第9話 旅立ちの記憶

移動中、レフトの顔を眺めながら考え事をしていた。

昔のこと、レフトと僕がそれぞれ旅立ったころのこと。


「夕ご飯までには帰りなさい」

「はーい!いってきまーす」

かなり昔の話、いちばん古い記憶。

「ありゃ。ライド坊、またわざわざこっちまで来たか。レフト、行ってこい!」

「おっす、ライド!待ってた!行ってきまっす」


二人で遊んだ日々。よく、木の棒でチャンバラやってたっけ。

「喉渇かないか、氷入りのスペシャル蜂蜜ジュースポーポリコックだ!」

「やったー!」

「ありがとう、おじさん!」


ポーポリコックみたいに甘酸っぱくて、陽の光みたいに暖かくて。

懐かしいな。



「召喚成功!見た目はこけおどしだ、騙されるな」

二人の前に大きな怪物が現れた。レフトの親、ジャックさんが召喚したのだ。

「僕がフェイクステップするよ、攻撃頼んだ!」

「任せろ!」

怪物をかく乱して、右へ百二十度視線をずらす。

レフトが怪物を背後から斬りつける。

勝ったら二人でハイタッチをする。

「「イエーイ!」」


二人で強くなった。二人だから強くなれた。



「レフト!旅に出るって、どうしていきなり!?いつから考えてたの?」

「旅に出たいっていうのはだいぶ前から言ってた」

「それは確かに小さいころに聞いたけど…どうして今?」

「その日が来たんだ。言うのが遅くなった」


確かそうだったな。

レフトが旅立ってしまってすごく焦った。



キラキラと川が輝いている。

いちばん新しい記憶。

この記憶は、僕が旅立てるようになった頃のことだ。

「なんだ?」

川の底に、いつもとは違う輝きが混ざっている。

川に手を突っ込んでも届かない。

ざぶざぶと川に立ち入って掴んだ。

「よいしょっと…」

真円のような曲線を持った円盤だ。曲線の溝がついている。

「…あっ」

ちょっと触っただけで二つの勾玉に割れた。

二つの勾玉がくっついている形だったのか。

周りを見渡すと、先日の土砂崩れで山から崩れ落ちてきた岩がごろごろしている。


僕は、この石の鑑定をギートに頼んだ。

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