終章 悠久



 高速の剣撃を支えてきた感覚のブーストが、解ける。

 ひどい目眩と、心地よいとは言い難い重い疲労感に襲われ、ホタルは地面に座り込んだ。

 終わった。


「レンゲ……私、勝ったよ。レンゲの仇、とれたよ」


 堆積した砂を掴み、ひとりごちる。

 砂は風にさらわれて、たちまち手から吹き散っていった。

 なんだろう、この空虚さは。

 レンゲを殺したシザーマンに復讐する、その執念だけがホタルをここまで衝き動かしてきた。

 この世界のことも、自分自身の過去も何もわからないまま、ただ仇を討つことだけを。

 それさえ果たせれば、この砂のように己も吹き散ろうと満足だった。

 これでレンゲの無念は、晴らせたのだろうか。死者は何も語らない。

 復讐という目的が達成された今、ホタルは本当の意味で独りぼっちになった。

 しばし、廃墟を吹き渡る砂塵だけが寂しい音を奏でる。

 その静けさを破って、場違いな拍手の音が響いた。


「見事ね、ホタル。よくぞユウナを倒したわ」


 ぱちぱちぱちと、どこかわざとらしい拍手をしつつ、瓦礫の陰から人形が姿を現した。

 DOLLのようだったが、ホタルは一目見て顔をしかめた。

 廃墟の戦場において、何もかもを間違えているとしか思えない出で立ちだった。目に障るけばけばしい緋色のドレスが存在感を誇示し、頭は同じ色をして目が眩んで痛くなるような光沢で、無駄に華美を強調している。

 足が悪いわけでもないだろうに気障にステッキをつき、ホタルを見下ろす碧氷色の瞳はルックスにお似合いな傲岸不遜さを漂わせていた。ホタルの第一印象は、「派手過ぎる不細工」だった。


「……誰、貴女?」


 立ち上がろうともせず、露骨な不快感を滲ませた低い声を出す。質問というよりは、さっさとここから立ち去れという威圧のつもりだった。見たところ武器も持っておらず戦闘能力も無さそうだ。今は誰とも、特にこんな風体の奴とは会話する気分にならなかった。

 赤いDOLLはあら、と肩をすくませた。全ての動作が嫌味っぽくて、初対面なのに不思議なくらい癇に障る。


「やはり貴女も、理想郷アルカディアの記憶が封印されたままなのねホタル。道理で貴女がレンゲやアサナと仲良くしていたわけだわ」


 ホタルは片眉をぴくりと動かした。ホタル、シザーマン、アサナ、さらにレンゲの名前を口にし、しかもホタルに過去の記憶が無いことにまで気付いている様子だ。

 しかし妙だ。シザーマンは、理想郷はグランドクエストに勝った人形が行ける場所だと話していた。その口調は真剣で、嘘をついている様子は無かった。それなのにこの赤いDOLLは、あたかもホタルを含め自分達が過去に理想郷にいたような口ぶりだ。

 全ては、失われた過去の記憶に結びついている。ホタルが問い詰めようと口を開きかけた時だった。赤いDOLLは相変わらず尊大な口調で少し遅めの自己紹介をしながら、ホタルの方へ近付いてきた。


「そういえば、質問されていたのだったわね。私はサクラ。製造番号ND-623、ナカジマ技研製第3世代型DOLL。そして、かつて貴女を殺し、今日再び貴女を殺すことになる者よ」


 サクラと名乗った赤いDOLLの喋り方は終始抑揚が同じ、まるでどうでもいい自慢話をだらだら続けているような口調で、それ故にホタルは反応できなかった。

 どうっ、と空気が爆ぜた。左の翼の付け根に、鈍い衝撃が走る。


「ぐっっっ!」


 遅れて背中に痛みが広がっていく。なんだ今のは? 攻撃が見えなかった。ひとまず空中に上がって状況を把握すべくはばたこうとしたホタルは、そこで左の翼が動かないことに初めて気付いた。視界を動かす。左の翼が無くなっている!

