第53話 新たなクラス×スキル×称号



 フェリルに支えてもらいながら、これからについて話す。ボクの身体は限界を超えて無理矢理操作した反動でボロボロだ。金竜と邪竜の心臓による再生能力でも遅々として進まない。ステータスを確認すると、筋肉の断裂や内蔵の破裂。肋骨の損傷など負傷のオンパレードになっちゃっている。腕の骨なんて粉々だ。でも、まだ身体は動く。いや、動かせる。


「フェリル、これからどうしたらいい?」

「治療です。私の魔力は既に枯渇しておりますので、別の術者による回復をしないといけません。蘇生リザレクションだけは経験を削って発動しましたので、死ぬことは免れました」

「ナニソレ聞いてない」

「聞かれませんでしたから」

「詳しく教えて」

「畏まりました。私が使う蘇生リザレクションは魔力で経験を代価として消費して発動できます」

「経験ってどんなのかな?」

「来訪者の方が言われるレベルに該当します。蘇生リザレクションを発動する一度の代価は100となっております」


 フェリルの説明を聞いていくと、彼女はレベル421だったのが4回もリザレクションを使ったことで21まで下がったようだ。ただ、ヴェーヌス、お父様を撃破したことでレベルが82まで回復していた。

 一度減った経験値は竜脈からエネルギーを取り戻すことで比較的楽に回収できるみたい。でも、この蘇生リザレクションで恐ろしいことはもう一つある気がするのでそちらも聞いてみる。


「最悪5回って言ってたけれど……それってまさか……死んじゃう?」

「はい。レベル0となり、消滅します。死者の蘇生というのは本来、それほどの力が必要なのです。来訪者の方々のような不老不死の方には理解できないかもしれませんが……」

「理解はできるよ。そっか。よくよく考えたら蘇生と戦闘不能の回復は別物だよね、うん」


 気絶などの戦闘不能を回復させるのは魔力でも可能みたいだけれど、死亡した状態から蘇生させるのは無理みたいだ。ボクと契約することでフェリルも不老不死にはなれるようだけど、蘇生リザレクションでは消滅になるようで、完全な死亡……ボク達でいうとアバターデータの完全なデリートに該当するようだ。助かる道は一切なく、フェリルは本当に死ぬ覚悟でボクをサポートしてくれていたみたい。彼女には感謝しかない。


「詳しい事は後程でよろしいかと存じます。今は治療を優先する事が先決かと」

「あ、それはまだいいよ。ボクはやることがあるしね。約束したんだ。竜王になるかわりにアイリを助けるって。銀髪の人だから、銀竜の人かな?」


 ボクの言葉に驚いていたフェリルは一瞬だけ表情を歪める。治療しないなんて何を考えているんだとでもいいたげだ。でも、ボクにとっては換えの利く身体より、家族であるアイリの事が優先だ。だから、銀竜の女性について知っているかぎりの情報をフェリルに伝える。すると、フェリルは心当たりがあるみたい。


「……あのお方がおっしゃったのでしたら、間違いなく助けて頂けると思います」

「そうなの?」

「はい。あの方は今代の……いえ、今はもう先代ですが、竜王の妃様であられる銀竜の巫女様ですから」

「妃って事は、ヴェーヌスの……」

「お父様です」


 フェリルからすぐに訂正が入った。彼女達からしたら、そこは譲れないのだろう。同じ金竜だから血縁関係なんて関係ない‥‥とはいえないか。実際、ボクが金竜になったのって、この世界の金竜をガチャで引いたから金竜として分身……アバターを作成したんだし、基となった金竜次第じゃ血縁関係が無いともいえないんだよね。お爺ちゃんも修業の時以外は本当に孫みたいに接してくれたしね。


「まあ、ボクとしては助けてくれるならなんでもいいけどね。それよりもアイリ達の事が気になるから元の場所に戻してくれる?」

「それは無理です」

「なんでっ!?」

「その傷で人界に戻ろうなどという自殺行為は断じて認められません」

「ボク、死なないけど?」

「それでも数日はこの世界から居なくなりますよね?」

「うん、そうだね」

「そうなるとその時間だけご家族との再開が遅れますが、よろしいでしょうか?」

「むぅ~」


 フェリルの言う通りなので、ここは竜界で大人しくしているしかないみたいだ。いや、翌々考えたらクエストが終わったのなら連絡を取れるのではなかろうか?

 うん、試してみよう。メニュー画面を開くいてメールの場所をタッチしてみる。すると、メール機能が復活していようで無事に起動した。ボクのイベントは終わったからだろう。

 だったら、アイリを呼び出せるかもしれない。そう思って試してみるけれど、残念ながらアイリの項目に干渉できなかった。なので、メイシアとディーナ、アナスタシアにメールをおく……ろうとして止めた。


「フェリル、竜界へ招待するのってどうするの?」

「許可を頂ければこちらで手配いたします」

「じゃあ、アイリとメイシア、ディーナとアナスタシアの許可をお願い」

「主のご家族の方ですね。畏まりました。すぐに向かえの者を送るように手配いたしますので、王城にてお待ちください」

「了解。ちなみに王城まではどうやって行こう? ボクは飛べないよ。今飛んだら墜落しちゃう」

「私がお送り致します」


 フェリルの身体が光り輝くと、身体の輪郭がぼやけていく。彼女の身体はどんどん巨大化していき、細長い東洋の龍へと姿を変えた。身体の色は水色で翡翠の瞳をしている。全長は73メートルで高さは1メートルぐらいという、小さく感じる長さだ。いや、100メートルクラスの奴を相手にしてたから仕方がないけどね。


『お乗りください』

「いいの?」

『私に、巫女に乗っていいのは竜王陛下だけですが、我が主にはその資格が充分にございます』

「まあ、こんな身体でも竜王だしね」


 本当になんで女の子みたいな身体なんだ……いや、運営側のミスで性転換してスタートしたし、から間違いじゃない。今でも姫様だし……いや、待って。おかしいよね! ボク、竜王になったのになんで金竜の幼姫が消えてないんだ!

 いや、あれ、クラスに竜王が追加されているけれど、灰色になっている。称号になんちゃって竜王って追加されているから、これらを考えると継承の儀式がちゃんと終わっていないってことかな。


『どうなさいましたか?』

「なんでもないよ。よっと」


 頭を下げてくれているので、人形操作で身体を操ってフェリルの頭の上へと飛び乗る。彼女の角を掴むと、フェリルがビクッと身体が震わせた。


「大丈夫?」

『も、問題ありません。少し角は敏感なだけです』

「ここに来た時に連れてきてくれたドラゴンさんは平気そうだったけど……」

『雄のドラゴンは戦闘に武器として使いますから、そこまで敏感ではありません。雌のドラゴンは龍脈を感じやすくするために敏感な部分になり、基本的に番にしか触らせません。求愛の時などは大事な角同士を擦り合わせる場合もあります。もちろん、戦闘能力がないと話にもなりませんが……』


 戦闘種族だから戦闘力が基準となるのは仕方がない。でも、おそらく歴代最弱な竜王であるボクにあたってフェリルは悲しくないのかな?

 いや、悲しくないよう、フェリルに相応しい竜王になればいいだけか。本当は興味なかったけど、約束だし目指してみるのもいいかもしれない。アイリが生活する基盤を手に入れるためにも竜王という地位は便利だしね。


「そういえば、ステータスで竜王の場所が灰色になっていたのはなんで?」

『まだ正式に引き継いでおられないからです。継承は城の玉座に着き、他の巫女から承諾を得ることで完了となります』

「なるほどね」


 確かに王様になるなら儀式は必要か。日本でも儀式をして天皇陛下が退位し、皇太子殿下が天皇に即位する。それと一緒ということだね。うん、納得できる。


『我が主におかれましても、早急に継承の儀を終わらせる方がよろしいかと存じます』

「どういうこと?」

『全竜族に一瞬の時で指令を出す事ができます。我が強い者が多いですから、命令通りに行動するかはわかりませんが……』


 全竜族に指令か。これは使えるかもしれない。アイリ達を連れてくるように伝えればいいし。


『それと一つ考えておいていただきたいのはこれからどうするかです』

「人界にある中立地帯の事かな?」

『その通りございます。現在、我等竜族は無理を押し通し、多数の地域を制圧しております。ただし、我等に占領地を維持する力はなく、一時的な攻勢を行っているにすぎません。また、中立地帯への侵攻は巨人族はもちろんのこと、魔族や神族からも突き上げを受けることとなります』


 フェリルの懸念はもっともだ。お父様がやったことは種族としては正しくても、国としては間違っている……とも言えない。倫理的には間違っていると断言できるけど、種族としての滅びや、自分達の……その、言いたくはないけれど姫を救出するという大義名分があるのだから正当性を主張できる。相手がどうとるかは別だけどね。


『どうなさいますか?』

「どうするもこうするも、後は任せてって言っちゃったしね。ちょっと考えてみるよ」

『お願いいたします。我等竜族は新たな竜王になられた主に従います』


 こういうのはよくわからないから、ディーナやアナスタシアに相談しよう。二人ならゲームとかもしているし、得意だろう。

 生憎とボクは今までの人生をほぼ全て人形制作に捧げているわけで……こういうのは全然詳しくない。

 あ、今はメイシアもいるから彼女に相談してもいいか。メイシアもアイリの母親だし、何も間違っていない。

 といっても、子供のボク達じゃ相談しても解決できないかもしれない。それならいっそ掲示板を使って解決方法を求めてみるのもいいかもね。

 うん、ディーナ達にアイリの事やこの事についてメールを送っておこう。メールを送信すると、ハトみたいな白い鳥が現れて手紙を咥えて飛んで行く。


『もうまもなく王城に到着致します』

「うん。ありがとう」


 フェリルの言葉に先を見ると、遠くにあったお城が近付いてきていた。そのお城は物凄く大きくて、数百キロメートルはありそうな大きな島一つが全てお城になっている。その島を中心に複数の島が空中回廊で接続されていて、全体はさらに大きい。城壁もかなり頑強に作られている感じがする。


「すごく、大きくて硬そうだね」

『先代の竜王陛下のブレスでも耐えられるように設計されておりますから、実際に硬いです』

「なんでそんな硬さに……」

『竜族同士での戦いもありますが、竜界まで攻め込まれた時の対策ですね』

「でも、ここまで攻め込まれたら終わりじゃない?」

『はい。ですので、卵を守るためのシェルターです。いざという時は城ごと脱出すると同時に竜界を封鎖し、エネルギーへと変換させて敵を全て消滅させます』

「わー」


 ヴェーヌスがやろうとしていたことって、システムとして実際に用意されているんだね。これを使う時は本当の最終手段で城だけは無事に逃げきり、竜族の血を次代に繋げることができる。うん、これは旧約聖書に書かれたノアの箱舟ってわけだね。


『竜王なら起動する事ができるので、お気を付けください』

「わかった。使うつもりはないし、気にしなくていいよ。ボクが興味あることは人形と家族のことぐらいだし」

『畏まりました』


 お城の上空に到着したけれど、そのまま建物を兼ねた城壁を超えていく。その先は庭園になっていて、。地面は丁寧に整地されて……おらず、木々や花々が生い茂っている。

 中心部には数キロメートルを超える巨大な広場が作られており、ドラゴンが普通に滞在しても大丈夫な大きさだ。

 そんな広場の中央に大きな、それこそドラゴンが座れそうな玉座が存在しており、近くにシルヴィアやエクスがいる。それ以外にも複数の人達がみえた。


「フェリル、もしかして……ここがお城?」

『そうです。基本的に擬態ができるドラゴン達は小さな姿で過ごせますが、できない者達はドラゴン形態で過ごすことになるので城といっても城壁と城壁に設置された塔だけです。指示は龍脈を通して伝えることができますので、基本的にここには竜王陛下と巫女様、それと殿下や姫様だけが生活するスペースです』


 ドラゴンは自然と共に過ごす種族でもあるのだから、人間の城みたいな建物はいらないのか。身体も強靭だから、風や病気にもならない。そう考えると建物すらいらないかもしれない。雨だってシャワーとかわらないだろうしね。


「竜王はここにいる必要はないの?」

『ありませんが、竜界以外の事を操作するのはこの場がもっとも効率がいいです。今の我が主では外界に干渉するのに必要な力……来訪者の言葉でいう竜界からのバックアップが必要です。そのバックアップをもっとも受けられるのがこの場所となります』

「外界に干渉って何ができるの?」

『全ての竜族に指令を出せます。先の試練で他の方々に見せたような事ができます』

「つまり、ここから竜族全体に連絡ができるって事か」

『そうなります。竜王になられた主ならば、命令としても通達が可能となります』


 メールで言う一括送信とかができるって考えればいいかな。ボクだと便利に思うだけだけど、ディーナ達に知らせたら有効的に使ってくれるかも。でも、今は全ての竜族にアイリ達を連れて撤退するように通達しなきゃ。命令したくはないけれど、こればかりはやらないと駄目かな。


『降下します』

「了解」


 フェリルがエクスとシルヴィアの居る近くに降りる。すぐに二人が駆け寄ってきて膝をついてボクを迎え入れてくれた。彼女達だけでなく、この場に居た人達が全員、同じようにしている。


「この度は竜王へのご就任、誠におめでとうございます」

「我等はこれより、新たな竜王陛下と王妃になられたフェリル様に全身全霊を持ってお仕えさせていただきます」


 エクスとシルヴィアがそう伝えてくる。彼女達の姿を見ると、本当に導く立場になったのだと自覚が湧いてきた。

 やばい。凄く不安になってきた。アイリのためとはいえ、人形に関する事ぐらいしか取り柄のないボクなんかが竜王になって良かったのかな?


「不安ななのはわかりますが、大丈夫です。私達がご家族様と一緒にお支え致します」


 人の姿へと戻ったフェリルが震えるボクの手をそっと握ってくれた。彼女から伝わってくる温もりを感じる。


「どうか顔を上げてください」

「我等は如何なる事があっても陛下の、姫様の味方です」


 エクスとシルヴィアの言葉で顔を上げると、皆がこちらを見て頷いてくれる。その表情には決意が満ち溢れていて、お祖母ちゃんが人形について語り、必ず意思のある人形を作り出すと告げていた時と同じだ。


「わかった。ありがとう。うん、頑張るから皆も手伝って」

「「「はっ。竜王陛下の御心のままに!」」」

「よし、じゃあまずは竜王陛下って呼ぶのを止めようか」

「「「え」」」

「ボク、竜王の器じゃないし。ユーリでいいよ」

「それは畏れ多いですね」

「うん。無理無理」

「竜王陛下とか以外ならなんでもいいから……」


 そう言うと、皆で話し合っているけれど、何か嫌な予感がする。絶対ろくでもないことになりそうだ。今の間に注意して――


「決まりました。我等は姫様とお呼びいたします」

「やめてっ! ボクは男だよ!」

「ボクっ娘という奴ですね。わかります」

「淑女としてはどうかと思いますが、可愛いので問題ありません」

「いや、待て待って」

「なんでもよいとおっしゃったではないですか……」

「うっ」

「まさか、竜王陛下ともあろうお方が前言を即座に撤回すると?」

「それはまずいわね。竜族の品位にも関わるわ」


 シルヴィアが上げ足を取り、エクスが敬語をやめてニヤニヤと笑いながら告げてくる。フェリルに助けを求めると――


「呼び方など、どのような者でも構いませんが、前言を撤回するのはおやめください。それだけ、竜王となられた我が主のお言葉は重くなります。国を導くというのは信用が大事なのです」

