第11話 アナスタシアの魔法




 登録したフレンド一覧からパーティーを組んで、東門で依頼を請ける。それから、プルル・ジョゴスが出る場所を目指していく。

 アナスタシアは渡したうさぎのぬいぐるみを抱きながら、黒い傘を差してついていくる。楽しんでいるのか、傘を回転させている。ワンピースタイプのゴシックドレスと合わせて、まるでお散歩しているみたいだ。

 ディーナは身体のラインがはっきりと出る水着みたいなものを着ているのだけれど、聞いた話ではボディスーツで、水着ではないらしい。ボディースーツを脱いだら下着になるみたいだ。ボディスーツはロボットアニメとかで着られているパイロットスーツだ。ここでの正式名称はパワードスーツで、色々と強化されるみたい。


「敵生体、105体。こちらに寄って来ています」

「多くない? というか、普通はノンアクティブなはずだけど……」

「ボクのせいだね。モンスターを引き寄せちゃうから」

「じゃあ、早く奥に行かないと迷惑になるね」

「だね。ディーナ」

「ディーでいいですよ。私も愛称がいいです」

「じゃあ、ディーは索敵とかできるんだよね?」

「はい、得意項目です」


 青い瞳の中が微かに動く。機械で出来た瞳でズームとかしているのかも知れない。


「じゃあ、奥まで先導して」

「任せてください。アナスタシア、ちゃんと付いてきてくださいね」

「はーい!」


 ディーナの先導に従って奥へと進んでいくと、敵との戦闘が殆どなかった。それどころか、かなり効率良くモンスターの集団が一塊となっていた。


「展開・ガトリング」


 そして、その塊はディーナの腕が光と共に変形してガトリングガンに変化した。片手をトリガーに添えて引き金を引くと重低音の音が響いて弾丸が高速で吐き出されていく。集まっていたモンスター達は一瞬で消滅してドロップ品へと変わっていった。そのドロップ品はボクのウエストバックへと収納される。


「弾切れです」

「お姉ちゃん、お姉ちゃん」

「なんですか?」

「いくら使った?」

「2000発で1000Gですね」

「高っ⁉」

「機人種は強い代わりに弾薬や装備が凄く高いし初、期装備以外はレアアイテムだから入手も難しいんだよ。それさえどうにかできればかなり強いんだけど……」


 まあ、銃器や機械を使っているわけだし、そうなるよね。遠距離攻撃で攻撃力も高いんだしね。


「ですが、センサーによる索敵と罠探知など色々と有用ですからね」

「でも、メンテナンスはどうするの?」

「お兄様にしてもらいます」

「メンテナンス?」

「はい。機人種は先に言った装備など以外にも、一週間に一回は魔導技師のメンテナンスを受けないとステータスが下がって誤作動を起こす時があるのです。いいメンテナンスを受けるとステータスが上昇したりします」

「それをボクにしろと?」

「駄目ですか? お兄様以外の人に身体を弄り回されるのは嫌なのです」

「うっ」


 不安そうに上目遣いで見られたら、叶えるしかないじゃないか。それに他の人にディーの身体を好きにさせるのかと思うと、少しいらつくし。


「でも、魔導技師じゃないけど大丈夫?」

「お兄ちゃんは人形師だから、機械人形である機人種も扱えるよ。専門スキルがあればだけど」

「えっと、どれだっけ」

「マスター契約をしたら習得リストに出るはずですよ」

「えっと……」


 スキルリストを確認すると確かに出ていた。職業のレベルアップで貰えるスキルポイントを使えば習得できるみたいだ。でも、次に習得出来るのは3レベルだからまだ1レベル足りない。スキルブックを使えば速いんだろうけれど、まだ必要は無いか。


