第51話 竜王の試練


 フェリルと手を握って門を潜ると、まず目に入ったのは遮られることの無い満天の星空だった。ボク達竜族は暗視効果があるので、遠くにあるとっても綺麗な惑星や衛星が見えてくる。


「綺麗だけど……ここって宇宙空間? って、門が消えていってるっ!!」


 くるりと身体を回転させて後ろを見ると、ボク達が通ってきた大きな門が光となって消えていく。残ったのはボクとフェリルだけだ。ただ、門が消えた先も宇宙空間が広がっていてとても綺麗になっており、星々の光に照らされて幻想的な光景が広がっている。


「ここは竜王ドラゴンロードの試練の会場、竜界の宇宙空間となります。我等竜族にとってこの宇宙空間は非常に戦いにくい場所となりますので、お気を付けください」


 ボク達がいる場所は円形の闘技場だけど、なんで戦いずらいんだろう?

 地面以外の全ては宇宙空間のようで、飛べないと辛いけど大丈夫なはずだよね?

 一応、少し遠くにも同じような円形の闘技場が設置されているから、ここが壊されてもどうにかいけるとは思う。


「戦いにくい?」

「ここは星の外ですから、龍脈による力の供給が受けられません」

「なるほどね。確かにそれは大変そうだ」


 龍脈によるバックアップがないとなると、自分の中にある物だけで戦わないといけないし、MPの回復速度も低いままだろう。でも、これって相手も同じことだよね。


「よし、殺るぞ。それで、これからどうしたらいいのかな?」

「もうまもなく、現れると思います。開始の合図はございませんので、お気を付けください。それでは、これより主様の中に入らせて頂き、そちらから支援させていただきます」

「うん、よろしく」

「はい」


 フェリルが近付いてきてボクの顔に彼女の顔を近づけてくる。契約した時はキスしたけれど、今回もするのかな?

 そう思うとドキドキして顔が赤くなってくる。次の瞬間、額が合わせられると彼女の身体が光って粒子となり、ボクの身体の中に入り込んできた。体内の竜脈を通してフェリルが行き渡っていき、同一化するようでとても気持ちが良くなってくる。身体の中に別人が入り込むなんて気持ち悪いはずが、真逆の感覚で正直言って驚いた。


『では、これより主様の中で支えさせていただきます』

「よろしく、フェリル」

『こちらこそ、宜しくお願い致します』


 勇敢な心ブレイブハート要塞フォートレス持続再生リジェネ高位障壁ハイ・プロテクション致命の一撃デットリーブロウ属性抵抗レジスタンス・エレメンタル生命力増加・共振ライフアップ・レゾナンス魔力増加・共振マジックアップ・レゾナンス

 勇敢な心ブレイブハートは恐怖心を押し殺し、相手の重圧などを感じなくなる。攻撃力も30%上昇する。

 要塞フォートレス魔法の要塞を身体に付与することで、防御を極限まで上げる魔法。DEF70%、MDEF60%上昇する。

 持続再生リジェネ、体力が1分につき10000と20%の持続回復するようになる。

 高位障壁ハイ・プロテクション。攻撃を一度だけ50%軽減する。

 致命の一撃デットリーブロウ。攻撃の威力を倍にして防御力を無視する。

 属性抵抗レジスタンス・エレメンタル。全属性ダメージを70%軽減する。水龍の巫女による加護で水属性は僕の場合は完全無効で、フェリルが受けた場合は吸収。

 生命力増加・共振ライフアップ・レゾナンス生命力HPを50%増加させて共有する。

 魔力増加・共振マジックアップ・レゾナンス魔力MPを50%増加させて共有する。


 どれもものすごい支援能力バフだ。支援特化といわれるだけある。ただ、ほとんどが割合強化のせいで、自力がないと生かし切れないのも納得できる。

 例えばボクのHPとMPは合計で14,500/12,000だ。だけど、レゾナンス効果でフェリルのHPとMP、4,790,000/28,000,000が加算されて4,804,500/28,012,000となる。ここから50%増加なので7,206,750/42,018,000となった。意味がわからないよ。竜族やばい。


「うん、HPとMPが凄く増えたよ」

『主様はまだ幼体でレベルも低いですからね。成体ならHPとMPは10,000,000くらいは確実にあります。私の場合は支援に特化しているのでHPがかなり少ない方ですよ』


 少なくとも相手はHP10,000,000確実か。本当に勝てるのかな?

 一応、エクスにお願いして切り札は用意できたけれど、手持ちが少なかったから四発が限界だ。


『主様、もうまもなく始まりますので、準備がございましたらお願い致します』

「そうなんだね。じゃあ、用意しないと……」


 アイテムストレージから人形達を取り出していく。熊のぬいぐるみ達を配置していく。後は腕にも装着してから部分竜化・竜翼を展開して宙に浮かぶ、場所はここだけではないので手早く用意しないといけない。


『可愛らしい物ですね。これはなんなんですか?』

「ボクの武器だよ」

『……に、人形ですよね……?』

「そうだよ。ボクは人形師だから、武器はぬいぐるみなどの人形だよ」

『……武器……そんなので戦えるのですか?』

「戦えるよ?」

『そう、なんですね……不思議です』


 ボクもそう思うけれど、実際に戦えるのだから仕方がない。それにこの世界には魔法があるファンタジー世界だから、ちゃんと戦える。


「フェリルはこの子達にも強化魔法をかけてくれる? もちろん、魔力がなかったり、手間がかかるのならいいけど……」

『この程度の数なら可能です。ただ、生物ではないので、再生や蘇生はできません』


 20体ほど出したのだけれど、フェリルにとってこの程度は簡単らしい。これはどこまでできるか、数を聞いてみよう。


「フェリルの支援ってどこまでの数ができるの?」

『私の支援に数の制限はありません。戦域の制限はございます。簡単に言えば範囲指定です』


 戦域、戦場全てに支援が飛ばせるということか。うん、この子の能力ってやっぱり戦争とか集団で戦うのに適してるね。それはつまり、ボクの戦い方と相性がいいということでもある。ボクの基本戦術は人形を使った戦闘だ。それも普通の武器とは違ってプレイヤーみたいにフェリルの支援を受けられる。手数に関してはほぼ負けることはないからね。


「それじゃあ、色々とばら撒くとしようか」

『畏まりました』


 戦場に浮かんでいる浮島にぬいぐる達を配置していく。配置が終わるころには開始時間が迫っていて、世界のメッセージが流れた。





【これより、竜王ドラゴンロードの継承の試練をもうまもなく開始致します。





 えっと、これってもしかしなくても全員に見られるの?


『当然です。ことは竜界のみならず、全ての竜族に関わることですから。これは他の種族の王もかわりありません。いえ、人族は別だったと思われます』


 つまり、神族、魔族、巨人族の王を決めるのはこれと同じ方法って訳なんだね。


『その通りです。我等は基本的に人族と違って統一国家ですので、王は一人のみです』


 そうなんだね。まあ、そっちの方がいいか。どちらにせよ、この試練は絶対に超えないといけない奴だし。でも、そうなると竜王ドラゴンロードのクラスって一人だけなの? それって多人数が遊ぶゲーム的には間違っているような……


竜王ドラゴンロードをはじめとした神話クラスは我々なら死ねば失いますが、来訪者の方は王としての権限だけを失うらしいです。申し訳ございませんが、詳しくはわかりません』


 フェリルは竜の巫女だし、竜族やこの世界のことについては知っていても、来訪者のことはわからないというのは納得できる。ただ、権限は無くなるけれど、竜王ドラゴンロードのクラスが残るってのはありがたいかも。それにしても、心の中で会話とかできるんだね。


『現在、私と主様は一心同体ゆえ、主様は私の全てを、私は主様の全てがわかります』

「それは少し困るけど、まあ仕方ないよね」

『できる限り、主様のお心を覗かないようにはしますが、勝利するためにはある程度はご容赦いただきたく存じます』

「了解。サポートよろしく」

『はい』


 心を読まれるというのは嫌だけれど、こと戦闘においてはとても素晴らしいことだ。作戦を口頭で伝える必要もないし、こちらがやって欲しいことがダイレクトでフェリルに伝わるってことだしね。


『主様、始まります』

「わかった。よろしく」

『はい、頑張りましょう』


 その直後、世界が震えた。恐怖とか感情に伝わるものじゃなく、物理的な重圧として伝わってくる。


「なに、これ……」

『現れました』


 空間が歪み、滲み出るように現れるのは金色の鱗を持つ巨大な、巨大なドラゴン。浮島にその巨大な身体が入らず、宇宙空間に漂うその姿はまさに王者。相手の全長は100メートルもあり、伝わってくる力は空間を歪ませるほどで、圧倒的というしかない。


「これ、勝てるの?」


 まさか、相手はドラゴンはドラゴンでも、金竜という竜王ドラゴンロードだとは思わなかった。まさか、竜王ドラゴンロードの試練とは文字通りの竜王ドラゴンロードと戦うことなんてね。こんなの勝ち目がない。文字通り、相手は神話級の存在という


『勝ち目はあるかと存じます。相手の身体をよくみてください』


 フェリルに言われた通り、相手の金竜の身体を確認する。するとすぐにわかった。身体中に剣や槍などの武器が突き刺さり、今も血を流している。つまり、相手の身体はボロボロだった。

 なるほど、この金竜が竜王ドラゴンロードであるのならば、確かに巨人族に傷つけられて死に掛けのはずだ。そのことを考えると、確かに勝ち目はある。でも、よく考えて欲しい。ボクは幼体10段階強化したとはいえ、人形師のレベル3だ。そう、レベル3である。そんな状況でドウミテモ、レイドボスと2人で戦うとか無理くさい。というか、無理。でも、娘の為にやるしかない。


『そうです。無理でもやりとげないといけません』

「うん、やる」


 そもそもキリング・マンティスでも勝てなかった物をなんとか勝てたんだ。死に覚えができなくても、勝てないはずはない。やってやる。凄く怖いけど。


『はい、凄く怖いです』


 現れた竜王ドラゴンロードはこちらを見詰めて咆哮を上げる。それだけで衝撃波が発生して浮島が吹き飛んでいく。ボク達の居る場所も例外ではない。


「よもや、金竜とはいえ、このような幼子が来るとは思わなかった。確かにお前は我が娘のようだが、この程度の力で竜王ドラゴンロードの座を奪おうなど、片腹痛いわ!」

「あ、あなたが死にそうだからじゃないかな!」

「ふん。確かに我はもはや風前の灯火。残っている力など1割もなかろう。だが、それでも

「え?」


 なにかとんでもない事を言っているんだけど、その辺りは事実なの?


『わ、わかりません。初めて聞きました。聞いてみてください』

「ど、どういうことなのかな?」

「知れたことよ。竜界全てをエネルギーに変えて人界にぶつける。同時に我が命を持って起爆剤とし、龍脈を暴走させることで繋がる他の全ての世界へと攻撃を慣行。これによって全ての世界の龍脈は消失ないし、ただいなダメージを受けることになる。そうなれば全ての世界は荒れ果て、生物が住めぬ大地となろう。これで竜族の敗北にはならない。何故なら等しく世界が滅びるのだから」

「待って、待って! それって盛大な道連れってこと!」

「我等竜族が滅びるのならば、もろとも滅びよ。そもそも我等は星の調停者。その我等が滅びるのならば、崩壊まで遅いか早いかの違いでしかあるまい」

「う~?」


 一理あるかも? どうせ滅びるのなら、別に問題ない気もする……いや、そんなことはない。というか、聞いていた内容とも違うし、どういうことだろうか?


『おそらく、予測になりますが……陛下は自らに多種族の憎悪を集め、主様に討ち取らせることで権威付けをしようとしているのかも……知れません』


 それって手加減してくれるってことは……


『ありません。陛下の性格からして、確実に実行なさるでしょう。それにこれはあくまでも私の予想です。陛下が実際に憎悪によって狂ってしまわれたのなら、十分にありえるかと』

「どっちにしろ、ボクが勝つしかないってことか」

「いくら傷付き、瀕死であろうとも幼姫ごときにやられる我ではない。不敬であるぞっ!」

『来ますっ!』


 巨大な前足がほぼ近く不能なような速度で振り下ろされる。だけど、その前に直感に従ってボクはすぐにその場から飛び去って浮島から離れた。浮島は五つに寸断されて瓦礫となる。ほんとうに威力がおかしい。しかも、それだけじゃなくて、口にとんでもない力が収束されていっている。


竜の吐息ドラゴンブレスです。直撃を受けたら即死ですので、回避してください』

「わかってる、けどっ!」


 攻撃によって粉砕された浮島の残骸がデブリとなり、ボクに襲い掛かってくる。おそらく、これを喰らったら即死すると思う。だから、五体の完全操作と人形操作を行い、タイミングを見てボクの蹴りとぬいぐるの一体の蹴りを互いに向けて放つ。足の裏と足の裏を蹴り合い、吹き飛ぶ。

 これによって攻撃を避けることができたけれど、続いてくるのは口に収束されている竜の吐息ドラゴンブレス。この攻撃対しての方法は単純だ。収束して放たれる前に攻撃するしかない。


『どうなさるのですか?』

「こう、する!」


 ぬいぐるの一体を人形操作で操り、デブリを蹴って加速させて金竜の口に突撃させる。同時に火属性魔法を使って力を収束させているところを攻撃し、誘爆させて爆発させてやる。


「猪口才な」


 しかし、そのまま放たれる。ぬいぐるは消滅し、光の奔流が放たれる。放たれた奔流はまさに光の壁といった感じでとてもじゃないが耐えれそうにない。


『どうしますか?』

「決まってる、逃げる」


 逃げるしかない。だから、チャージしていた竜の吐息ドラゴンブレスを片腕から放って推進力として相手の範囲から離脱する。


「ちっ、駄目か。間に合わない」

『いえ、ハイ・プロテクションで大丈夫です』


 間に合わない場所だったけれど、ハイ・プロテクションで攻撃を一瞬だけ防ぐ。その間になんとか離脱できたけれど、余波だけで足が溶けだした。苦痛耐性で痛くはないから大丈夫。焼けたから血もでていない。ただ足が欠損しただけ。空を飛ぶのに少しバランスが変わったくらい。


