第4話 ツンデレ王子


高宮くんが好き。


私は初めて恋を知ってしまった。


高宮くんを見ていると、ドキドキして顔が熱くって。


なんか落ち着かないな、今日の部活。


「桜木。ネームなんだが、ヒーローはツンデレなんてどうだ?」


「へ?」


高宮くんに話しかけられ、私はドキッとする。


「新しく作るネーム。結斗観察したら良いツンデレ男子描ける」


「つ、ツンデレかぁ」


高宮くんをモデルにした男子をヒーローにしてたんだよね、破かれたネーム。


私的には高宮くんのままで行くつもりだったけど・・・


ツンデレは人気だ。


でも


私、姫島くんとはそんなに仲良くなれてないな。


「そういえば、みっちゃんのネームはリアルさに欠けると言われたのよね?なら、陸斗。あんたがデートしてあげたら?みっちゃんと」


「デート?」


「あ、あ、綾ちゃん!?」


綾ちゃんの提案に私は驚く。


「デートなら男子の事良く知れるし!」


「よし。桜木、俺は構わない。ネームの件も俺のせいだったし」


「高宮くんは悪くないから!私に気遣ってデートしないでも・・・」


本当はしたいけど・・・


「俺は全然構わない。桜木と出掛けるの楽しそうだ」


「え?」


どうしよう。


デートとかいきなりすぎるよー!


「おい、陸斗。お前、デートの意味分かってんのかよ?」


「桜木と秋葉原行ってアニメショップ巡りしたりしようかと思うんだが」


「バカか!そんな事したら、好感度ダダ下がりだ!攻略対象の女の子が好きそうな場所に行く。これ、基本な」


「結斗もデートした事無いくせに」


「んだと?大体、綾斗!何でこいつなんだよ?一番恋愛に無頓着で女心分かってない男だぞ?」


「そ、それは消去法かしら?あたしとみっちゃんだと女子同士の買い物みたいになるし、ユイユイはみっちゃんにきついから」


「きつい?俺が?」


「みっちゃんと全然話さないじゃない、あんた」


「そ、そりゃあそうだ。こいつ、陸斗と最近やたらと仲良いからやだ」


うっ!


「子供ねぇ。ユイユイは」


「うっせ」


やっぱり姫島くんと仲良くするのは難しいのかなぁ?


うぅ・・・


部活が終わると、私は高宮くんと姫島くんと綾ちゃんと帰宅。


だけど


姫島くんとは全然話せないまま、別れた。


姫島くん、私の事嫌いなのかなぁ。


「ただいまー。あ!」


そういえば、今日お母さん帰るの遅いんだった。


とりあえずご飯炊いて、お惣菜買おう。


料理作ると時間かかるし。


その時間があったらネームを書ける!!


私はご飯を炊くと、家を出た。



いつものスーパーで良いよね?


私はスーパーで買い物をする事にした。


「あった!イカの唐揚げとコロッケで良いよね?あとインスタントの味噌汁を・・・」


ん?


インスタントの味噌汁コーナーへ行くと、小学校一年生くらいの女の子がメモを見ながらずっとキョロキョロしていた。


「どうしよう。店員さんに話しかけるの怖いよぅ・・・」


困ってるみたい。


よ、よし!


「あ、あの!大丈夫?」


「ひゃっ!」


私が声をかけると、彼女は驚いた。


ツインテールの似合う可愛らしい小柄な女の子だなぁ。


「お、お姉さん・・・サフラン分かりますか?」


「サフラン?」


「お兄ちゃんにお使い頼まれたんだけど、サフランが分からなくて。フルーツなのかなぁ。琴莉、店員さんに聞くの怖くて・・・」


そういえば、前にお母さんにパエリア作ったなぁ。


母の日のプレゼントで。


「私、場所分かるよ。案内してあげる」


「あ、ありがとうございます・・・」


私も店員さんに聞けない時代あったなぁ。


「これだよ?サフラン」


「こ、これがサフラン・・・フルーツじゃない!」


「パエリアによく使うんだよ」


「あ、ありがとうございます!」


彼女は笑顔で私に言った。


可愛い!!


