第23話 洞を通って迷いの森の地下へ
準備ができたので、全員で迷いの森に入る。迷いの森に入ってからすぐにウルフ達の襲撃を受けたけれど、こちらは22人もいるので簡単に倒せた。
襲撃してきたウルフの一部は倒さずにディーナがマーカーを打ち込んでから逃がす。それを皆でお喋りしながらゆっくりと進んでいく。
ボクとメイシアはアイリと手を繋ぎながら、ゆっくりと進んでいく。まるで親子でピクニックみたいだ。
「いい天気ですね~」
「でやがりますね」
「まるで森林浴に来ているみたいだよね~」
木々の隙間から差し込んでくる太陽の光がキラキラと輝いていて、とっても綺麗だ。ここが迷いの森と呼ばれているなんて信じられないぐらいで、ウルフさえいなければ遠足とかピクニックに、昼寝にもってこいだと思う。
「お兄ちゃん、アナとも手を繋いで」
「いいよ」
アナスタシアがおねだりしてきたので、空いている手で彼女とも手を繋ぐ。アナもアイリの手も小さくて柔らかい。そう思っていると、アナは嬉しそうに手に持つ日傘をくるくると回していく。
ディーナは羨ましそうにこちらを見ているが、彼女は先頭を歩いて皆を案内しないといけないのでどうしようもない。しかし、ボク達にいろんな視線が集まってくるのは我慢しないといけない。大概の視線が微笑ましいものをみるような感じだしね。
※※※
皆で一緒に進んでいくと、木の幹にある入口に到着した。前に行った場所とはまた違う場所みたい。
「この洞から侵入できます」
「こんなところにあったんだな……」
「前に確認したはずだ」
「なら、場所は移動すると仮定したほうがいいな。前の時はだったんだ?」
「こことは違う場所でした。人をやって確認しますか?」
「いや、後でいいよ。今回のメインはレイド戦だからな」
「そうですか。それでは男性陣のタンクから進んでください。女性陣は後から入ります」
「わかった」
皆、理由が理解しているので大人しくディーナの指示に従う。従わないと女性陣からボコボコにされるから、仕方ないよね。そんなわけで、ボクは男性陣の最後で入らせてもらう。ボクは男だけど、見た目は完全に女の子だし、服装も呪いと性能から考えてワンピースのままだから仕方がない。
ちなみに集まった人の中には男性で女性用の装備を身に着けていたり、女性で男性用の装備を身に着けている人もいる。このゲーム、現実基準だからかどちらの装備も実際に着ることができるのだ。
木の洞でできたトンネルを四つん這いになって進んでいく。進んだ先は充分な広さがあり、すでに男性組が魔法の灯りを用意してくれている。その灯りと竜族として龍脈を使った感知能力で入口付近を男性陣が陣取って防衛体制を構築してくれている。
「ほら、嬢ちゃん」
ボクの先にトンネルから出た男性の一人が手を差し出してくれる。ボクはそれを握って立ち上がらせてもらう。
「ありがとう。それとごめん、ボクは男なんだよね」
「マジで?」
「マジだよ、クエストで似合うからって着せられたんだけど、呪いの品で一定期間脱げないんだよね」
立ち上がったボクは軽くワンピースを叩いて土を落としていく。
「ああ、そういうこともあるのか……気を付けないといけないな」
「油断したら危険だよ……本当に」
後続のアイリとメイシアが進んで来たので、今度はボクが二人に手を差し出してあげる。二人はボクの手を掴んで立ち上がってくる。
「ありがとうございます、ユーリ」
「パパありがとうだ、です」
「パパ?」
「この子はボクとメイシアの子供なんだよ」
「ああ、もしかしてあのワールドアナウンスって……」
「ボク達だよ」
メイシアはアイリの服を叩いて土を落としている。そうこうしている間にディーナとアナスタシアもこちらにやってきたので、ボクは手を差し出して彼女達も立たせてあげる。
「おや、そちらの方はどなたでしょうか?」
「ああ、俺はクーゲル。
「戦う商人さんなんだ」
「そうだ。もっともまだ安く買えて高く売れるだけだ。もちろん、戦えるぞ」
「十分に有効そうなんだけど……」
買ったり売ったりするだけで売り上げが伸びるわけだしね。代理で購入したり、販売するだけでも活躍できると思う。仕事がない時は自分で狩りにいってもいいわけだし。
「それなら今回のドロップを売る時にお願いしますね。補充も必要かもしれませんし……」
「任せな。っと、後続がどんどん来ているから、俺は前に行くぜ」
「わかりました。私も前でサーチを行ってきます」
「お願い」
メイシア達も後続の人達を手伝っていっているので、ボクはどうしようか考える。でも、やっぱりよくわからないので、周りの人達を見渡してみる。そうするとわかったのは皆、武器や防具の点検をしたり、ポーションホルダーなどを取れないかどうか確認している。
今までの楽観とした雰囲気ではなく、ピリピリとした張り詰めた雰囲気ではなくなっている。ボクも一応、装備を確認してみる。
Name:ユーリ
Race:金竜〔幼体〕
CLASS:人形師Lv.2
HP:4500
MP:2000
ATK:1800+700
DEF:1200+300
MATK:1200+200
MDEF:1200+10
STR:400+200
VIT:400+500
AGI:400
DEX:400
INT:400
MID:400
LUK:400+100
Skill:竜麟・金竜Lv.4、魔竜の心臓Lv.4、人形作製Lv.4、人形操作Lv.8、金属操作Lv.2、苦痛耐性Lv.9、直感Lv.5、幸運Lv.3、金竜の幼姫Lv.2、AI作成Lv.1、竜属性魔法Lv.3、火属性魔法Lv.3、水属性魔法Lv.3、風属性魔法Lv.3、土属性魔法Lv.3、闘竜技・金竜Lv.2、物理軽減Lv.6、連携魔法Lv.3、機人整備Lv.3、竜魂転生Lv.1。
CP:1850
装備:うさぎとオオカミのぬいぐるみ(攻撃力200、防御力100、耐久力80)
床闇のワンピース(防御力200 スキル:ドロップ自動収集、身体能力増加Ⅰ(50%)、闇属性魔法Lv.2、自動回復向上Lv.1、闘争心増加Lv.1、自動修復Lv.3、暗視)
疾風のブーツ(移動速度10%上昇)
プルルの指輪(MDEF+10)
飢餓のアクアグローブ(水属性の魔法の効果を10%上昇、空腹度の減り具合上昇・小)
五体の家族人形 ランクC 耐久200/200(人数におおじて様々な効果を得られる)
称号
プルルキラー:プルル系統に対してダメージ50%増加。ダメージ軽減50%。ドロップ率10%上昇。VIT+500
物理破壊者:STR+200、ATK+500。相手の物理耐性、物理障壁を無効化し、相手の物理防御力を50%削減する。
上位存在討滅者:レベル差が10離れるごとにステータスが1.5倍される。
これ以外にもウルフのぬいぐるみは13体作った。そのおかげで人形作成は4まで上がった。人形操作は8なので8体まで操れる。ぬいぐるみ8体とボクとで9発のドラゴンブレスを連携魔法で合わせて増幅し、威力を徹底的にあげた状態で放つ。これがボクがは放てる最大の一撃。それに相手はレイドボスであるキリング・マンティスなので、おそらく上位存在討滅者の効果も適応されるはず。
一応、これで装備は大丈夫だと思うので道具の確認にする。回復用のポーションHP10本、MPポーション7本用意している。足りないだろうけど、アイリの装備とかでお金を使ったので仕方ない。それにこれは一応、家族の皆で別けた数なので実際にアイテムストレージの中にあるのは5倍になる。
「うん、これで準備はいいかな……」
「パパ、なんでCPをふりやがらねえですか?」
「ん? CP?」
「ユーリ、もしかして忘れてましたか?」
「あ~忘れてたや」
現状のCPは1850もある。これをステータスに反映させるとなると、特化すべき。そして振るべきは戦闘系なんだろうと思う。STRとVITがいいと思うのだけれど、ボクは人形師としてDEXに振る。人形を作るのにも操作するのにも技術力が重要だと思うからだ。目指すべき生きた人形のため、目先の戦闘力は捨てさせてもらう。
幸い、ボクは金竜だ。金竜は全体的にステータスが高い。防御力なんて竜麟もあわせるととんでもないレベルになる。そして、威力は竜脈と龍脈を操作する闘竜技・金竜で底上げすればいい。
本当は技術者としては補正なんかには頼りたくはないけれど、こちらでの感覚をリアルでも再現できるように目標としてすればボクのリアルでの技術も上がる可能性がある。目指すべき目標と感覚を身体と記憶で覚えられるのはメリットにもなる。
「DEXに全振りっと」
現在、400のDEXに全部振る。最初は100ずつだけれどそのまま入れられた。400に+600されて1000になった。すると次からは必要なポイントが倍になってしまった。そう簡単には上げさせてもらえないみたいだ。
1850のうち600が消えて残り1250。なので1200を使ってさらに600あげる。これでボクのDEXは1600となり、残りのCPは50となる。確定させると身体に違和感のようなものが生まれる……なんてことはなかった。
「あれ?」
「どうしたのですか?」
「いや、ステータスを上げたのに何もかわらないんだよ。バグかな?」
「ああ、それはバグじゃないよ~。CPでステータスを更新したら、一度安全なところで
「早ければ1時間でしょうか?」
「それぐらいだね。お昼ご飯の時に適応されたこともあったし」
アナスタシアとメイシアが詳しく教えてくれた。どうやら、CPでの強化はお預けのようだ。でも、よくよく考えたらそんなすぐに強くなるはずないよね。
スキルのレベルアップもどちらかというと、使っていったら習熟していった感じだ。種族としてのレベルもステータスとスキルを総合的に判断されているだけなのかもしれない。
「じゃあ、終わってkら期待しよう」
「それがいいかと思います」
「だね~」
「進むみたいでやがります」
「本当だ。それじゃあ、ボク達も行こうか」
「はい」
「レッツゴー!」
「ごー」
ディーナ達、先頭組が歩き出したので、ボク達も進んでいく。この先に出てくるアントを相手にしないといけないだろうけど、今度は索敵や罠探知を持っている人もいっぱいいるので安全に地上にでられると思う。
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