第1章はじめての彼女ができるまで第2話 ダレモワタシノコトヲシラナイ

中学校生活のスタート。


ダレモワタシノコトヲシラナイ


「◯◯小でしょ?」『△◻︎小だよね?』


と、中学に入ってからのクラスメートは学区の小学校名を挙げてくるので、


私『小学校卒業と同時に学区外から引っ越してきたんだ。同じ市内ではあるんだけどね』


と、答えてまわっていた。


私の小学校時代の素性は新しい中学校というコミュニティーでは明るみに出ることはなさそうだ。


本当にゼロから始められる、、!


マイナスからのスタートではないんだ、、。


これを機に真人間になろう。


そう、、


日が昇りまた沈むことに感謝しよう。

土に根をおろし、風と共に生きよう。

種と共に冬を越え、鳥と共に春をうたおう。


今はなぜ小学校時代の私が滅びたのかよく分かる。


どんなに面白いファミカセを持ってても、

たくさんの可哀想なガン消しを操っても、

人が離れては生きられないのよ!



さて、、


中学校に通い始めて真っ先に行ったことは、もちろん女の子のチェックだ。


小学校とは違い皆制服を着ていてなんだか少し品が良く見えた。


同じクラスの中で目星をつけた子は3名程。


なんとかお近づきになりたいものだが、マイナスからのスタートではないけれど、私が突然ハイスペックになった訳でもなく、勝手にモテたりなんてもちろんしなかったし、いくら夢想しても空から女の子は降ってこなかった。


そんな中、美術で異性の似顔絵を描くという授業があった。

図工→美術となんだか気位まで上がった感じも良かったが、自然と異性とお近づきになるチャンスが早々に訪れたのだ。


私はもちろん一番のお気に入りの子の絵を描くことに決めた。

その子は大人しめで口数も少ないが随分とアチコチ発育の良い子だった。

私は比較的絵を描くのが得意であったことと、その子をモデルにしたのが私一人だったため皆に一目を置かれ入学早々にささやかなポジションを得ることに成功した。


その子とのコミュニケーションはその後それ以上の進展はなかったが、満更でもないようだったので良かった。


中学校生活にも少し慣れたころ、部活動が始まることになる。


いくつかの部活に仮入部もしてみて色々と考えた結果、テニス部に入部することにした。

競技自体が楽しそうだという事と、小学校時代からのスポーツ刈りを少し伸ばしてみたかったこと、女子部もあるということが大きな決め手だった。

なんとかお近づきになりたいものだ。



予想に反して、私は部活動にのめり込んだ。


早朝から朝練をし、放課後は日が暮れるまでラケットを振るった。

テニスの教本を買い、ビデオを見て、練習に明け暮れ、2年の始めにはなんとかレギュラーになることが出来ていた。


いつものように練習に励んでいたら、ラリーで打たれたボールがイレギュラーに飛び、私の頭上を越えてコートの外まで行ってしまった。


『死ね!!』


と、軽く悪態をつきながらアウトコートのボールを拾いに行く際に、強い視線を感じてそちらを見ると女子が3人立っていた。


なんだろう?誰だっけ?


ボールはまだ少し先にあるのでそこまで歩く。


ラケット面をボールに軽く叩きつけバウンドさせることで屈まずにボールを手に取り、振り向いてまたコートに戻る際も、まだ3人の女子はこちらを見ていた。


すれ違い様に女子の誰かが


『ファンです、!』


と、言った。

と、思う、。


特に返事をするわけでなくコートに戻ってラリーを再開した。



そのあとは練習にならなかった。

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