情動は不可解

 体育祭や球技大会という運動系の学校行事となると、全員が全員身体を動かすのが得意、などという訳は当然ないから、クラスの中で誰がどの種目に出るのか、全て割り振るのに担任や学級委員が苦労していたのを覚えているが、俺の場合に限っては、毎回すんなりと決まっていた。元々、さほど積極的に『何かをやりたい』と主張する方でもなかったし、頼まれれば拒むこともなく、何の種目でも文句なく受けていたからだろう、とは思う。

 だから、高校入学以降初の一大イベントとして周囲が盛り上がる中、特段にスタンスを変えるつもりもなかったのだが、

 「おーい浦上ー、また副部長から来たぞー。『リアクション薄かったし君からもプッシュしといてー!』だってよ」

 「はい、こっちは『君に頼むのもなんかむかつくけど』以下同文ー。ついでに交流会が終わり次第、ごま団子はツイストリフトからのデススパイラルコース決定でー」

 「うっわーめっちゃ具体的な上にガチでやっちゃえそうだしー……で、どうすんのお前、なんかこの人異様に燃え上がってるけど?」

 「いや、まだ、決めてない」

 今回に限って、こうも周りを固めにかかられると、さすがにそういう姿勢も改めるべきなのか、と思わされてきて。

 火曜日の、昼休み。俺も含め、だいたいの生徒はとうに昼飯も済んでいる時刻。

 一年一組の廊下側一番前、という、出るにも入るにも手っ取り早いが、先生に指される確率だけはやけに高い自席に座っていた俺は、目の前に突き出された二つのスマホを前に、そう短く応じていた。

 と、俺の席の前に立ち、半ば戸口を塞ぐようにでかい身体で陣取っているチカは、軽く眉を上げると、

 「おや、そこまだ悩むところ?正面切って売られた喧嘩なんだし、素直に買っちゃっていいと思うけどねえ」

 「それに、出なかったら出なかったでうるさそうじゃね?お前、一回先輩たちに勝ってるんだし、向こうとしたらリベンジの機会も欲しいんじゃねえのって気もするし」

 「それはあの人らの都合で、元から俺がどうこうする筋合いじゃないだろ」

 後ろの自席に座ったまま、返信しているのかスマホを操作しながら木原が続けたのを、はね付けるように言ってしまうと、俺は机に置いていたプリントに目をやった。

 A4判のそれは、今日の六時間目、LHRの時間を使って行われる『体育祭全校交流会』の案内だ。篠上の体育祭は組数そのままに七組を作るが、一組なら一組というように学年を縦に割るのではなく、実行委員会が発足した時点でくじ引きが行われて、ランダムに組み合わせが決まる、ということになっている。そして、全校生徒が体育館に集まり、赤、橙、黄、緑、青、藍、紫と割り振られた、虹の色をなぞった組色に別れて、全員で出場種目を決めていくのが慣例らしい。

 その中でも、体育祭の最終種目であるメドレーリレーについては、交流会の席で四人、学年を問わず選出されるのが、イベントのメインでもあるようで。

 「まあ、勝手につっかかってこられてイラっとするのも分からなくはないけどさ。これ、割といいチャンスじゃないの?公の場でなら、さすがにあのモヒカン先輩もジャッジには文句付けないだろうし」

 チカの台詞に顔を上げるより先に、でかい手が目の前に伸びてきたかと思うと、指先が各組の一覧をなぞるように動いて、ぴたりとある一点で止まる。

 指し示されたのは、その一列目。赤組:1-1、2-7、3-4、と記されているのを、とんとん、と妙にリズミカルに叩いてみせながら、奴は続けた。

 「それに、お前んとこ部長と、ついでにごま団子も一緒なんだし、この際まとめて意趣返ししてやれば?」

 「別に、俺は、反撃してやりたいと思ってるわけじゃない」

 「そう?なら、なんでそんなに珍しくむっつりしてんの、お前?」

 わざとらしく語尾を上げた、逆撫でるつもりらしい問いに目を向けると、切れ長の瞳が悪びれる様子もなく見返してくるのに、微かな苛立ちを覚えて眉を寄せる。

 そもそも、こうも周囲に話が広がったのは、副部長が原因だった。先日、実行委員会に出ていた部長を俺に迎えに行かせた後、図書室の窓からその一部始終を見ていたらしく、戻るなり二人揃って根掘り葉掘り聞きだされて、今の事態を招いているわけで。

 ……喋ったのは自分の責任だとはいえ、なんで、こうまで。

 「はいはい、チカも浦上もそのへんで一旦フリーズー。ていうかつついて悪かったけど、そもそも俺らが揉めるとこじゃねえんだし」

 至って軽い調子の声が間に割り込んできたのに、ほぼ二人同時に視線を移すと、木原は同じプリントから顔を上げて、意味ありげに俺を見やってきた。

 「けど、このままだとお前指名されるの間違いないと思うぜー?うちで立候補する奴もいねえみたいだし、記録もダントツでトップなんだからさ」

 「そーそー、だいたい堤が控え目でも望月があんだけ騒ぎまくってるから、逃げんのも難しいしな」

 何気なしに会話に入ってきた知らない声に、数瞬の間理解が追いつかずにいるうちに、真っ先に反応したのは木原だった。あ、と口を開けたのを目にすると同時に振り返ると、同じように首を巡らせたチカのすぐ隣に、まるで見も知らない人物が立っていて。

 とりあえず目に入ったネクタイは緑で、三年であることは間違いないらしい。チカより若干低くはあるものの、余裕で長身の域に入るその人は、ハリネズミのように突っ立った短髪の下の、妙に人懐こそうな丸い瞳を細めて、よお、と右の手を上げてきた。

 「いきなり邪魔して悪いな、韋駄天。しっかし聞いてた通り、すげえほっそ」

 「でかい図体で入口を塞ぐな、この阿呆が。俺どころか誰も入れんだろうが」

 やたらと機嫌よさげな挨拶も何もかもを断ち切って、今度は聞き覚えのある声が響いたかと思うと、その『でかい図体』の上半身がぐん、と後ろに傾いで。

 「ちょ、待って待って梶!俺まだなんも話せてないんだけど!」

 「いいから廊下に出ろ、お前だけでも幅を取るが、迎までいては狭くて敵わん。浦上、すまんが少し出てこれるか?」

 「……はい、大丈夫っすけど」

 「……ていうかさあ、あれ、マジでどこのどなた様?」

 「知らないねえ。それにしても梶先輩、意外と力あんのね」

 木原の発した当然の疑問に、感心したように言ったチカの言葉通りに、見知らぬ先輩の両の肩に手を掛けて、非常口前の方へと容赦なく引きずっていく漫研会長の姿を見ながら、俺は取り急ぎ席を立った。



 それから、呼ばれるままに三年二人と一年三人で、廊下の端に寄り集まって。

 「悪い悪い、梶が『あれは、韋駄天だな』って言ってたもんだからさあ、俺もてっきりすっかりあだ名になってんのかなーって思って」

 「謝るところはそこじゃないだろう、三上みかみ

 教室を出てすぐの、校舎の南端になる両開きの非常口を背にして立っている梶先輩は、いつも通りの厳しい口調で切り捨てると、傍に立つ大柄な人を手で示してきた。

 「時間もないので手短に言うが、これは三上みかみ之洋ゆきひろ、陸上部の部長だ。どうしても浦上と顔を合わせてみたい、というので連れてきたんだが」

 「いやー、うちのバカ三人が迷惑掛けたからさ。それにまだ今井もリレー出られるって決まったわけでもないのに先走りまくったらしいし、それも含めて謝んなきゃってわけで、ほんとごめんなー」