「じゃあ、次にレベルが上がったら習得しよう。それよりも敵を倒すよ。ボクが集めるから、ディーは援護でアナは殲滅して」

「はい」

「頑張るぞー!」


 プルルが大量に出る場所でボクが走って大量のプルルを集める。その集めたプルルをアナスタシアがまとめて倒す。その為にアナスタシアのいる場所に向かったのだけれど……


「亡者の怨嗟!」


 地面から大量の手が出て来てプルル達を掴んで地面の中に引きずり込んでいくという、なんとも怖い魔法でモンスター達を蹴散らしていった。


「なんとかならないですか?」

「これが一番広範囲なんだよね。後、あるのはクリエイト・スケルトン、クリエイト・ゴースト、クリエイト・ゾンビ」


 アナスタシアがそう言うと魔法陣が現れる。そこから剣と盾を持った骨のモンスターと、半透明な霊体、腐敗した臭いのきつい身体を持つゾンビが現れた。


「臭い!」

「嗅覚カットしました」

「これは酷い」

「ゾンビさんはあっち行って適当に狩ってて!」


 アナスタシアの命令にゾンビが離れていく。これで臭いは少しましになった。ディーナはカットできるみたいだけど、ボクはそうはいかない。正直、一緒にいるのはきつい。


「他は無いの?」

「闇魔法と死霊魔法だからね。それ以外は吸血魔法ってのがあるの。闇魔法はダークネスアローとダークネス・ミストっていう疑似的に夜の状態を作り出す魔法かな。効果時間はなんと、たったの1分! クールタイムは1時間という酷さなんだよ!」

「まあ、仕方ないんじゃないかな」

「ですね。死霊魔法がクリエイト系と亡者の怨嗟ですか」

「そうだよ。後、クリエイト系は強いのを呼んだら登録したりもできるの。でも、素材がいるから、そう簡単に強いのは作れないよ。吸血魔法は血液を使った魔法で、血を吸わないと使えないんだ」

「そういえば、吸血鬼だから血を吸ったら強化できるのか」

「うん! だから、お兄ちゃんのを吸いたいな……」

「別に直ぐ回復するからいいよ。おいで」

「やった!」


 近寄って来たアナスタシアを抱き上げる。しかし、血を吸うって抵抗が無いのかな?

 そんな事を思っていると首筋にこそばゆい吐息とピリッっとした痛みが走り、アナスタシアの唇の感触がしてきた。それからごくごくと何かが吸われていく感触がして、ヒットポイントゲージをみるとどんどん減っていく。


「どう、嫌じゃない?」

「とっても美味しいよ! アナの好きなリンゴジュースみたい!」

「そっか、それなら良かったよ」

「えへへ、もっと飲んでいい?」

「どうぞ」


 それから、たっぷりと飲まれた。ヒットポイントゲージは減ったり、回復したりと、とっても忙しそうだった。


「よ~し、元気いっぱい!」

「じゃあ、再開しようか」

「お兄様は大丈夫ですか?」

「うん、平気だよ」

「では、お願いします」


 また、集めてアナスタシアに討伐してもらう。今度はブラッディ・レインとい魔法で、血でできた礫を雨のように高速で降らせるというもので広範囲が攻撃される。この攻撃によって一定数が狩られたのでプルル・ジョゴスが生まれて出現した。


「出た」

「これが……なんというか……」

「気持ち悪いね! 可愛かったのに……こうなったら……クリエイト・ブラッド!」


 アナスタシアがそういうと、巨大な血のような色がした魔法陣が生成される。そこから深紅の光が立ち上り、ゆっくりと巨大な存在が出てくる。それは血液で出来たドラゴンだった。それも、見た事があるドラゴンだ。


「焼き払えー!」


 ドラゴンのブレスは一撃でプルル・ジョゴスを消し飛ばしてしまった。ボクが苦労して倒していた敵が一撃……なんで?


「金竜の血ですね」

「うん! お兄ちゃんの血ってとっても美味しくて、ブースト効率が凄くいいの。それに素材としても凄いから、こんなのが作れちゃうみたい。まあ、ブラッディ・レインで広範囲に血をばら撒かないと使えない魔法なんだけどね。あ、登録しておこ」


 しゃがみ込んでぐったりとしているアナスタシア。彼女のステータスを見ると血液欠乏症となっていて、ステータスが10分の1まで下がっていた。どうやら、この魔法は溜め込んだ血液も一気に放出してしまうようだ。とりあえず、ボクの血を飲ませて回復してもらう。

 しかし、このドラゴンさんは効果が切れるまで大暴れしてくれた。お蔭で効率良くアイテムを回収できたし、プルル・ジョゴスを何度も倒す事ができた。もちろん、作り直したりはしたけれど。それにすぐにウエストバッグがいっぱいになるので、三人でわける。




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