに、いきなり何言ってんだって感じだよ」
ガッツが呆れ顔でその場に寝っころがる。
「でも、インパクトあるってのは同意」
「……うん、私も、……本物かと思うくらい心臓が止まりかけた。多分あれが本当の恐怖って言うんだね」
続いて発言したのはかなみ。まだ顔を引きつらせながら、考えるポーズを取っている。
それを心配そうに眺める後輩たち。流石に、あの謎めいた不気味映像をリメイクするなんて馬鹿げている。彼らはそう思っていただろう――しかし。
「リメイク、案外いいかもしれない」
「俺も、やってみる価値はなくはないと思う」
かなみとガッツの遅れた賛成意見に三人の後輩たちはこれ以上ないほど口をあんぐりとさせた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます