チップの話 2  チップの握手はスペードのエース!

 さて、チップをうまく使えば世界が変わるとか、旅行が楽しくなるって言われても簡単にはガッテンしにくいですよネ。

 なにせ、ずっと悩みのタネだったのですから。これを変えるには、チップのご利益を味わうことが一番。まずはレストラン!


 例えば、エレガントなレストランでディナー。中に入ると、まずはフロアを掌握するメートル・ドテルさんがお出迎え。


 たいがいは品の良い笑顔の紳士。ここで一言二言かわします。といってもスマイルで“今晩は”プラス・アルファくらい。


 でも、ココ、とても大事。


 メートル・ドテルさんはここで私たちの服装・物腰などを値踏みして、レストランのどの席に配置するかを計算しています。


 きれいな景色を眺められる素敵な席になるか、はたまたウエイターの出入りが激しい厨房寄りの落ち着かない席になるかは、彼のさじ加減ひとつ。

 ここをウマクやっていい席をゲットしたいですよネ。


 でも、普通プライオリティーはよく来るお馴染みさん、そして由緒正しきセレブ系の皆様に、といった順番。私たちは一見の客。しかも遠い東からきた外国人。いい条件ではありません。


 そこで・・そう、チップの出番。


 メートル・ドテルさんと挨拶のときに、まず握手。これは習慣ですから、こちらから手を差し出すだけで十分。


 モチロン、ただの握手ではありません。


 こちらの手の中にはチップのお札。そう、このタイミングでチップ。


 一見の私たちは最初が肝心。食後にいくらチップを奮発したってあとは帰るだけ。チップは後出しなんて決まりはアリマセン。


 メートル・ドテルさんも心得たもの。手の感触で以心伝心、いっそうの笑顔をみせてくれるでしょう(ちなみにこのチップの握手、あちこちで使えるスペードのエース。覚えておくと便利です)


 希望のテーブルに着けるかは店の予約状態にもよりますが、これで少なくともプライオリティーは上位にランクアップ。


 レストランにとっては、チップを奮発してくれるゲストも常連やセレブに負けず劣らずの上客です。


 そして、この手のチップ情報はすぐソムリエやウエイターたちに伝わるもの。当然、彼らのサービスにも力が入ります。


 料理を持ってくるたびに特上の笑顔で「マダム、ボナペティ!」とか「オイシイデスカ?」とホスピタリティ全開。

 そんなふうに接してくれたら、どんな高級レストランでもリラックスできますよネ。


 ゆったりした気持ちで美味しい料理をエレガントな雰囲気の中でいただく、至福の時間が私たちを待っています。


 じゃあ、チップをもらえなければ彼らはサービスしない?


 そんなことはありません。ただ、サービスする側も人間です。相性のいいお客さんやお馴染みさんとは会話も弾み距離も近まります。自然とサービスも手厚くなるというもの。


 エレガントなレストランで美味しい料理をいただく、だけではなくレストランの魅力を余すことなく味わい極上の時間を過ごす。


 チップをうまく使えばそんなことも待っているかもしれませんヨ。

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