「後、他にもたーくさん探さなきゃ」


「偉いね。お使いなんて」


「お兄ちゃん、いつも家事たーくさんやってるから琴莉もお手伝いするの」


「そうなんだ!お兄ちゃん頑張ってるね」


「そうなの!琴莉のお兄ちゃん、すごくかっこよくて優しいんだよ!多分、お姉さんと同じ学校!」


「えっ?」


「あ!あんまり遅くなっちゃうと、お兄ちゃんが心配しちゃう。えっと、他には・・・」


「あの、私も手伝うよ!また分からないのあったら大変でしょ?」


「あ、ありがとう!お姉さん!」


私もこんな妹欲しかったなぁ。


この子、本当に可愛い。



「これで全部かな?」


「うん!早速レジに・・・」


「琴莉!」


え・・・


「あ、お兄ちゃん!」


彼女は呼ばれ、振り向く。


ひ、姫島くん!?


「えっ?何で桜木が・・・」


「お兄ちゃん!お姉さんとお友達なの?」


「えっ?ああ・・・同じクラスで同じ部活だ」


「あのね、お姉さん!琴莉のお買い物手伝ってくれたの。琴莉、サフラン分からなかったから」


「ごめんな。お兄ちゃんがちゃんと教えるべきだった」


「ううん。お姉さんと見つけたから大丈夫だよ!」


姫島くんの妹だったんだ・・・。


「迷惑かけて悪かったな、桜木」


「う、ううん!私は大丈夫!」


「お兄ちゃん、どうしてスーパーに?サラダとスープ作ってたのに」


「琴莉、サイフ忘れてっただろ?」


「あ!」


「リビングのテーブルに置きっぱなしだった。ほら、うさりんちゃんのお財布。うさりんちゃん琴莉に置いてかれて泣いてたぞ?」


「ごめんね!うさりんちゃん!」


「琴莉はドジだなぁ」


「ごめんなさい、お兄ちゃん」


「良いよ。早く気付いて良かった」


姫島くんって本当に妹さんに優しいんだなぁ。


高宮くんに過保護なのも、妹さんがいるからなんだろうな。


「つーか、桜木。お前、まさかそれが夕飯って言うんじゃないだろうな?」


姫島くんは私の持っているスーパーのカゴの中を見て言う。


「えっ?そうだよ?お母さん遅くなるからさ。料理してたら時間かかってネーム書く時間が減っちゃう・・・」


「バカか。栄養偏りすぎだろ、それ」


「えっ?」


「ちゃんとした飯を食え。油っこい物ばかりとはいかんな」


「うっ!」


「お兄ちゃん、琴莉・・・お姉ちゃんとご飯食べたい」


「えっ?」


「良いでしょ?琴莉、お姉ちゃんともっといたい!」


「はぁ。仕方ねぇな。桜木、それ全部売り場に戻して来い」


「へ?」


「うちで飯食ってけ」


「あ、ありがとう・・・」


姫島くんの家・・・


急展開だ!


「すぐ作るから琴莉と遊んで待っててくれ」


姫島くんの家に着くと、私は驚く。


大豪邸!


芸能人の家っぽい!


「お姉ちゃん!琴莉と遊ぼう!」


「うん、琴莉ちゃん!」


「琴莉のお部屋行こう!」


「出来たら呼ぶからよ」


憧れの漫画家さんの自宅にいるんだ、私。


なんかドキドキ!


「見てー!魔法少女リリアのお人形さん!」


「わ!可愛いね」


琴莉ちゃんは私に今人気の魔法少女アニメの人形を見せる。


「お兄ちゃんが買ってくれたのー!大好きなんだ!ね、お姉ちゃん!一緒にリリア描こー!」


「うん」


琴莉ちゃんの部屋、ピンクで統一されてて可愛いなぁ。


「お姉ちゃん、リリア上手!!」


「ありがとう。琴莉ちゃんも上手だよー」


「えへへ。ありがとう!」


私はクレヨンでお絵描きして遊ぶ。


「この子も描いて!お姉ちゃん!」


「良いよ!」


私は別の魔法少女も描く。


「わあ!可愛い!お姉ちゃん、これ!琴莉が貰っても良い?」


「うん、良いよ」


「ありがとう!お兄ちゃんにも見せてくるー!」


「あ、琴莉ちゃん!」


私は琴莉ちゃんを追いかける。


「見て見て!お兄ちゃん!お姉ちゃんがリリアとマリカ描いてくれたの!」


「お!良かったなぁ!琴莉」


姫島くんは琴莉ちゃんの頭を撫でる。


あんな優しい顔するんだなぁ、姫島くん。


「魔法が世界を救うのだー!まほ、まほ、まほ、まほ、魔法少女リリア!世界を救うプリンセスー♪恋にお勉強頑張るのー!」


琴莉ちゃん、いきなり歌い出した!


「魔法少女リリアー♪キュートでチャーミングなプリンセスー♪」


姫島くんも歌い出した!?


「ひ、姫島くん?」


「さ、桜木!い、いたのかよ!いるならいるって言えー!」


姫島くんは顔が真っ赤だ。


私に見られたからだろう。


「姫島くん、歌上手いね」


「こ、琴莉が一緒に歌えっていつも言うから仕方なくだよ!」


「お兄ちゃんね、琴莉より先に歌とダンス覚えて琴莉に教えてくれたのー!」


「こ、琴莉!!」


姫島くん、魔法少女アニメ好きなんだったな。


そういえば・・・


「いいから琴莉はお姉ちゃんとお絵かきしてなさい!お兄ちゃんは料理してるんだから」


「はーい!お姉ちゃん!今度は魔法少女リリア一緒に観よう!お兄ちゃんがDVD買ってくれたんだー!」


「う、うん!」


姫島くんって同じ部活になる前は怖くていつも威圧的な態度をとってるイメージあったけど、実際は妹想いの良い人なんだなぁ。


「ほら、できたぞ」


「わっ!これ、全部姫島くんが作ったの?」


「当たり前だろ」


テーブルにはパエリアとサラダとスープが並べられている。


すごいレストランみたいなクオリティ!


「いっただきまーす!」


「い、いただきます!」


私は姫島くんが作ったパエリアを食べる。


「ん!すごく美味しい!!美味しいよ、姫島くん!」


「そ、そうかよ」


「ねぇねぇ、お兄ちゃん。今日、りっくんは来ないのー?」


「陸斗?」


私は高宮くんの名前が出されてドキッとする。


「あいつは今日欲しかったゲームが届いたから家から1歩も出ないと思うぞ」


あ、そっか。


ライアスのゲームが届くって高宮くん、今日ずっとウキウキしてたもんね。


「た、高宮くんよく来るの?」


「まあな。幼馴染みだし。家もちけぇからな」


「そ、そっか」


「お前さ、もしかして陸斗が好きとか?」


「へ?」


「分かるんだよ。陸斗を好きになる奴は散々見てきてるから」


「そ、そうだよね。姫島くんには分かるか」


「言っとくが、俺も陸斗に助けられた。お前みたいにな!」


「へ?」


「俺、昔いじめられててよ。陸斗だけが庇ってくれたんだよ。だから、武道習って不良っぽい外見作って外見も中身も強い感じにして陸斗を守れる男になるって生きてきたんだ」


「それで不良キャラに」


「きゃ、キャラ言うな!ま、実際の俺は美少女アニメやギャルゲー大好きなキモヲタ。これくらいにならねぇと、周りも認めちゃくれない。陸斗や綾斗と違って俺は嫌われやすいからよ」


「わ、私は姫島くんはそのままでも良いと思うけどな」


「あ?」


「え、えっと!さっき、琴莉ちゃんと歌ってるとことか琴莉ちゃんや高宮くんに世話焼くとこ良いなって思ったから。同じ部活になる前は怖かったけど、今は印象が変わったよ!前より姫島くんと仲良くなりたいなって思うし」


「な、な、何言ってんだ!?お前。魔法少女リリア歌う男見て素敵とか・・・」


「でも、普通に上手だったし!可愛いと思ったけどなぁ」


「か、可愛いだと!?」


「ご、ごめん!男子に可愛いは禁句だよね」


「べ、別に気にしてない」


「良かった!」


「あー!お兄ちゃん、顔まっかっかー!」


「琴莉!」


「ね、お姉ちゃん!お姉ちゃんはお兄ちゃんの彼女なのー?」


「えっ?」


「こ、琴莉!ちげぇからな!」


「でも、お兄ちゃんが仲良い女の子初めて見たよ!琴莉」


「そ、そんなんじゃねぇよ」


「なーんだ。でも、琴莉!お姉ちゃんがお兄ちゃんと結婚したら嬉しいな!お姉ちゃんができるから」


け、結婚!?


「琴莉、兄ちゃん怒るぞ?」


「ごめんなさーい!」


「それより、桜木大丈夫かよ?時間」


「あ!もうこんな時間なんだ」


「やだやだ!お姉ちゃんとバイバイしたくないー!」


「琴莉、ワガママ言うな。お姉ちゃん困るだろ」


「ぶー!」


琴莉ちゃんは私に抱きつく。


か、可愛い!


「ごめんね、琴莉ちゃん。また遊ぼうね?」


私は琴莉ちゃんの頭を優しく撫でる。


「お姉ちゃん、約束だよ!」


「うん、約束!」


「指切りげんまん嘘ついたらハリセンボンのーます!指切った!」


私達は指切りげんまんをする。


「・・・桜木。家まで送るわ」


「へ?」


「もう遅いしよ」


「あ、ありがとう!姫島くん!」


「おぅ」


「バイバイ!琴莉ちゃん!」


「うん。バイバイ!お姉ちゃん!」


私達は姫島くんの家を出た。


「ごめんね。長居しちゃって。夕飯もご馳走様でした」


「いや。助かった。琴莉の相手して貰って。でも、あいつがあんなに懐くなんて驚いた」


「そうなの?」


「人見知り激しい方だからな」


「そうなんだ」


「陸斗が気に入るのも分かった気がする」


「姫島くん?」


「つ、つーか!料理くらいちゃんとしとけ。女子なんだし」


「あ、今日はネームに集中したかったから。時間削減にお惣菜を」


「えっ?」


「あ、でも!明日部活で描くから大丈夫だよ」


「わ、悪かった。そんな事情知らないで強引に連れ込んで」


「大丈夫だよ!楽しかったし。琴莉ちゃんとたくさんお絵かきしちゃった」


「あのよ、また・・・遊びに来ても良いんだからな。お、俺はどっちでも良いけど、お前来ないと琴莉が泣くからよ」


「姫島くん・・・」


「ま、どっちでも良いけどな!」


「良かった!私、姫島くんに嫌われてると思ってたから。嬉しい」


「だ、だから勘違いすんな!琴莉が会いたがるんだって。お前の事、嫌いなわけではない」


「うん!」


「・・・ったく」


「じゃあ、私の家すぐそこだから。また!」


私は横断歩道を渡ろうとする。


すると


「危ねぇ!」


「えっ?」


いきなり姫島くんに強く腕を引っ張られ、その勢いで私は姫島くんの胸の中へ飛び込む。


わわっ!


「ご、ごめん!ありがとう!」


「いや。ったく!あの車信号無視しやがって」


姫島くんが引っ張ってくれなかったら危なかったんだ、私。


「気を付けろよな!桜木も!」


「ご、ごめんなさい」


「ほら、家の前まで送ってやる。なんか危なっかしい」


「あ、ありがとう」


び、びっくりした!


でも


姫島くん、やっぱり私を嫌ってないんだ。


嬉しいな。


「じゃあ、ここで」


「おぅ。またな、桜木」


「今日はありがとうね」


「ああ!」


今日は姫島くんとたくさん話せて良かったな。


部活の皆ともっと仲良くなりたいな。



「おはよう」


翌日になると、私は綾ちゃんと高宮くんに挨拶する。


「おはよう、桜木」


「おはよう、みっちゃん!」


「ね、部活終わったらさ!みっちゃんと陸斗、デートしなよ?漫画の参考に!」


「へ?あ、綾ちゃん!?」


「ネームの件は俺にも責任があるし、協力する。桜木」


た、高宮くんとデートやっぱりやるんだ!


だけど


「俺も協力してやっても良いぞ」


え?


「ひ、姫島くん!?」


「あと、桜木。合コンの話は無しな」


「ひ、姫島くん!どうしたの!?」


「陸斗より俺がデートに協力した方が勉強になんだろ」


「むっ!俺が先約だ、結斗」


「陸斗にデート出来るとは思わねぇな」


「あら、これは三角関係の予感かしら??」


「へ?」


「桜木、俺とデートするよな?約束、俺が先」


「俺が桜木とデートしてやるよ。このギャルゲーマスターの俺がな!」


「え、えっと・・・」


「どっちか選んで、桜木」


「選べよ!桜木」


「えぇっ!?」


わ、私・・・


どうしたら良いんですか!?


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