第31話 綾野祐介の日常3

 橘准教授が帰った後。綾野はマリアに報告

をした。自らの考えも含めて。


「そうですか。ということは岸本女史も何か

の遺伝子を継いでいる可能性があると?」


「そうかも知れません。そうでないかも知れ

ません。可能性の問題です。彼女の遺伝子サ

ンプルを取得してもらって調査することはで

きないでしょうか?」


「本人の了解が必要でしょうね。詳細を話さ

ないといけません。」


「本人はショックをうけるでしょうね。」


「それは仕方ありません。それか職員全員に

同じようにサンプルを提出するように指示す

る、という方法なら特別に説明は必要ないで

しょうが。」


「念のため全員について調査する、というこ

とですね。それでもし見つかった者が複数い

るのなら私がその人を見ればハッキリするこ

とだと。」


「そうですね。結果をそのまま各人に伝える

必要もないでしょうが。」


「丁度いい機会です、この際、財団内部の人

間には全員調査対象になってもらうことにし

ましょう。」


 こうして財団極東支部の百人を超

える職員全員について、特殊な遺伝子調査が

実施されることになった。


 調査、分析に二週間を要したが、全員につ

いて結果が出てきた。マリアと綾野の二人だ

けで結果を吟味することになった。


「岸本女史の他にはあと1名、情報処理担当

の小田正文という者が何かの遺伝子を擁して

いるようですね。知っていますか?」


「いや、多分面識はないと思います。早速会

ってみることにしましょう。」


 綾野とマリアは管内の視察と称して小田の

元を訪れた。特に声を掛けることもなく、そ

の部屋は辞し、支部長室に戻った。


「どうでした?」


「岸本君と同じです。やはり何かの遺伝子を

継いでいる人に纏わりついて居るように見え

る、というのか正解のようですね。」


「そうですか。との混血児のよう

に遺伝子回帰してやつらと同じように変貌し

てしまうことが無ければいいのですが。」


「そうですね。注意は必要でしょう。本人に

話をするかどうか、は別に考えることにしま

しょう。」


「それと、あなたのその能力は何かの役に立

つことがあるかも知れません。」


「何かの?」


「そうです。旧支配者たちの遺伝子を引継ぎ

回帰してしまう可能性がある人を見分けられ

るのです。一般人の中にでもね。」


「それはそうかも知れません。例えばそうだ

と分ったとして声を掛けたり、もっと言えば

拘束したりする、ということですか?」


「これは政府とも協議しないといけない問題

ですね。警察当局とも連携しないと。」


「何か魔女狩りのようなことになりかねない

ので慎重に事を運ぶ必要がありそうです。」


 なんだか話が大きくなってきたことを不安

にしか思えない綾野だった。

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