「うぅ……わかったよ! 姫様でもなんでも好きに呼んでいいよ!」

「じゃあ、対外的以外には姫様で、対外的な時は陛下にしましょう。決定」

「そうね。そうしましょう。それではご命令を。即座に中立地帯より撤退命令をおだしください」


 シルヴィアの言葉をボクなりに考える。現状、少しでも速く撤退する方がいい。でも、中立地帯から撤退する程度じゃ、許してくれないと思う。


「わかった。まずは全竜族に命令を伝えるよ。中立地帯は完全放棄。人界からも撤退を開始する」

「人界からの撤退ですか?」

「主よ、それはすこ不味いかもしれませんが……」

「巨人族はともかく、このまま魔族と神族が黙っているはずがないよね?」

「確かにそうですが……」


 彼等からしたら、こっちの理由に理解はできるが、知ったことではないと思う。これ幸いと追及して叩いてくるし、利益を得ようとするはずだ。


「だから、彼等には人界でボク達竜族が支配していた場所の支配権を譲渡する。もちろん、条件をつけてだけど」

「ですが!」

「それによく考えたら、ボク達の数って本当に少なくなっているんだよね?」

「はい。支配地域を守る数も足りません」

「だったら、戦線を整理する必要もある。本当に守るべきはこの竜界だ。人界の領土じゃない」

「ですが、それだと死んでいった者達が報われませんし、人類国家との盟約もございます」

「うん。その盟約がどんなのかわからないけれど、一方的なは破棄は商売としては絶対に駄目だ。ボクでもそれはわかるよ。だから、条件の一つとして、その国の支配者が竜族の支配を受け入れるのなら、譲渡は行わない。かわらずボク達が守護する。

 それ以外の場所は先に言った通り、魔族と神族に譲渡するし、竜族として要請がない限りは動かない。また、彼等が確保している竜族の魂などを引き渡す事も条件に加える。これだけだと、彼等は納得しないと思う。それに竜族も納得できないと思う。でも、暴れたい竜族の人達にはとってもいい案があるんだ。魔族も神族も文句が言えないとってもいい方法がね」


 ボクの案を放すと、皆が納得してくれた。この案はこの世界の人達じゃ思いつくのは難しいかもしれない。少なくともプライドの高い竜族がやるとは思わないだろう。でも、プライドで竜界や家族を守る事なんてできないんだ。なら、そんなものは捨ててしまえばいい。


「シルヴィアとエクスはそれぞれ神族と魔族に会談を申し込んで。フェリルはアイリやボクの家族達を竜界に呼び寄せる準備をして。その他の人は人界の国家に竜族が撤退することと、力を貸す盟約に関しては要請を受けたら力を貸す旨を伝える事。その時に神族と魔族、竜族、巨人族どの勢力につきたいかを聞いてきて。それでどうするか判断するから」

「「「はっ」」」

「じゃあ、皆でこの難局を乗り切ろ~!」

「「「お~!」」」


 こんなノリでいいのかはわからないけれど、まあ気にしないでおこう。他の人を見送ってから、ボクは一人になって玉座に座る。

 するとポップアップが自動的に現れて、選択肢が表示された。内容は簡単だ。


【これより、竜王に着任いたしますか? 着任した場合、竜王のクラスをレベル1で習得できます】

【Yes/No】


 もちろん、Yesを選択する。すると更にポップアップが現れた。


【竜界の支配権が存在します。竜界の支配権を適用しますか?】

【Yes/No】


 こちらももちろんYesを選択する。竜界を守る事がアイリを助けてくれる条件だったからね。


【ワールドアナウンス:全竜族に通達します。竜界の支配権が来訪者ユーリによって使用されました。これを認めるかどうか、選択してください】


 あれ、譲渡されますって出てたのに、国民の同意がいるのかな? まあ、どうなるかはわからないけど。


【続いてアンケートです。解答ください】


 意味が分からないよ。うん、でもなんか嫌な予感がするんだよね~。とりあえず、時間がかかりそうだから人形でも作って時間を潰しておこう。

 あ、その前にボロボロの服から着替えないとね。残ってるのって師匠から貰った常闇のワンピースくらいか。これでいいや。

 女物を長く着ていたせいで抵抗感が薄くなってるけれど……やばいかもしれない。でも、不思議と嫌な気分はしない。待て、落ち着け。それは色々と駄目じゃないかな!