「うわぁ……」


 竜の吐息ドラゴンブレスの放たれた先をみると、浮島どころか、遠くにあった惑星が消し飛ばされていて、複数の爆発の光が確認できる。


「ぐぅ……」

『ダメージを受けたようですね。おそらく、連発はできないでしょうから、今のうちに対策を取らないといけません』


 連発されたらそれだけで終わりだ。というか、ヒットポイントゲージも見えないし、どうしたらいいのかね?


『相手の体力を見るのは鑑定系のスキルが入りますが……』


 持ってない。これがチュートリアルが終われば無くなるって言ってた奴か。現実的な感じになるのはいいけれど、ヒットポイントゲージがわからなくなるのは困る。まあ、アイリのことを考えると、ゲームよりもリアルの方が断然いいけどね。


「対策か……といっても、こっちの攻撃ってダメージが入るのかな?」

『不明ですが、期待はできないかと思われます。ですので、忌々しいですが、陛下の身体に刺さっている武器を利用なされてはどうでしょうか? あれらは全て、竜族を殺すための力が込められた特攻兵器です』


 竜王ドラゴンロードの身体に刺さっているのは巨人族達が使っていた竜族特攻武器……いや、この場合は戦争で使われた兵器か。それなら確かにダメージを与えられる可能性がある。


「それならいけるか、もっ!」


 ドラゴンブレスの照射が終わったからか、竜王ドラゴンロードは翼を広げて血を吐きながら無数の光弾を生み出してくる。それらは直径一メートルもあり、ぱっと見た感じでは数百もある。その光弾が全てボクに向かって一直線で進んできた。デブリを一瞬で消滅させながらだ。


「ちっ」

『これは追尾弾です。ただ避けるだけでは無理です』

「なる、ほどっ!」


 速度を上げて次の浮島を蹴って斜めに浮き上がる。背後で浮島に着弾した光弾が爆発し、爆風が襲ってくる。それを竜翼で受け止めて加速してにげていく。


「どうした。逃げるだけでは我は倒せぬぞ」


 竜王ドラゴンロードを見れば追加の光弾を放ってくる。まるで弾幕ゲームだ。それも難易度がルナティックで、回避できるスペースなんて少ししかない。


「わかってる、よっ!」


 直感に従って背後に水の魔法で薄く長い鞭を作り出して振るう。広範囲にばら撒いた水で光弾を誘爆させる。一応、追尾弾ではあるが命中と同時に爆発するようなので助かる。もっとも、爆発で半径10メートルは消滅しているわけだが。


『どうなさいますか?』

「どうもこうも、突っ込むしかないね!」


 何の前触れもなく目の前に現れた炎の壁。その直前でハイ・プロテクションを展開させ、それを足場にして蹴って方向を180度変更する。すると今度は360度、ありとあらゆる場所から飛んでくる光弾が一斉に襲い掛かってきた。


『回避できますか?』

「大丈夫! たぶんね!」


 勘に従って1メートルも空いていない隙間に飛び込む。光弾が遠隔で爆発させられる前に通り抜け、次に下がって別の光弾を避けていく。ジグザクや時には戻り、上下左右、全部を使って竜王ドラゴンロードの居場所に向かう。

 一瞬でも気を抜けば問答無用の即死攻撃。本当に弾幕ゲームみたいで結構面白い。でも、面白いけれどこれでは接近できない。相手の物量が違いすぎる。

 ただ、ボクは囮だ。本命はあっちだ。ボクの可愛い人形達。こちらに光弾を放ち続けているから、その間に人形達をこっそりと近づけさせた。なので、ドラゴンブレスで突き刺さっている剣を攻撃してみる。剣を握らせるとか、大きさ的に無理だし。巨人族が使っていただけあって数メートルから数十メートルの武器なのだ。

 そんなわけでボクの可愛い人形からドラゴンブレスが放たれ、柄に命中して少し突き刺さったと思う。


「ねえ、ダメージ入ったかな?」

『……1?』

「あはっ、絶望的な数字だね♪」

『ですが、蓄積させるしかありません』

「うん」


 さて、困った。ボクのドラゴンブレスじゃ1ダメージしか与えられていない。物理破壊者の称号があるから、相手の物理耐性、物理障壁を無効化した上で、相手の物理防御力を50%削減しているはずなんだけどなぁ……


『エクスなら1%……いえ、0.1%くらいなら与えられたかもしれませんが……』

「いや、フェリルじゃないと即死だから。選ぶのは間違っていないよ」

『ありがとうございます……』


 やっぱり気にしているみたいだ。これは勝つ理由もう一つができた。でも、どうしようかな。正直言って竜族特攻兵器でも、扱うボクが非力すぎて相手にもならない。おそらく、引き抜こうとしても無理だろう。うん、このままだと詰みだ。


「フェリル、竜族の弱点ってあったりする?」

『普通なら逆鱗が存在しますが、陛下や主様、金竜を始めとした上位竜種は隠したりします』

「あるけど隠しているんだね」

『はい。だいたい、二重や三重に鱗を重ねていますので、基本的にはわかりません。成り立ての成竜ぐらいです』


 となると、逆鱗は駄目か。弾幕を回避し、時には攻撃して誘爆させながら考える。思考を止めては駄目だ。同時に身体も動かさないといけない。それに余波でもヒットポイントゲージは削られる。持続回復で耐えてはいるが、何時までもこのままならMPが切れる。


「硬い敵を倒す方法って何かあったかな?」

『そうですね……基本的に攻撃を重ねて倒しますから……』


 竜族の力があれば物理攻撃で十分有効だろうしね。なにかないだろうか? 確か、怜奈達がやっていたテレビゲームとか、里奈が買ってる小説では……わからん。というか、竜族って考えるだけ無茶苦茶な存在だよね。物理現象を無視したりもできるし。


「ねえ、フェリル。竜族でも生物だから、内側って弱い? 病気になったりする?」

『それは当然です。私もなったことはあります。こないだ舌を噛んで凄く痛かったりしました』

「なるほど」


 おっちょこちょいのところもあるのか。いや、そんなことより、次取る手段が決まった。その策を実行するためには近づかないといけない。じゃあ、手段は何があるかと言えば……仕方ない。アレを使うか。


「ねえ、フェリル。この追尾弾ってボクと識別して追尾してきているの?」

『そうです』

「だったら、ボクと全く同じ存在が居たら、そっちに行く?」

『……そのような存在があれば、行くと思いますが……まったく同じ身長とかでないといけませんよ?』

「大丈夫、それならある! それとフェリルの蘇生ってその場で蘇生? それもと死んだ場所で蘇生?」

『死んだ場所ですね』

「そこが動いていたらどうなる?」

『動いた場所でも元の座標でも選べます』

「それなら勝ち目があるかも! 準備して!」

『わかりました』


 まずはこちらも弾幕を展開して周りを誘爆させて光で相手の視界を奪う。それからアイテムストレージから、等身大のボクの姿をした人形を明後日の方向に思いっきり放り投げる。操れないだろうけど問題ない。

 その間にデブリを大量に投げたり蹴ったりして放つ。その一つにボク自身が引っ付いて後ろから突撃する。


「囮か? 無駄なことだ」


 ボクのマリオネットが消滅した。でも、これでい


『ドラゴンブレスが来ます』

「蘇生準備。このまま突撃する! 蘇生はドラゴンブレスが終わってから!」

『畏まりました』


 こちらも両手のドラゴンのぬいぐると口からドラゴンブレスを背後に放って一気に加速する。どうせダメージにはならないんだから加速装置として利用してやるのだ。


「死ぬがよい」


 放たれるドラゴンブレスにボク達は何もできずに一瞬で消滅する。意識がブラックアウトしそうなのを我慢して耐える。




蘇生リザレクション


 しばらくして、フェリルの声が聞こえると意識がハッキリとしてきた。一応、ドラゴンブレスの間は耐えられたみたいだけど、支援が消れた。死亡すると消えるのは仕方がない。


『かけ直します。生命力増加・共振ライフアップ・レゾナンス魔力増加・共振マジックアップ・レゾナンス勇敢な心ブレイブハート要塞フォートレス持続再生リジェネ高位障壁ハイ・プロテクション致命の一撃デットリーブロウ属性抵抗レジスタンス・エレメンタル


 瞬時に支援が戻ってきたので、恐怖に塗りつぶされそうだった心が奮い立った。現状を把握する前に嫌な感じがしたので上に移動する。すると、ボクが居た場所に巨大な壁見たいなのが振るわれた。それは巨大な尻尾で、音速を越えて放たれる。普通に考えて防げないので、タイミングを見て両手で前転のような感じで触れて下の方向にずらす。両手が消し飛んだけれど、足と頭は無事だったので、デブリを足場に突撃する。でも、せっかく稼いだ距離が振り出しに戻された。悔しい。


「無駄な足掻きだな」

「おいこら! 子供相手に大人気ないぞ!」

「何を言う、これは試練だ」

「それでも遠距離から確実に仕留めにかかるなんてないよ! 近接戦闘しようよ!」

「我にはこれも近接戦闘の範囲なのだがな」

「う~!」

「だが、幼子に大人気ないのも事実。良かろう。近づければ勝てると思われているのも癪だ。近付いてくるがいい」


 よし。これでチャンスは生まれた。近付いて真正面から対峙する。


「では、行くぞ!」

「りゃぁぁぁっ!」


 全力で突撃する。相手は爪を振るってくるので、直感は働かず、あっさりと掴まってしまった。力の差がありすぎる。


『主様?』


 大丈夫、ここからだ。


「ここまでのようだな」

「みたい……ねえ、どうせなら倒される方法を選んでいい?」

『諦めるのですか?』


 フェリルから失望の気配がしてくるけど、我慢。


「ふむ。良かろう」

「じゃあ、食べて。ドラゴンの口の中って気になっているんだよね」

「まあ、よかろう。貴様程度の攻撃力では口に入っても問題はないしな」

「ありがとう」


 爪で摘ままれて口の中に放り込まれる。その瞬間。足につけたぬいぐるからドラゴンブレスを放って口の中に入れた。これで準備は完了。腕はなくてもいける。


「メニュー画面。アイテムストレージ。ドラゴンのぬいぐるみ・エクス。フェリル、致命の一撃をぬいぐるに!」

『畏まりました!』

「いくぞ、喰らえ!」


 アイテムストレージから音声認識で取り出したドラゴンのぬいぐる。それを人形操作で操り、ボクのほぼ全ての魔力をつぎ込む。これによって元から限界までチャージされ、火竜の巫女エクスの全力攻撃が付与されたボクの竜核が臨界点を超えて爆発する。

 上位存在討滅者の称号でレベル差が10離れるごとにステータスが1.5倍される。ボクと竜王ドラゴンロードのレベル差は100じゃ効かない。それでもダメージが入らなかったのは単純に基礎となる火力が足りなかったから。1にいくら100倍しようが、所詮は100点でしかない。でも、それが攻撃力に特化した火竜の巫女が放つ全力攻撃だったら?

 ボクと違って彼女の基礎値は10000を超えている。ならそれの100倍は1,000,000だ。そこに致命の一撃が入り、更に倍。つまり単純計算で2,000,000のダメージとなる。それが口内から放たれた結果、決して無傷ではない。


「――■■■■■■■■■■■■ッ!!!!」


 竜王ドラゴンロードの絶叫が響く。これでも殺し切れないだろうけど、問題はない。何故なら残り三発はある。


蘇生リザレクション


 二度目の復活。残り二回。無理をしたら五回らしいけれど、嫌な予感がするから残り二回で決着をつける。それなら次は一斉起爆だ。


「フェリル、次は三体にお願い!」

『畏まりました。お任せください』


 MPPを飲んでMPを回復させながら、残り3体のエクスの人形を取り出す。ついでに金属とかキリング・マンティスのMVPドロップ死神の大鎌とかも出して斬りつける。一応、さっきの爆発で怪我をしているのでそこからなら少しはダメージが入った。まあ。周りは血だらけで、たっぷりと吸わせてやると面白いことになりそうだ。

 起爆は待って、フェリルに支援をかけてもら状態にしてエクスのぬいぐるはドラゴンにとって大事な場所、口の中にある力の集積場所と鼻の方に移動して脳の部分に貼りつけさせる。最後の一体は起爆用にボクが持つし、ボク自身も死神の大鎌で舌の裏側に潜り込んで筋を切っていく。これで舌が巻かれて窒息なんかになってくれたら嬉しいけれど、そんなことにはならないだろう。


「ああああああああああああああああああぁぁぁぁぁっ!」

『主様、ブレスがきます』

「うん、逃げられないし、逃げるつもりもないから、相手にも致命の一撃をかけて蘇生準備をして」

『陛下にもですか?』

「うん。やって」

『畏まりました』


 相手が取る方法は舌を使った迎撃か、ボクを吹き飛ばすこと。でも、しっかりと張り付いているし、呼吸ぐらいじゃ頑張れば吹き飛ばされない。だから、ドラゴンブレスを撃つしかない。目の前でボクを滅ぼす力が収束されていっている。正直言って無茶苦茶怖い。なんで目の前に戦略級の兵器が起動して自爆するところを待つしかないのだし。


「あ~う~今、かな~?」


 死神の大鎌をアイテムストレージに戻してから、エクスをドラゴンブレスの力が溜まり切る瞬間に爆発させる。ボクが持つ一体が起爆することで、ドラゴンブレスのエネルギーと三体のエクスの火力。それぞれが相乗効果で数倍に強化されて盛大に大爆発を起こす。その衝撃で吹き飛ばされて外に出されたボクは、身体が消滅しながら竜王ドラゴンロードをみる。

