Develop 7

 麗紅はRe-17が先までいたそのドアを見つめていた。

 ───麗紅に会いたかったから。

 恥ずかしげもなく言ったその言葉が麗紅の頭で何度も繰り返される。

 麗紅は自分の目に左手脚を映した。事故にあって、義肢を付けた生活になってから、気味悪がって誰も近付こうとしなかった。事故前から仲の良かった友達は事故をきっかけに接し方が分からなくなり、次第に離れていった。元から口数も少ない方で、事故後も、なかなか友達は出来なかった。

 久しぶりに同い年のと話した。加えて、初めて自分から進んであんなに話した。

「私って、あんなに喋るんだ」

 Re-17と知り合ってから知った新たな自分だった。もしかしたら、Re-17が相手だったからかもしれない。

 ロボットだからなのか、人じゃないからこそなのか、Re-17は麗紅をの少女として見てくれた。それだけで、今まで麗紅の周りにあったもやが晴れたような気がする。

 リアルに作られた動くことのない左の手脚。事故をきっかけに生まれた嫌な靄。

 この研究所なら、それを全て取り除いてくれるような気がする。嫌で仕方なかったもの全部を、この研究所なら。麗紅はそんな期待を抱いた。

 ───また来ます。

 Re-17が別れ際に言った言葉を思い出す。

 彼が言った「また」とはいったい何時いつになるのか。数時間後なのか、明日なのか、明後日なのか、明明後日なのか、それとも、来週なのか、来月なのか、来年なのか。

 こんなにも「また」という言葉が、曖昧であったなんて、知らなかった。

 Re-17の言ったその「また」が幾分か早いことを麗紅は願った。

 小腹が空いて、麗紅は叔母に貰ったお菓子の袋を一つ開ける。小さい頃から何個食べても飽きなかったジェリービーンズ。口に一つ放ると、いつもよりも甘く感じた。


To be continued……

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る