「よし、落ち着いて人形を作ろう」


 着替えを終えて大きな玉座に座りながら、足をぶらぶらさせつつ針と糸、皮を持って人形を作っていく。うん、楽しくなってきた。やっぱり人形はいい。心が落ち着く。




 しばらく人形を作っていると、ポーンという音と共にポップアップが現れた。


【ワールドアナウンス:全ての解答が完了しました。ご協力ありがとうございました】

【プレイヤーアナウンス:国家システムについて追加のアナウンスです。国家システムは次回のアップデートより、一般プレイヤーは参加できます。一部の特殊クラスや種族についておられる方は支配権のアイテムを入手した場合に限り、現在からでも一部の機能を制限してご利用いただけます】


 説明を聞いていくと、簡単に言えば支配権を手に入れているプレイヤーは今からでも利用……テストプレイをしろって事かな。国家を動かすなんて、色々と影響は出てくるだろうしね。

 掲示板を見ると、お祭りというのになっていた。どうやら、ボク以外にも支配権を得た人が居るようだ。もっとも、世界ではなく、国家や領地の支配権らしい。

 領地の支配権は金を積んだら買えたようで、現在は大手などによる買取合戦が起こっている模様。大手ばかりな理由として、買い取るには国家的信用がある上で金銭面的にも潤沢じゃないと駄目だからだ。

 この国家的信用はクラスが関わってくる。例えば既に取り立てられており、騎士や貴族の地位を手に入れていたものは今の段階からでも買えるとのこと。

 賢者のクラスを持つ人がエルフの国に仕えていて、姫様と結婚したら支配権をもらえたという話もある。

 言える事は一つ。国家システムというのはかなりやばい代物だった。このシステムのせいで人界は群雄割拠になる可能性が大きいらしい。その中でもボクは世界一つを丸々支配しているわけで……頑張らないとね。


【クラスの設定完了しました。竜王のクラスはプレイヤー・ユーリのスキル及び竜族によるアンケート結果。特殊クラス竜王姫へと変化しました】


「え!? ボク、男なんだけど!?」


 ステータスを見ると、本当に竜王姫というクラスになっていた。詳しいデータを見てみる。


 竜王姫:竜王でありながら、姫のクラスを得る中途半端な存続。全竜族から莫大な指示を得て、生み出されたユニーククラス。

 習得条件:竜王のクラスを習得。金竜の幼姫を習得。全竜族からの支持率90%以上。

 効果:全ステータス+100%上昇(竜王1000%上昇)。称号・竜界の支配者を習得。スキル・竜王姫の威光(竜王撃)を習得。


 なんかおかしい。竜王ならカッコ内のが適応されたんだね。2倍と10倍の差は凄く大きいと思うよ?

 竜界の支配者は竜界からのバックアップが受けられ、全ステータスが一時間の間だけ上昇する。上昇率は外界で500%。竜界で1000%上昇。回復速度も含まれるので竜界内部で戦うと馬鹿みたいな強さになる。クールタイムは24時間。つまり一日。破格のスキルだ。

 スキルの竜王姫の威光は配下に存在する全竜族及び竜族の力に関する物の全ステータスに支持率%の上昇を与え、竜王姫の下による意思統一を可能として一致団結するパッシブスキル。

 ぶっちゃけると狂信者製造スキル……やばすぎる。といっても、支持率が関係しているから、支持率が引くいとそこまで効果はでないみたい。可能とし、だからこちらからアクションを起こさない限りは大丈夫なはず。

 竜王撃は特大の一撃を放つみたいで、竜界の支配者を使用中で、こちらも10倍の一撃を放つ究極の一撃。つまり、単純計算で10*10*10倍の1000倍の威力となる。なんだこれ。本当に究極の一撃だ。

 ボクはこれを相手に殺し合いをしていたと……復活がなければ負けていたね。本来、竜王ってそんな馬鹿みたいなクラスなんだね。そりゃ、世界の支配権だって得られるよ。

 どう考えてもレベル10以下の状態で挑むクエストじゃない。まさになんちゃって竜王だね。竜族の情勢によって強制的に竜王にされただけだ。相手にも手加減されていたと思うべきだ。

 そう考えると、竜王姫というクラスが他者に依存しているスキルなのも納得できる。ボクは他人の力で竜王になったにすぎない。こういうのを姫っていうんだっけ?

