チップの話 3  チップを使えば紳士淑女にだって負けません!

 チップを使うっていってもホテルでは枕銭とか荷物のチップくらいでしょ、と思う方も多いハズ。

 でもチップを使うのに決まりはありません、ホテルにはチップが活躍する場所が他にもけっこうありますヨ。


 代表的なのがコンシエルジュへのチップ。

 コンシエルジュはレストランの予約から各種エンターテインメントの情報やチケット手配までホテル滞在中とてもお世話になる存在。何か頼んだときにはチップを渡して顔なじみになっておきましょう。


 そして、ホテルでチップが一番チカラを発揮するのはこういう時。ウィーンでの事デス。


 皆でディナーに向かうためホテルのロビーに集合。外をみると雨がパラパラと降り始め。うーん、ちょっとマズイ。


 だって金曜のディナータイム前に雨。タクシーをつかまえるにはカナリの悪条件。当然ホテルでもタクシー争奪戦は必至です。しかも相手はドレスアップしたこちらの紳士淑女の皆様。僕たちにとってはまさに完全アウェイの不利な条件。

 

 加えて僕らは総勢10名の大人数、タクシーは最低3台必要。でもさっきから外を眺めているのですが、タクシーはなかなかホテルの車寄せに入ってまいりません。

 この状態が続けば僕たち全員がタクシーに乗るには相当な時間がかかってしまいそう。


 でも、幸いなことにタクシー待ちはまだチラホラという程度。今のうちに手を打つことに。


 手を打つということは・・そうチップ。


 見たところベルボーイはドアの外に3人ほど。中にボス格?が一人。

 コチラのメンバーが全員揃ったところで、まずは中の親玉にご挨拶。

 

「ディナーに行くのにタクシーが3台必要なんだけど・・よろしく頼むよ」

 一瞬、外のヤツラに頼めよ、みたいな表情がちらつきます。でも握手の手を差し出すと反射的に彼も手を出します。当然僕の手にはチップのオ・サ・ツ。


 チップの握手を交わした後、彼の表情は一変。

「オーケー、お任せください!」

 満面の笑顔でやる気モード。外に出て3人のベルボーイにテキパキと指示。


 でもあいにくの雨、なかなかタクシーはまいりません。

 そうこうしてるうちに予想通り車寄せはディナーに向かう客でケッコウな賑わいに。ウーン、ヤな感じ。


 そこへやっと一台のタクシー登場。


 ホッとして第一陣を乗せようとした、その瞬間、突然すぐ横からゴージャス?なカップルが出てきてそのタクシーに乗り込もうと・・。

(オイ、その車はウチのダヨ!)


 と、そのときベルボーイが彼らの前に立ち塞がり、やんわりと拒否。こちらの一組目を乗せてくれました。

 ボスの指示は外のベルボーイにもちゃんと伝わっておりました。

 お客さんが乗り終えるとこのベルボーイさん、コチラに意味ありげにアイコンタクト。はいはい、分かってますよ。握手でしょ。ボスからはこれも伝わっているのネ、まあ当然。


 通常タクシーを呼んだくらいではチップといってもコインがせいぜい。チップなしというケースも多いですからネ。お札のチップは破格。


 そして、次、その次と三人のベルボーイさんひとり一台づつキッチリ仕事。捕まえてきたタクシーに群がる?着飾った紳士淑女たちを振り払いこちらまで誘導してきてくれました。

 コレなかなかいい気分。おかげ様で、思ったよりも早くミッション完了。全員が大きな時間差なしにレストランに到着することができました。


 これがチップを使わなかったらどうなっていたことか。


 金曜のディナータイム、雨という悪条件。ベルボーイも一時的な混雑時には細かい対応はしきれません。


 そうなると、バトルですから強者優先。つまり乗ったもの勝ち。こういう時、アウェイの日本人は圧倒的に不利。しかも僕らが必要なのは3台・・ディナーにたどりつくのは何時になったやら。

 考えただけで気が遠くなりそう。


 結局、チップでそんな事態を回避。多少の出費にはなりましたが・・。


 でも、無料で受けられるサービスには限度があります。ベルボーイもチップ抜きでは最初のタクシーに割り込んできたカップルを止めてくれたかどうか・・。


 それに、そもそもケッコウなお金を出して海外に来ているわけですから、多少のチップを惜しんでせっかくのディナーを台無しにすることもありません。


 ウィーンでの楽しいディナー。チップのおかげでゴザイマス!


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