 「いえ。個人的なことですし、部長にまで頭下げてもらうようなことじゃないんで」

 硬そうな短髪に手をやりつつ、すまなさそうに腰を折ってきた部長にそう返すと、俺もあらためて頭を下げる。だいたい、余計な手間を取らせたのはこちらも同じだからだ。

 すると、姿勢を戻した三上部長は、お、と声を上げると、大きく笑みを浮かべて、

 「いいねえいいねえ、なかなか礼儀正しくて。堤が褒めてた通りだし、俺としても勧誘したくなっちゃうんだけど」

 「お前、その手の話は一切しない、と言っていただろうが。まだ蒸し返すのなら地学のノートは今後一切貸さんぞ」

 「いやごめんそれは無理ですすいませんこの通り。でも、葛城かつらぎ先生に聞いたんだけど、特に短距離、すげえ速いんだってな」

 間髪入れずの梶先輩の台詞に即座に返しながら、俺の全身をまじまじと眺めてくるのに、どうにも居心地悪い思いになる。体育の授業での記録を知られているらしいこともだが、さっきからやけに、うちの部長の名前ばかりを口にされるのも、何か引っかかって。

 「なあなあ浦上、本気でメドレーリレー出ない?実は俺も出場予定なんだよね、今年で体育祭も最後だし」

 機嫌のいい大型犬、と思わせるような、丸い瞳を輝かせた三上部長の言葉に、とっさにもう一人の先輩に目を移すと、梶先輩は、既に眉間に深い皺を刻んでいて。

 「三上。干渉はしない、とも言わなかったか?」

 「干渉じゃないって。だってこれは、俺からのお願い兼勝負の申し込み、だからさ」

 「今井先輩のこととは関係なしに、ってことですか」

 「あー、そこなんだけど、ちょっとな」

 ふっと浮かんだ俺の疑問に、途端に言いにくそうに口ごもったのに、それまでは黙って成り行きを見ていたチカが、いきなり口を挟んできた。

 「確か、あのモヒカン先輩って二年四組だったっけ。となると、もしかするとそちらの部長は五組、ってことじゃないんですか?」

 「……あー、そういや、さっきの!」

 その組み合わせに思い当たったのか、声を上げた木原が教室へと駆け込んで、すぐさま交流会のプリントを手に戻ってくると、俺の目の前にさっと突き出してきた。

 「ほら、ここだよここ!『紫組:1-7、2-4、3-5』って!」

 「ああー……あっさりバレちゃったかー」

 「だから、濁したままで済むものか、と言っただろうが」

 チカと木原の推測を、ちょっと情けなさそうに認めた三上部長に、梶先輩は息をつくと、

 「そういう次第で、状況はお前らの察した通りだ。しかも、これが出場するつもりだと周りに漏らしたおかげで、下馬評でも紫組が一位間違いなし、と言われているんだが」

 続いた話は、要するにこういうことだった。陸上部でも実力で一位二位、という三上、今井の部長副部長コンビが確定すれば、頭一つ分抜きんでたタイムに敵う者はまずいない。しかし、他の組には対抗馬が一向に見当たらないとなると、やはり最終種目としては盛り上がりに欠けるのではないか、という意見が、実行委員会で出てきたそうで。

 「そしたら、本多が『なら、走れる奴を引っ張り出せばいいだろうが』って言うもんで、梶と図書部に聞いてた韋駄天のことを思い出してさ。赤組の二年にはちょうど良く森村もりむらがいるし、二人が組んだら、かなりいいところまで来てくれるんじゃねえかなって」

 「森村?」

 また知らない名が出てきたのに、オウム返しに聞き返すと、梶先輩が応じて、

 「お前を追った奴らは、今井の他に二人いただろう。そのうちの一人だ」

 「ほら、いっつもどっか眠たそうな顔してるのと、なんか眉下がっててしょんぼり雨に濡れた子犬っぽい顔とがいただろ?その犬に似てる方だよ」

 三上部長のやたらと具体的な説明に、言われてみれば、と思い出した俺の横で、チカが面白がっているように喉を鳴らすと、

 「どうする?傍目で見れば面白くても、巻き込まれるとただひたすら鬱陶しいパターンだけど」

 「マジで身も蓋もねえし!けど、めんどくさい割に絶妙にメリット見当たらねえよなー」

 そう言いつつも、木原まで伺うようにこっちを見てくるのに、すぐには答えも出ずに、俺は口を噤んだ。

 元々がメリットデメリットという話でもないし、勝ち負けにこだわる理由も俺にはない。ただ、あの人に絡まれてから、鈍い苛立ちめいたものがずっと腹の底にあることだけは、自覚はしていて。

