「あなただけじゃない。みんなそうだから!」

「みんなって誰と誰と誰ですかー?」と小学生みたいな屁理屈を言ってみたりして……(苦笑)。


この言葉の意味って、どう捉えるべきなのでしょうね。「辛いのは自分だけだなんて思うべきじゃない。みんな頑張ってるんだからあなたも頑張って」という叱咤激励ってやつなんでしょうか?


 それとも――「実はみんな悩んでいる。だから、悩んでいるあなたはおかしくなんてない。自分を責める必要はないんだよ」という、まずは相手を肯定する言葉なのでしょうか?


おそらくは、前者でしょうかね(汗)。「みんな」という言葉は非常に便利で危険な言葉です……。


 育児に悩むときって「世の中の母親の中で辛いのは自分だけだ」なんて思う人は少ないのではないでしょうか? 逆によその母親たちもみんな悩みながら頑張っているであろうことを痛いほど理解していると思うのです。だからこそ辛い……。


 みんな頑張っているのに自分は頑張れていない。わかっているのに、ちゃんとできない。そんな思いに苦しくなるのが育児なのではないかと。


 なんていうのかなぁ、どうしたって「やって当たり前、できて当たり前」みたいにされがちですからね、育児って。そりゃあまあ、本当にできていないということは、子どもがどうにかなっちゃってることとイコールですからね……。できるもできないもやるしかないという。ある意味、きちきち結果を出し続ける日々というか(これはちょっと大げさな言い方かな)。


 私、思うのですけどね。困難や幸福って比較ができないと思うのですよ。本人が幸せだと思えば幸せだし。本人が大変だと思えば大変。周りからみれば「えー、世の中にはもっともっと苦労してる人がいるじゃない」という状況でも、本人が困難と感じたらそれはもう困難であって。逆に「平気? 本当に大丈夫?」と周りが思っても、本人が大丈夫で幸福と感じていれば幸福という。


「みんなそうだから」というのは、「落ち着いて、もっと視野を広く持って考えてみて」というアドバイスなのかもしれません。でも、大切なことはその人個人の気持ちに寄り添うことなのでしょうね。


 結局のところ、周りとの比較で得られる安心というのは脆かったりしますし。「みんなもそうなんだ」とか「私より大変な人もいるんだ」「あの人に比べれば……」。そういった安心は一時的な効果しかなく、すぐまた不安に苛まれてしまいます。比較し始めるともう比較し続けるしかなくなったりするので、ちょっと怖いのですよね。


あなたはあなたでいい。困っているあなたも、悩んでいるあなたも、泣いているあなたも、どんなあなたも大切なあなたに違いないのだから――。そんなふうに、自分の存在を認めてくれて寄り添ってくれる味方がいてくれたら……。

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