 竜王ドラゴンロードは全突き刺さっていた場所や目、口などから光を発しながら内部から膨れ上がっていく。ボクはそのまま竜界に落ちていく。


蘇生リザレクション。これで三回目です。残り一回。最悪二回です』

「うん、わかってる」


 落下しながら、アイテムストレージからポーションを取り出して身体にかけていく。すでにボクの装備や服は消滅しているし、素っ裸だ。でも、不思議と光で大事な部分は見えない。


「あ~くそ、常闇のワンピース、消滅しちゃった……」

『大事な物だったのですか?』

「貰いものだからね」


 MPが回復してきたので、竜翼を使って落下速度を減らす。それから服を取り出して身に纏おうとしてフェリルに注意されて止めた。だって、大気圏突入している状態だから燃えちゃうしね。


「これで勝てたと思う?」

『まだ、ですね』

「やっぱり?」

『世界の声がありません』

「じゃあ、生きてるか。困ったな、これで手詰まりだ」

『そうなのですか?』

「もう人形も何も無いしね……」


 上を見ると、ボロボロになっている竜王ドラゴンロードや相手に刺さっていた武器も落ちてきている。飛行能力はすでに無いみたいだから、このまま地上に激突して倒れてくれると嬉しいけれど、それはないか。


『主様、このまま落ちたら聖域です。そこでしたら、武器がございます』

「武器……ああ、なるほど」

『はい。石像も人形です』

「ごもっとも」


 岩や石でできている人形だって存在しているんだ。だったら、アレだって人形に間違いはない。


「よし、このままいくよ!」

『はいっ!』


 加速して落下を速める。相手の方が重量があるから、早いのだ。




 戦闘空域が竜界の宇宙から上空に変わったことで龍脈のバックアップも復活した。これで力を全力で集める。でも、きっとこれじゃ足りない。圧倒的にレベルが足りないのだから、仕方がない。それでもやるしかない。負けるということはアイリが居なくなるってことだ。確かにここでできたデータだけの子供かも知れない。それでも、彼女はボクとメイシアの子供だ。だったら、親が子供を守るのは当然だ。


「ねえ、これって竜族が全員見ているんだよね?」


 服をただの町用の物に変えてフェリルに聞いてみる。


『そうです。戦闘中以外は間違いなくみています』

「そっか。こっちの声って届く?」

『全て聞こえています』

「そっか。それならいけるね」

『頑張ってください』

「うん、ありがとう」


 足りないのなら、力を借りたらいい。ボクは竜王ドラゴンロードにはなるけれど、それは力ではなく、あくまでも皆の代表なだけだ。


「竜族の皆、いや、この世界に生きる人達、皆、力を貸して! 相手は聞いていた通り、竜界もろとも人間界や他の世界も巻き込んで自爆するつもり! だから、それを防ぐためにも龍脈を通して力を貸して! ボク達の大切な場所や人を守るために!」


 ボクが声を張り上げると、周りから銀色の光や赤色の光など、様々な光が龍脈から溢れ出てくる。これは巫女達の力だろう。それにドラゴンナイツの人や、天使、悪魔などからも力が集まってきているのがわかる。


『……多種族の力まで借りますか』


 駄目? でも、これが一番勝てる方法だよ。なんせ、巨人族ですら力を寄越してきているのだから。


『いえ、理解はできます。納得はできませんが……』


 ごめんね。ボクがもっと強ければこんなことにはならなかったんだけど……


『いえ、主様はよくやってくださっています。今は個人の感傷など必要ありません。全力で支援いたします』

「ありがとう」


 豊富に流れてくる魔力を使ってドラゴンブレスを何度も放って加速と同時に上にいる竜王ドラゴンロードに攻撃して押し上げる。馬鹿みたいな魔力を込め、上位存在討滅者と合わせてなんとかダメージを与える。

 地上がどんどん近付いてくる。聖域の地面に着地し、滑りながら速度を殺し、魔力の糸を伸ばして無事なドラゴンの石像達に大量の魔力を流し込み、彼等の力を借りて落ちてきている竜殺しの兵器を口や手に持たせて整列させる。見た限りでは竜王ドラゴンロードはすでに動きが取れ――


『ドラゴンブレス、来ます!』


 ――身体が崩壊していっている状態でもこちらを殺す気満々のようで、ハッキリ言って怖い。


「投擲!」


 石像達に竜殺しの兵器を一部だけ全力で投擲させる。投擲された武器は竜王ドラゴンロードの身体に突き刺さっていく。絶叫を上げながら悶えるが、それでも動きを止めない。これは死ぬかもしれない。でも、負けるつもりはない。

