第7話
地平から顔を覗かせたばかりの太陽が、勇者一行を照らす。
「眠いのじゃ。朝3時からのロケはキツイのじゃ」
ロケ言うなー。
「もう6時半ですものねっ!」
王女と司祭、2人の目線の先には、城の尖塔。そこには巨大な時計の文字盤があった。
湖から水路を引き、その流れを利用して水車を動かし、シャフトを介して針を動かす。針は一本――「時」のみだが、それでも最近出来たそれは、この国の国民生活を大きく変えていった。
「我が国の脅威の科学力、なのじゃ」
ただし、1時間弱ずれているけどね。
「あれ、勇者さまはっ?」
「3話の布の服に着替えておるのじゃろ。少し待つのじゃ」
ゴーン。
7時の鐘が城下町一帯に響き渡る。
「遅いです。勇者さまに逃げられたのでは」
「デバッグのミスで兵士を配置し忘れでもしない限りは逃げられないのじゃ」
しかし、この世界では街の中でも時間は経過する。
「そろそろ出てこないと、妾のパスワード発給業務が滞ってしまうのじゃ」
「バッテリーバックアップになったら仕事を移管してくださいですっ」
一方その頃。
扉の向かいでは王女たちが動くのを今か今かと待っている勇者の姿があった。
二人が入り口を通せんぼしていて、ドアが開かないのであった。
>はなす
「王女、ちょっとそこどけてよ!」
そこには誰もいない。
「ちょっと、聞いてる司祭?」
カウンター越しに声をかけられるが、鉄格子以外のドア越しに声は届かない。
>とびら
「なんで施錠のない扉なのに消えないのよ!」
――仕様です――。
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