第15話 襲撃者

大剣をさばき続ける、額に黒い石を掲げた大男。


獰猛な眼光をちらと左右に巡らせてから呟いた。

「無駄に足掻きやがって」

「よそ見?それとも、やっと捕縛される気になったかしら」

大剣はあり得ない程の高速で、屈んだ襲撃者の背をかすめる。


「すぐに死ねばよかったものを」

黒い石の下で、眼光は大剣使いに標準を合わせた。


「ぐっ、がああっ……!」

大剣が通り過ぎた所で、大剣使いは地面にへばりついた。

「俺を知っているなら重力魔法の事も知っていただろうに。使い物にもならない馬鹿は死ね」



「……魔法か!」

低く構えたままでレフトが言う。

「体が……重い!」

ライドは苦々しく言い放ち、剣を振り回す。

ライドが得意なのはどちらかと言えば、刺突攻撃。


「重力魔法……相性が悪いのに対処が遅れた」

そういいつつも、三回敵を斬り、二人の敵が戦闘不能になっている。

「詠唱型じゃないみたいだな」

レフトは分析を開始した。


「どけ!」

レフトは二人の前に立ちはだかった人物を斬り伏せた。

「なんだよ……敵にも効いてるんじゃないだろな?」

ライドもそう考えていた。言霊も陣も使わない魔法はどこかしら欠点がある。

「効いてるよ、あの壁」

微動だにしていなかった敵の壁が、少しもたついているのが分かる。


その時、少しの浮遊感がして重力が元に戻る。

レフトは刀を持ち直してライドの右前方に出た。

「早くたたこう」

合図とともにライドは加速しなおし、戦闘の加速に突っ込んでいく。


「ぐっ……がぁっ」

蹴り飛ばされた聖者は、空中で大剣と分離する。

重力解放直後に胴体に蹴りを入れられたのだ。


「……お前、あれだろ。ちっちゃなメス犬」

ゆっくり聖者へと歩み寄りながら、ひとちる襲撃者。


「よくこんなに肥え太ったもんだ」

聖者は背骨を負傷したのか、動けない。その体に足をあてがう襲撃者。

「……んぐ! ……っ」

たがいをにらむ間、大男は右手に力をためている。


「ロマイオン、焼き尽くせ」

右手から爆炎が放たれる。


しかし、大男は離脱できなかった。

感覚が麻痺しそうな衝撃。とどろく音。魔法の使用者にダメージを与えないように制御された爆弾がぜた。


「ちっ……横槍よこやりが入ったか」

男が振り返った瞬間、人の壁を突き破って防御を完全に破壊した。

人が飛び散り、落ちていく。


「ここを壊したのはお前らだな」

感情を押し殺して僕は言った。レフトは続けて聴く。

「お前らは何だ」


怒りをあらわにした色が黒い男は、何も聞いていなかったように言う。

「お利口なガキは、死ね」

そういうなり、黒い剣を取り直してむかってきた。

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