 まずは石像達の一部を落下位置に移動させ、竜殺しの兵器を上に構えさせる。残りは空を飛ばせて顔面に激突させ、ドラゴンブレスの軌道を変えさせる。ボクも大きな槍を持って空を飛んで竜王ドラゴンロードの上を取り、魔力を爆発させてそのまま更に上空まで上がる。


「フェリル、逆鱗の位置、今ならわかる?」

『はい』

「ならいくよ」


 遥か上空から急降下する。竜殺しの兵器と翼に龍脈から過剰供給される圧倒的な力を全て回し、身体が崩壊するのも気にせずに流星となって逆鱗を狙う。


潮津波タイダルウェイブ


 大量の水が渦となって竜王ドラゴンロードの身体を覆う。でも、ダメージは通っていない。フェリルとしてはダメージでは目的じゃないみたい。


『見つけました。両翼の中心です』

「了解!」


 水を使って身体を調べてくれた。後はそこに直撃させるだけ。


「『いっけえええええええええええええええええぇぇぇぇぇっ!!』」


 狙い通り逆鱗に竜殺しの槍が突き刺さり、そのまま石像達が構えている武器の上に激闘させる。


「■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■――!!!!!!!!!」


 絶叫を上げる竜王ドラゴンロード。これで勝ったと思った。だけど、とどめを刺し切る前に竜殺しの槍が折れた。


『っ! きます!』

「ちぃっ!」


 竜王ドラゴンロードは寝狩りをうつようにして身体を回転させてボクを押し潰してくる。なんとか逃げられたけれど、もう武器はない。でも、相手は死に体で、大量の血を流している。それでも瞳は諦めておらず、闘志に溢れていた。


「まだだ、まだ終わらんぞっ!」

「終わってよっ! もう休んでいいから!」

「断る!」


 アイテムストレージから死神の大鎌を取り出し、全力で振るう。相手も腕を振り上げて振り下ろしてくるが、見当外れな場所に命中してその場所を粉砕する。もう、目もろくに見えていない。それでも戦いを止めない。


「我が子等を、民を殺した巨人族の者共を殺す! その為に! こんなところで止まるわけにはいかん!」


 こいつもボクと同じだ。家族の為に全力を出している。

 がむしゃらに放たれる攻撃を飛んで、ステップで回避する。ちょっとでも掠ればそれで死亡だ。でも、諦める訳にはいかない。


「後はボクが引き受けてあげるから、安心して眠ってお義父さんっ!」

「ぐっ――あああああああああああああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁっ!!!!」


 最後の一撃か、口からドラゴンブレスが放たれる。ボクは正面から突撃し、身体が崩壊していく中でドラゴンブレスを突っ切って、鱗が、皮膚が剥がれて剥き出しになっている額を狙って思いっきり死神の大鎌を投げる。しかし、狙いが外れた。そのまま両手が消滅したから、空中で死神の大鎌の柄を口で掴んで首と全身を使って振り下ろす。

 しっかりと突き刺り、これで竜王ドラゴンロードは身体を地面に投げだした。竜王ドラゴンロードの顔はどことなく嬉しそうにもみえる。


「かはっ」

『主様っ!』


 同時にボクも竜王ドラゴンロードの上に倒れて、身体が死に絶えていく。身体のほとんどがないし、服もまた消滅した。


『お疲れ様でした。我が主。どうか、おやすみください』

「それは、だめっ……蘇生リザレクション、お願い……」

『……わかりました。蘇生リザレクション


 身体は瞬時に再生され、ボクは立ち上がり、死神の大鎌を上に掲げてやる。これで、アイリを助けることができるし、こんなところで寝てられない。

 そう思っていると、竜王ドラゴンロードの身体が光って粒子となり、ボクの身体の中に入って吸収されていった。足場が無くなり、倒れそうになるボクを、出て来たフェリルが抱きしめて支えてくれた。




【ワールドエネミー・竜王ヴェーヌスを討伐しました。

 初回討伐報酬:竜王class

 MVP討伐報酬:竜界の支配権(転生の秘宝・金竜)

 転生の秘宝・金竜は金竜のため、竜界の支配権に変更されました

 参加報酬:アイテムチケット5、スキルチケット1】

【ワールドアナウンス:竜界にて竜王ドラゴンロードの継承の試練が攻略されました。これより、竜族及び竜界の支配権は新たなる竜王に譲渡されます】

【プレイヤーアナウンス:プレイヤーが国家の支配権を得たため、国家運営システムが来週のメンテナンスより解放されます。また、竜界が解放されました。竜界は指名手配されていない竜族のみ自由に入ることができます。それ以外の種族は竜族が発行する許可証が必要となります。以上を持ちまして、金竜の幼姫に関するクエストを終了します】






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