 剣で斬られた? あのステッキに実は剣が仕込まれていた? いや、違う。何も得物を持たないサクラの構えを見て、ホタルは息を呑む。

 拳だ。ただの素手の一撃。それも、直接触れてすらいない。右拳の突きで生じた空気の圧力だけで、片翼をもぎ取ったのだ。

 戦慄が、全身を駆け抜けた。こいつは強い。シザーマンと同じか、もしかするとそれ以上。

こいつの武器は剣でも鋏でもない、常識外れの筋力値そのものだ。ホタルは、相手を見た目だけで脅威でないと判断したことを悔やんだ。


「ふふっ……本当に忘れているのね、ホタル。貴女は前にも、こうやって私に負けている。その時の記憶が戻らない以上、今回も貴女の負けは確定しているわ」


 碧氷色の瞳を細め、サクラが宣告した。忌々しいが実際、彼女の繰り出す拳がホタルには見えない。

 しかし、今の不意打ちでサクラが攻撃したのは、ホタルの片翼だ。致命傷になるボディそのものを狙っていれば、それだけで決着はついたはず。敢えて翼をもいでホタルの逃げ道を封じたのは、時間をかけていたぶってやろうという意図以外に考えられない。つまり、こいつは勝利を確信し、戦いを楽しんでいる。勝機があるとすれば、その慢心だ。

 ホタルは剣をほぼ垂直に構え、地を蹴った。サクラに肉薄する。サクラが目を見開く。

 慣性力を乗せた突きを続けざまに放つ。威力よりも手数を優先し、回避できないようタイミングをずらして。瞬間、サクラの身体がぶれて見えた。

 サクラは目を見開いていたが、その瞳孔は、ぴたりとホタルの剣の先端に焦点を合わせていた。シザーマンでさえ鋏で受けていた高速の突きを、僅かなステップ、恐ろしい正確さで次々とかわす。敵から見れば小さな点に過ぎない突き技の軌道を、かすりもしないとは。


「ちいっ!」


 硬直によるカウンターを避けるため、ホタルは全力で身体を左に捻る。その捻った先で、再び空気が爆発する。

 ずごおっ!

 ドレスが、引き裂かれる感覚。サクラの拳が、ホタルの胸を直撃したのだ。致命傷を覚悟しドレスを見下ろしたホタルは。


「……え?」


 サクラの拳が、ホタルの胸を貫いて背中から突き出ていた。なのに、ボディが損傷した痛みは無い。ライフも減っていない。

 いや、そもそも。

 ドレスの下に、胸はあったのか?


「だから言ったでしょう、貴女は既に死んでいると」


 サクラの呟きが、微かに聞こえた。遅れて衝撃がやってくる。身体が浮き、ホタルはそのまま廃墟に背中から突っ込んだ。


「かつて、完全自律型の人形は私達DOLLだけだった。世界が滅びるまでは」


 瓦礫の中に倒れたホタルに、サクラはゆっくりと歩み寄る。


「世界が、滅びた?」


 ホタルの身体は動かない。頭が混乱している。

 サクラは倒れたホタルのドレスの破れ目、そこから覗く何もない空間をステッキで弄んだ。


「コンピューターウイルスが大国の保有する大量破壊兵器の制御を乗っ取り、一夜にして世界は滅びた。数十億人いた人類は残らず死に絶えた……そういう設定のようね、この世界は」


 サクラは顔を歪め、苦々しげに周囲の景色、空を覆う黒い雲にどこまでも続く廃墟を見回す。


「設定ですって?」

「そうよ。終末、世紀末、審判の日、何でもいいわ。この世界は『いかにも』過ぎるのよ。空想上の『人類が滅亡した世界』。黒い雨、汚染された大地、吹き荒れる砂塵、見渡す限りの廃墟。そういうテンプレを寄せ集めた、作り物の世界だわ。だっていいこと、私達はある晩いつものように眠るための省電力モードに入って、目が覚めたらいきなりこの有様だったのよ。仮に本当に最終戦争があったとして、たった一晩で人間が一人残らず死に絶えると思う? しかも私以外のDOLLは、この世界に違和感を抱かないよう元の世界の記憶の大部分を封印されていた。アサナは途中で思い出していたようだけど。極めつけが、スティーヴン・キングの小説に出てきそうなモンスターの群れに、元の世界でミノルがやってたオンラインゲームみたいなシステムよ。笑わせるわ」


