第10話 ツリーハウスタウン、焼失

ホテルに着いた。

処置はナリアさんがしてくれて、レフトの病院での検査も経過に問題が無かった。

今は、レフトと一緒に応急処置室にいる。

レフトに会ったせいだ。

むかしのことが沢山思い出される。

レフトは強くなるために旅に出たいと常々言っていた。

そのために南へ旅に出た。聞きたい。南の事や、何で、戻ってくるどころか僕を探しにきたのか。

そのくせ僕は何も果たせず…。


「いっ…いつつ……」

レフトが呻きを上げた。


「起きたか!聞きたいことが山ほどあるんだ」

手首をさすっていたレフトが僕を見て驚きを表した。

「ライド!どうして、…いや、ここどこだ?」

顔を見ても先ほどとは全く違う。純粋な戸惑いに間違いない。


「ここ、…病院か?」

「ホテルだよ。ホテルの応急処置室。正気みたいでよかった。連絡してくるから待ってて」

胸をなでおろした僕は部屋を後にした。

「…正気、みたい?……」

レフトのつぶやきは誰の耳にも届くことはなかった。


僕とレフト、ナリアさん、そしてリリちゃんとリクセルで昼食をかこっている。

「どうしてこうなった…」リクセルのため息が小さく漂った。

確かに先ほどの関係からしてみると奇妙な組み合わせだ。

「…俺が、そんなことを…」

昨夜からの記憶がないというレフトは、よほどお腹がすいていたのか、かなりの勢いで昼食を平らげる。

「それで、僕に裏切者だって言ったんだ」

からん。レフトがスプーンを取り落とした。


「…そうだ。ライド、言いにくいんだけど…」

ただならぬものを感じて、僕はスプーンを置いた。

「“ツリーハウスタウン”は、燃え尽きた」

「!!!!!!」

たまらず、椅子を引き倒して身構えた。

遠くなりかける視界で、驚愕に染まる皆を見た。


「何者かによる襲撃を受け、九十%が全焼、人口の三十%である、八十三名しか助からなかった。もちろん、その中にケガ人もいる」

痛みが走った。

体にではなく、心に。


「…レフトの、親父さんは?」

「そこまでは火は来なかったみたいだ」

「…、……」

言葉にならない。次の、言葉が…。

もしかしたら、口をパクパクと動かしているだけで、馬鹿みたいに見えるかもしれない。

でも、苦しかった。想像もできないけど、僕の、家族は。


「…ライドの親たちは村の人をかばったんです」

ナリアたちにも言うように、そっとレフトは口にした。


「どうなったのか分かるのですか?」

ナリアはライドの代わりに問う。


「焼死体が少ないのです。…さらわれたんだと思います」

そこで、ライドは涙をこぼした。

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