 うん、竜族の王にして竜族達の姫。なかなか皮肉が聞いている。他者の力がないと何も出来ないおかざりのお姫様。傀儡の姫。人形のお姫様……あれ、こう考えると別に良いか。人形好きだし。


「よし。テス、テス。大丈夫。ボクはできる。やればできる子。家族の為にいっちゃえ!」


 メニューから竜王姫の権限で全竜族に向けてワールドアナウンスを放つ。


【竜族専用ワールドアナウンス・竜王姫:こちら、竜王姫となりましたユーリです。まずは竜族の皆に感謝を。無事とは言い難いですが、特殊な竜王の力を持つクラスになれました。この世界に住む竜族や来訪者の竜族の皆様、ありがとうございます。

 さて、お礼はこのぐらいにして、全竜族に竜王たる竜王姫として通達します。直ちに自衛以外の戦闘行為を停止し、中立地帯より竜界に帰還してください。

 人界にある我等の領土は巫女達を派遣しています。その結果と神族や魔族と会談次第で人界からも撤退します。これは先代の竜王が起こした不祥事の償いとなりますが、竜界の存続の為なので今は耐え忍んでください。

 それと人界にある今から指定する場所は今すぐにでも神族と魔族に迷惑料として引き渡してください。その場所に関しては来訪者以外の竜族は完全撤退するように】


 ボクが指定した場所は、巨人族に奪われた場所と次に連中が来る場所。その次の場所だ。竜族の中にはわかっていない者達もいるので、しっかりと伝えてあげる。

 ついでに近くの神族と魔族に伝えるようにお願いしておく。どうせ、巨人族に取られるのなら魔族と神族に与えて三つ巴の戦いをしてくれる方がありがたい。こっちには防衛する戦力ももったいないのだ。

 第三者に丸投げして防衛を担当してもらう。ボク達が撤退するとなると、巨人族の勢力が飛躍的に拡大する。それは残りの種族も許容できないだろう。こうして稼いだ時間で竜族は体勢を立て直す。

 それに竜族には一度戻ってきてもらわないと駄目だ。ボクの支配下におくにはしっかりと出会わないと駄目みたいだしね。


【竜族専用ワールドアナウンス・竜王姫:ご協力いただけた来訪者の皆様は数日、お待ちください。報酬を用意してから竜界へ招待致します。アップデートが終わるまでお待ちくださいね】


 今、こられても対処できないしね。ただ、世話になったドラゴンナイツの人達は招いても構わない……いや、アイリの事が解決してからだね。そうしよう。

 どちらにせよ、これでボクは少し手が空いた。まずはアイテムチケット5、スキルチケット1だけど、これは保留しておこう。先にステータスを確認しようかな。


【ステータス】


 Name:ユーリ

 Race:金竜〔幼体★★★★★〕

 Class:竜王姫Lv.1

     人形師Lv.7→13

 HP:4500+10000+100%

 MP:2000+10000+100%

 ATK:1800+700+1300+100%

 DEF:1200+1200+100%

 MATK:3000+200+100%

 MDEF:1200+10+100%

 STR:400+200+100%

 VIT:400+500+100%

 AGI:400+100%

 DEX:1600+100%

 INT:400+600+100%

 MID:400+100%

 LUK:400+300+100%



 Passive Skill

 魔竜の心臓Lv.4→6、苦痛耐性Lv.10、物理軽減Lv.6→8

 直感Lv.5→7、幸運Lv.10、金竜の幼姫Lv.2→7

 即死無効、デスペナルティ無効、腐敗無効Lv.1

 魅惑の体液Lv.10

 Active Skill

 竜麟・金竜Lv.4、竜属性魔法Lv.3→5、竜魂転生Lv.1

 闘竜技・金竜Lv.2→7、部分竜化・竜翼Lv.4→10、竜王姫の威光

 人形操作Lv.8→10、切傷転移Lv.1、自爆Lv.1

 火属性魔法Lv.3、水属性魔法Lv.3、風属性魔法Lv.3

 土属性魔法Lv.3、連携魔法Lv.3、死霊魔法Lv.1

 空間魔法Lv.1、死体収集Lv.1→5

 金属操作Lv.2、機人整備Lv.3

 人形作製Lv.6、AI作成Lv.1


 CP:68521


 装備:ドラゴンのぬいぐるみ(攻撃力1300、防御力1000、耐久力500/500 金竜の腕、金竜の吐息、金竜の竜眼)