 「……あのさ、やっぱダメか?」

 そろそろと尋ねてきた声に目を向けると、少し背中を丸めた三上部長は、えらく申し訳なさそうに顔を俯けて、

 「今までのこともあるし、そもそも組むのも嫌かもしれねえなってのは考えたんだけど、あいつら三人はむかつくくらいにすぱっと振り切られた、って言うし、それに、堤にさ」

 三度目に口にされた名前に、得体の知れない感情が火花のように弾けて、身を固くする。だが、奇妙な強張りに気付く様子もなく、部長は言葉を継いだ。

 「俺より速い?って冗談で聞いた時に『誰よりも、かどうかまでは分からないですけど、身軽で風みたいで、凄く凄く速いんですよ!』って、めっちゃ真剣に言われたからさー、俺としても一緒に走ってみてえなー、とか思っちゃって」


 その姿が、容易なまでに想像してしまえて、違う意味で身体が固まる。

 きっと、いつかのように真っ直ぐに見上げて、一生懸命に、俺のことを。


 さっきよりもずっときつい衝撃に、訳も分からずに立ち尽くしているうちに、梶先輩が小さく息を吐いて、

 「……浦上、こいつは単なる陸上馬鹿で、本当にただ走りたいだけだ。だからといって、それが子供のような真似をする言い訳になるわけではないが」

 「えー、梶ー、フォローしてくれるんなら最後までやってくれよー」

 「……あの、三上部長」

 俺の呼びかけに、不満げな声を上げていたでかい人が動きを止めて、期待に満ちた瞳をじっと向けてくる。チカが長らく借りっぱなしの図鑑にこんなのいたな、と思いながらも、俺は口を開いた。

 「走ること自体は割と好きな方なんで、それは構わないです。けど、もう、今井先輩があの人に絡む理由はないはずだし、勝ち負けどうこうで蒸し返されるんならやりたくない、ってだけで」

 溜まっていたものを言葉にしていくうちに、底に根を張るように動かせないものがあることに気付いて、勢いのままに続ける。


 「俺だけのことなら、どうとでもしますけど。堤部長に迷惑がかかるようなことだけはしたくないんで」

 

