第9話  おせちに入っているクリントン


夫の日本語、話す方は「あああ、惜しい」というのが多くて、通じるけど何か変だよ。というのが多い。何かが足りない、とか。

これは私の英語も同じだ。なんか多すぎ、なんか足りない。


リスニングの方は、時々とんでもない勘違いもある。


 和食も大好きな夫はお正月はかかさずお節料理を食べる。 好きなのは、黒豆、伊達巻、栗きんとん。日本食材店で買ってきたお正月用品を冷蔵庫に片付けている時、夫に

「栗きんとん多めに買ったよ」と声をかけた。

「え?クリントン ?」

「ち、違うよ!栗きんとん!台所にあるよ!」

「クリントン大統領?」


なんでよ。

笑いすぎてお腹よじれた。栗きんとん大好きな夫は笑われても嬉しい。台所で味見だ。


話す方は、英語の文法そのまま日本語を入れて失敗というのが良くある。英語は言葉の後にプリーズをつける。そうすると動詞で始まると命令形になる言葉でも柔らかくなる。


例えば Sitシット(座れ)をプリーズをつけると(座ってください)に。

ちなみにSitは限りなくセットに近い発音でシットと発音すると(くそ)になる。

 

夫はプリーズとは丁寧な言葉、日本語で言うと(ください)と覚えている。


Eat please は食べてください。 

Drink please は飲んでください。


家族にも少しでも丁寧に話そうとする夫は、


「ご飯、ください」という使い方をする。ですが、息子になにか頼むとき大抵失敗している。


電気消して、と言おうとして

「電気、ください!」


宿題、しなさいは

「宿題、ください」


ゴミ捨てて、は

「ゴミ、ください!」


極めつけは猫のトイレ綺麗にして、と言おうとして

「猫のうん○、ください!」


くださいって。ねこのって……これが本当のシットプリーズ。


こちらもお腹が痛くなるまで笑った。

「忘れないようにメモしておこう」と手帳に書いているとすごく悔しそうな夫。

「やめて!」

そこにくださいつけたら完璧なのに。惜しい。


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