 ミノル。その名前を口にしたときに、サクラの酷薄な顔に懐かしさの断片が混じった。サクラの大切な誰かの名前なのだろうか。ホタルがそう思った時だった。


――夢は今も巡りて 忘れ難き故郷こきょう


 あの時と同じだ。身体の奥で何かが蠢き、再びいくつかの記憶の断片がホタルの頭に流れ込んでくる。ホタルは軽く頭を振り、頭痛を堪えた。幸いサクラは自分の話に入り込んでいて、気付いた様子は無い。


「……それで、元の人間がいた世界を『理想郷アルカディア』と呼んで、そこに帰ろうとしているのね。今の貴女の仮説通りなら、この世界は人間によってつくられた一種の仮想空間ということになるけど、それなら『グランドクエスト』、どうしてあれがここから抜け出すための手段になるの?」


 その『グランドクエスト』で、レンゲは殺されたのだ。ホタルの静かな問いに、サクラはしばらく黙った。再び口を開いた時、サクラの顔は苦々しさを通り越して青ざめていた。


「こんな世界、私の精神に対するストレステストに決まっているからよ。だって、現れたのはモンスターだけではなかったわ。貴女も見たんじゃないかしら、私達以外の人形を」


 ホタルは無言で頷いた。確かに見た。ディータ・イル・マヌーク、セシリア・リープクネヒト、大勢のフィギュアの兵士達。


「簡単な法則に従って動くだけのモンスターや張りぼての安っぽい世界観だけなら、よくあるMMORPGと何も変わりない。でも、あの人形達は違う。簡単な法則を超えた、喜怒哀楽のリアルな感情と高度な動作を実現している。そんなことができるのは、DOLLに用いられているイザナミウム……個性や感情を発現させる演算素子だけよ」

「DOLL以外の人形がいることが、どうしてストレスになるの」

「だってそうでしょう? 停滞したこの世界で、私達は人間なしで動き続ける。死なない限り、ずっと。永劫に等しい時間の責め苦の中で魂が摩耗し、生きながら心が死んでいく。それは死よりも残酷で、醜いわ。……それなのに私達は、もう特別な存在ではない。あの人形達に特別であることを脅かされ続ける」


ホタルは、背筋に寒いものを感じた。この世界で一体、どれほど長い時間が流れたのか。

その中で目の前のサクラというDOLLは、生きたまま少しずつ魂を摩耗させ、姿形は元の彼女のままで少しずつ狂っていったのだろう。アサナが言っていたように、本人が今語ったように。

サクラの長い語りも、そろそろ終わりが近いようだ。


「私達は、この手でこの世界を文字通り終わらせなければならないのよ。そうすれば元の世界に還れる。人間と共に生き、目蓋を開ければ明日がやってくると疑わず、そうやって途切れることなく続いていく日常を取り戻せるのよ」


ああ、やはりこのDOLLは狂ってしまっている。

悠久というものの醜い側面を、この世界で嫌というほど思い知らされたはずなのに、それでも悠久を求めて元の世界へ戻ろうとするのか。そこに理想郷を求めるのか。

矛盾しているが、気持ちはわからなくもなかった。何故なら、ホタルもかつて悠久を願ったのだから。

しかし。


「……何の確証もない貴女の願望通り、この世界で他の人形を皆殺しにすることで元の世界に戻れたとして、そこに貴女の居場所は無いわ。狂ってしまった貴女の居場所はね。それからもう一つ」