  うさぎとオオカミのぬいぐるみ(攻撃力200、防御力100、耐久力80)

    金竜幼姫のぬいぐるみ(攻撃力800 防御力1200 耐久力450/450)

    床闇のワンピース(防御力200 スキル:ドロップ自動収集、身体能力増加Ⅰ(50%)、闇属性魔法Lv.2、自動回復向上Lv.1、闘争心増加Lv.1、自動修復Lv.3、暗視)

    疾風のブーツ(移動速度10%上昇)

    プルルの指輪(MDEF+10)

    飢餓のアクアグローブ(水属性の魔法の効果を10%上昇、空腹度の減り具合上昇・小)

    五体の家族人形 ランクC 耐久200/200(人数におおじて様々な効果を得られる)



 称号


 プルルキラー:プルル系統に対してダメージ50%増加。ダメージ軽減50%。ドロップ率10%上昇。VIT+500

 物理破壊者:STR+200、ATK+500。相手の物理耐性、物理障壁を無効化し、相手の物理防御力を50%削減する。

 上位存在討滅者:レベル差が10離れるごとにステータスが1.5倍される。

 死を愛する者:不死系に対する攻撃力100%上昇、防御力50%軽減、クリティカル50%上昇。不死系からの好感度50%上昇、天使系からの好感度50%低下。不死系に好かれる。死霊魔法、即死無効、死体収集、腐敗無効、切傷転移、自爆を習得。

 大空を飛翔する者:空を飛んでいる間、消費するコストを10%削減する。

 大自然を蹂躙せし者:植物系のあらゆるモンスターからの好感度5割減少。植物系のあらゆるモンスターに対する攻撃力200%上昇。

 魔女の弟子:魔女術が習得可能になる。INT+600。

 竜界の支配者:竜界からのバックアップが受けられ、全ステータスが一時間の間だけ上昇する。外界で500%。竜界で1000%。クールタイムは24時間。


 ちゃんと竜王姫のクラスが増えている。しかもメインクラスになっていて、移動させられない。

 移動させようとしても、竜王姫のクラスを変更しようなど、とんでもないとでてくる。お祖母ちゃんに聞いた昔のお話みたいだ。

 それとこちらに来たせいか、スキルが見やすい感じになった。後は何故か知らないスキルが増えている。魅惑の体液ってなに?

 詳しく調べてみると、最悪なスキルだった。


 魅惑の体液:樹精霊などから与えらる禁断の果実を食した者が手に入れるスキル。このスキルを得た者は体液が芳醇な香りとなり、味が上昇する。味と香りは種族×スキル×レベル。

 最大レベルの10ともなると、最高の美酒に匹敵する。その上、レベルによって体液が回復薬にも変化しており、HPMPが10%回復し、状態異常を回復する。

 ただし、とても美味であるせいか中毒性がある。また、モンスターからも盛大に狙われる(モンスターを引き寄せる確率500%上昇)。特に虫系には非常に狙われる(虫系モンスターを引き寄せる確率1000%上昇)。

 初期レベルは得られた果実のレベルによる。



 ドライアドちゃんめぇ……原因はどう考えても彼女から貰った果実だ。あれによってボクの体液は変化したみたい。香りと書かれているから、きっと体臭も変化しているはずだ。

 モンスターに狙われるのは……うん、今更かな。金竜、金竜の幼姫、魅惑の体液……この三つでモンスターが集中してくるのだし。

 それに考えようによってはボクの体液が素材としての力が上がったってことだしね。竜王姫の、特殊とは言え竜王の身体を素材とすればそれはもう、最高クラスの物ができるだろう。ちょっと楽しみだ。





  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る