 本当ならまるで関わりのないことで、一方的に攻撃されて、傷つけられて。

 理不尽に立ち向かわせてしまったのは、あの一度きりで終わったはずなのに、しつこく構うような真似をするのが、無性に苛立って。

 ようやくそう思い至って、ぶつける相手を間違ったことに今更ながら気付いたものの、吐いた台詞を差し戻せるはずもなく、そのまま黙りこくっていると、

 「……あー、そっか、そういうことかー」

 ぽかん、としていた三上部長が、唐突に腑に落ちたように声を上げると、なるほどなー、と、また頭を掻いて。

 しばらく、何をどう言ったものかというように、酷く迷っている風だったが、

 「……えーとな、あいつが部活の関係で迷惑掛けることは、もうしないって約束出来る。俺が再三でも再四でも言い聞かせるし、抑えられるから」

 断言して言葉を切ると、再び考え込み始めた挙句、やがて言いにくそうに続けてきた。

 「けどまあ、それ以外で個人的に絡みたい、ってのは、俺にもどうにもできないからさ。あとは……なんていうか、堤次第、ってとこだと思うから」

 その意味を、頭が完全に理解する前に、遮るように予鈴が鳴り響く。音のありかを追うように天井を見上げた梶先輩は、すぐに顔を戻してくると、

 「三人とも、時間を取らせて悪かった。浦上、こいつの言うことはあくまでも話半分に聞いておけ」

 「ちょっ、梶俺結構真面目に話したつもりなんだけど!とにかく、例のことは前向きに考えといてなー!」

 登場した時と同様に、そこそこ身長差のあるいかつい肩を右の手で掴んで、未だ叫んでいる三上部長を、有無を言わせず引きずって行った。

 じきに南階段を下って行った後ろ姿を見送りながら、消えるどころか、余計に拡大した引っかかりを自覚していると、ぽつりと木原が零した。

 「……チカ、あの部長、何犬だと思う?」

 「申告通り速いんなら、ガタイからしてグレイハウンドかな。性格はちょっと違う気もするけど」

 同じ感想を抱いたらしい問いに、さらりと答えたチカは、そろそろ帰るわ、と告げると、五組の方へ戻るべく俺の横を通りざま、わずかに身を寄せてきて。

 「あの部長、お前に、なかなかいいヒントくれたんじゃないの?」

 囁くようにそう言うと、こっちの反応には構う様子もなく、大股に歩き去っていった。


 拒むのも受け入れるのも、あの人次第だということは、分かっているのに。


 洗い出されたその正体を見据えたところで、片付ける方法すらも何一つ思いつかずに、俺は腹の底で絶えずくすぶり続ける感情を、ひたすらに持て余していた。



 とはいえ、そういう経緯があろうがなかろうが、嫌も応もなく交流会の時間は到来して。

 『……生徒は、舞台に掲示してある各組の配置場所に、すみやかに集合してください。また、スペースが限られていますので、むやみに広がらないよう注意して……』

 進行役を務める放送委員の声が、校内の至るところに響く中、教室から専用の上履きに履き替えた生徒の群れが作る流れに乗って、のろのろと体育館への渡り廊下を進んでいく。

 と、ふいに携帯が震えるのが、身体に伝わってきて。

 「なに、このタイミング、ひょっとして副部長?」

 「……いや、違う」



 From 堤 真雪

 Subject リレーのこと


 小鈴が弾けすぎてて、ごめんなさい。

 なんだか凄い勢いで、知らないうちにあちこちに話してたみたいで。

 それと、私が三上部長に張り合っちゃったというか、

 浦上くんのこと、自慢しちゃったのもあるから、余計にというか。

 もう止めるとか、そういう段階じゃなくなっちゃったんだけど、

 私、今回救護班だから!万が一のことがあっても全力で手当てします!

 もちろん、応援も全力で、って約束するから!



 「おーい、浦上って。いきなり止まんなって、渋滞するだろうが」

 「……悪い、ちょっと先に行っててくれ」

 気付かないうちに足を止めていたのに、軽く肩を叩いてきた木原にそう言って、絶え間ない人の波からわずかに外れて、手の中の文字を再び見やる。

 誤魔化しも何もない、素直に過ぎる言葉の羅列を、もう一度確かめるように目で追っていくうちに、残り火も消えて。


 この人に、気に掛けてもらえるのは、単純に嬉しい、そういうことなんだろう。


 またひとつ、積み上げられた何かを頭の隅で意識しながら、携帯を閉じようとした途端、押しとどめるように着信音が鳴って。



 From 堤 真雪

 Subject ごめんなさい!


 万が一のことって、何かその、浦上くんの運動神経を

 疑うみたいになっちゃってるみたいかなって!

 絶対そういうわけじゃないです!

 それに、転びかけて助けてくれた時も凄かったから!

 だから、あらためて一緒に頑張ろうね!



 ……気にするとこ、そこなのか。

 どこかズレながらも、必死でどうにか挽回しようと(それも、まるで必要ないのにだ)文字を打っている姿を見ていたかったような、そんな思いがふっと沸いて。

 ともあれ、くれた言葉に値するだけの働きはすると心に決めて、俺は短く返事を打った。

 勝つにせよ負けるにせよ、決して失望だけは、させないように。

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