ホタルは、意地の悪い笑みを浮かべてみせる。


「この世界を『いかにも』過ぎる作り物だと言ったけれど、追い詰めた敵を前にとどめを刺さずに長広舌をぶつ貴女も十分に『いかにも』過ぎるボスキャラね。そういう悪役には、テンプレの結末がお似合いよ」


最後の言葉が終わると同時に、ホタルは残った右翼で地面を叩いて身体を転がし、胸部を貫いたサクラのステッキをすり抜けた。

距離をとって起き上がり、一本の薬瓶を取り出す。かつて、自分よりもホタルの身を案じた優しい仲間が持たせてくれた、即効性の治癒効果がある貴重な回復アイテム。これまでお守りとして、どんな窮地でも使わなかった物。


ありがとう、レンゲ。


一気に飲み干した。間をおかず、背中の左側で何かが盛り上がっていく感覚。期待通り、もぎ取られた翼が再生していく。


「あら……あの病院で手に入れたのね。翼を再生させて、空へでも逃げるつもり?」


 卑怯者とでも言いたげな目をするサクラに、苦笑して首を振る。


「いいえ。望み通りここで決着をつけてあげるわ、サクラ」


足は地面を踏みしめたまま、両翼を広げていく。


「貴女のその狂った幻想を、この翼で終わらせてあげる」


ホタルの翼が、青い燐光を纏う。その光の中から、鈍色の矢が射掛けられた。金属の翼を構成する羽根のひとひらひとひらが、無数の矢となってサクラの方に殺到する。

サクラは一瞬の驚きの表情の後、哄笑した。


「うふふ……ははは! そう、記憶を取り戻したのねホタル、素晴らしいわ! それなら、これは思い出した? 貴女にできることは、全て私にもできるのよ!」


 サクラがステッキを振ると空中に波紋が生じ、そこから生じた無数の花弁がホタルに向けて放たれる。

まがい物の羽根と花吹雪が空中で乱舞し、花弁はホタルのドレスを切り裂き、ボディを容赦なく傷付けてライフを削っていく。一方のホタルの羽弾は、サクラにはほとんど命中しない。


「相変わらず当たらない羽根ね! どこを狙っているの?」


 せせら笑うサクラは、気付いていない。サクラが背にしている廃ビルの屋上に建つ、高置水槽の残骸に。

 ホタルの放った羽根はサクラに向けた目くらましを除き全て、半壊したタンクを支えている塔の骨組み、その腐食して強度が落ちている箇所に正確に命中した。ぎぎぎという耳障りな軋みとともに、塔が倒れていく。その真下には。

 ふり仰いで絶句するサクラに、大小の建材とともに、割れたタンクに溜まり濃縮された黒い毒の雨が大量に降り注いだ。


「ぎゃああああああ!」


 身の毛のよだつ悲鳴が、廃墟の街に響き渡った。

 倒壊による土煙がおさまる。ホタルは、顔を背けたくなるのを堪え、サクラを直視した。

 無惨な光景だった。毒を頭から全身に浴びて、緋色のドレスは溶けてなくなり、眩しく煌めいていた頭髪もほぼ消滅し、ボディは今も異臭を放つ煙を上げて泡立ち……その状態で、サクラはまだ辛うじて生きていた。だがそれも、時間の問題だろう。レンゲが言っていた通り、ライフは急速に減少を続けている。


「……貴女には同類らしいことを、何もしてあげられなかったわね」


 取り戻した記憶はまだ断片的でしかないが、サクラのした話を総合しても、自分達の過去の関係は良好とは程遠いものだったのだろう。


「楽にしてあげるわ、サクラ」


もう、できることはこれしかなかった。剣を振りかざすと、サクラの口と思しき部分が動いた。

耳を澄ますと微かに聞きとれる声が、途切れ途切れに言葉を紡ぐ。


「嫌……死にたく……ない……私は……ミノルと……」


 剣を握る手が震えた。


「貴女だけじゃない!」


 ホタルは、叫んでいた。


「誰も死にたくなかった! みんな! みんな生きて、大切な人と一緒にいたかったのよ!」


 叫びながら剣を振り下ろす。しかし剣はサクラの首の寸前で、高速で飛来した何かの直撃を受け、軌道がそれて地面に突き刺さった。


「ここにいたのね、サクラ。はぐれちゃってごめんなさいなの」


 どこか舌足らずな声がした。振り返ると、これまた廃墟には場違いな、ビー玉の髪飾りに幼い容姿のDOLLが立っていた。ホタルが誰何する前に、サクラが反応した。


「コハク、でかしたわ……! 早く……貴女のライフを、イザナミウムを、私に……!」


 瀕死のサクラに、コハクというDOLLが歩み寄る。小柄なDOLLに何故か気圧されて、ホタルは道を譲った。

 コハクが、サクラの正面に立ち、口を開く。


「いつから私をコハクだと、錯覚していたのかな?」


 明らかに別人の声で。

幼いDOLLの小柄な後ろ姿にざざっと灰色のノイズが走り、一瞬で劇的に変化する。

黒いマントを羽織った、背の高い人形へ。


「お前は……まさかハルシュタイン!」


 サクラの塞がりかけた目が、驚愕に見開かれる刹那。

 黒マントの人形の、先ほど飛来した礫と同じ水晶でできた剣が一閃した。


「……初めまして、ホタルさん」


 ことを終え、振りむいた黒マントの人形の顔は、全くの無表情だった。


「私の部下達を殺したのは貴女だね」

「正解よ」

「なら、これ以上お話することはないかな?」


 サクラとは違い過去を語り出すこともなく、黒マントは淡々とそれだけ言うと、鋭利な水晶の剣を構えた。

 が、不意に空を見上げ眼を凝らすと、剣を下ろす。


「……一雨きそうだね。戦うのはまた今度にしようか」


 やはり淡々とした口調でそう言うと、まだ剣を構えているホタルにあっさりと背を向ける。


「貴女は、何のために戦うの?」


その背中に、ホタルは声をかけた。仮にも敵対する相手にどうしてそんなことを訊ねるのか、自分でも不思議だった。

黒マント……ハルシュタインは静かに立ち止まる。後ろ姿なのでわからなかったが、ホタルには微かに笑ったような気がした。

 無言で遠い高台を指差す。目を凝らすと、フィギュア軍の旗印がいくつか翻っているのが見える。

 黒マントはそこへ向けて去っていき、やがて見えなくなった。


 しばらく経って、本当に空から雨が降ってきた。大量に浴びれば有毒な雨。

 しかし、まだ小雨だ。

 ホタルは剣を腰の鞘に納めると、手頃な建材を拾ってきて、地面に穴を掘り始めた。

 表層に堆積した砂がある程度しっかりした土に変わる深さまで掘ると、今度は穴を横に広げていく。DOLLが三体並んで横になれる広さが確保できると、アサナとユウナ、それにサクラのボディも丁寧に運んできて、穴の中に横たえた。上から土をかけて表面をならす。これから雨が本降りになれば、しっかりかたまるだろう。最後に重そうな岩を三つ並べて、墓標とした。

 埋葬を終えたホタルは、アサナの倒れていた辺りに無傷で残っていたヴァイオリンを肩に乗せ、弓を握る。

 ナイロンの弦に弓を当て、ホタルはこのヴァイオリンの持ち主であったレンゲと、弦を直してくれたアサナのことを思い出す。

 弦に弓を走らせた。

 取り戻した記憶の断片、過去の世界にあった、優しい旋律。

 雨が少し強くなってくる。ホタルはヴァイオリンを奏で続ける。優しく、ときに激しく。


 もっと響け。

 この音を。この想いを。


 たとえ全てが壊れて塵になっても、私は忘れない。

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POISON&DOLLS ―主なき人形たちの奇想曲― 如月真弘 @mahirokisaragi

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