第10話 アナスタシアとディーナ
試合に勝利したボクは彼等の装備とアイテムを全て手に入れた。その中には彼等が持っていた特殊な装備アイテム。召喚石もある……と、思っていたけれど、残念ながら譲渡不可となっていた。
旨味があんまり無いと思ったけれど、鬼さんの圧し折った角はドロップアイテムとして手に入っていた。それに彼等が持っていたお金9043Gと装備の売却額37400Gがもらえた。どうやら、入手した瞬間に売却するか、そのままの現物で入手するかを選べるようで売却を選択した。
売られた装備は彼等が借金をして買い戻すか、そのまま破棄するかを選べるようだ。借金をして買い戻すと装備はそのままで、稼いだ金から自動で引き落としされるシステムになっている。
このシステムが装備をロストしてお金を稼げなくなる状態を防いでいるようだ。それにボクが現物で選択しても同じ物が彼等にも用意されるので、こちらは気にする必要もない。それにボクの方は新品になるので助かる。他人が着ていた物を着るなんて気持ち悪いからこのシステムは歓迎だ。これが家族だとまだ大丈夫なんだけどね。
「お姉さん、クリームソーダ1つ!」
「はいよ」
席に戻って注文すると、直ぐにクリームソーダが出現する。メロンソーダにアイスが入っていて、スプーンみたいなストローがついている。ストローに口を付けて飲んでいくと、疲れた身体に染み渡る。嘘、あんまり疲れてない。
「うん、まあまあかな」
「くそっ、覚えてやがれぇ!」
「くそぉぉぉっ!」
走っていく男達を無視して椅子に座って足をぶらぶらとさせながら、ステータスを確認する。
NAME:ユーリ
Race:金竜〔幼体〕
CLASS:人形師Lv.2
HP:4500
MP:2000
ATK:1800+700
DEF:1200+300
MATK:1200+200
MDEF:1200
STR:400+200
VIT:400+500
AGI:400
DEX:400
INT:400
MID:400
LUK:400+100
Skill:竜麟・金竜Lv.1、魔竜の心臓Lv.1、人形作製Lv.1、人形操作Lv.2、金属操作Lv.1、苦痛耐性Lv.2、直感Lv.2、幸運Lv.1、金竜の幼姫Lv.1、AI作成Lv.1、竜属性魔法Lv.1、火属性魔法Lv.1、水属性魔法Lv.1、風属性魔法Lv.1、土属性魔法Lv.1、体術Lv.3、竜脈操作Lv.2、物理軽減Lv.3。
CP:449
装備:うさぎとオオカミのぬいぐるみ(攻撃力200、防御力100、耐久力80)
床闇のワンピース(防御力200 スキル:ドロップ自動収集、身体能力増加Ⅰ(50%)、闇属性魔法Lv.2、自動回復向上Lv.1、闘争心増加Lv.1、自動修復Lv.3、暗視)
疾風のブーツ(移動速度10%上昇)
プルルの指輪(MDEF+10)
飢餓のアクアグローブ(水属性の魔法の効果を10%上昇、空腹度の減り具合上昇・小)
称号
プルルキラー:プルル系統に対してダメージ50%増加。ダメージ軽減50%。ドロップ率10%上昇。VIT+500
物理破壊者:STR+200、ATK+500。相手の物理耐性、物理障壁を無効化し、相手の物理防御力を50%削減する。
上位存在討滅者:レベル差が10離れる毎にステータスが1.5倍される。
鬼を倒したお蔭で経験値がかなり入ったようで、スキルレベルが結構上がった。決闘……PvPはスキル上げにいいのかも知れない。
「ねぇ、良かったら私達と……」
「人待ちしているので……ごめんなさい」
「そっか、また機会があればよろしく」
「はい」
誘ってくれる人が多い。改めて回りを見ると、オープンテラスの席で看板みたいなのをテーブルの上に置いている人が相当な数いる。
遠目から読んでみると、そこには大まかに種族とレベル、職業が書かれていたり、臨時)○○職○名様募集とかが書かれていた。
見ているとパーティーを組んでいるようだ。それ以外にも、売り物を書いている人もいる。ボクも出してみよう。店員さんにお願いしたらいいのかな?
「店員さん、あの看板みたいなのを貰えますか?」
「ボードはサイズに関わらず1000Gとなっております。1000G以上の商品、お買い上げの方には500Gとなり、2000Gお買い上げの方には100Gとなります。また5000G以上で無料となっております」
つまり、“注文してお金を落としていってね”って事だね。現在、ボクの会計は……5628G。食べ過ぎた。
「5000G、超えてるから無料?」
「そうですね。どのサイズになさいますか?」
小はテーブルの上に置く感じで、中はパラソルに掛けてのれんみたいにする奴。大は床に立てかけるタイプの看板だ。とりあえず、小でいいかな。いや、怜奈達がボクを探すのは大変だろうし、中にしておこう。これが一番目立つ。
「中でお願いします」
「かしこまりました。それではこちらになります。文字はこのペンでお書きください」
「ありがとう」
受け取った物に怜奈と書きかけてプレイヤーネームの方を書く。“アナスタシアとディーナ待ち”と書く。ちょっとスペースが開くので“疾風のブーツ1000Gで売ります。在庫18”と書いておく。
「1000G!?」
「売ってくれ!」
「こっちは3つ!」
「ありがとうございます」
驚くほどにどんどん売れていく。何故か男の人が良く買っていく。瞬く間になくなり、暇になったボクはぐてーとテーブルの上に身体を寝そべらせる。寝不足なので、そのままうつらうつらしているといつの間にか眠ってしまった。
※※※
頬っぺたをぷにぷにと突かれる感触で目を覚ますと、目の前には青みのかかった銀色の長髪を毛をツインテールにした美少女が居た。黒いヘッドドレスにフリルのついたゴシックドレスに身を包んだ少女が好奇心が強そうな悪戯っ子っぽい感じで金色の瞳を輝かせながらボクの頬っぺたをつついていたのだ。何故か日傘を刺しながら。
「恵那?」
「正解だよ。でも、こっちじゃアナスタシア、アナって呼んでね」
「アナね、わかったよ」
「うん。え……アナスタシアはお兄ちゃんの穴だ……痛いっ!」
何か変な事を言った感じがしたアナの頭を背後から鉄の腕が強打した。
「ん?」
アナの背後を見ると、そこには長い銀色の髪の毛をした美少女。赤色と青色のオッドアイで両腕と両足が金属でできている。肩の部分から上は人間と同じで頭部に機械でできた髪飾りと耳みたいな棒があるだけだけれど、腕や足は完全なロボットみたいな物になっている。服装はボディースーツみたいで、身体のラインがはっきりと出ている。身長は141センチくらいで、アナともそんなに変わらない。
「ディーナ? 機人種って奴かな?」
「はい。万能型魔導機械人形D-777で、ディーナです」
「人形?」
「そうです。お兄様のお人形です。だから、整備してくださいね」
そう言って昔のように抱き着いてくる怜奈……ディーナ。
「ずるい! さっきは殴ったくせに」
「はしたない事を言うからです」
「仲良くね」
「は~い」
「わかりました」
喧嘩しそうだったので、たしなめる。しかし、幼い頃からお婆ちゃんの言われて二人の世話をしていたからか、かなり懐いたね。あの時は源氏がどうのとか、何を言っているのかわからなかったけれど、アレの事だよね。孤独死しそうなボクへのプレゼントとか言っていたけれど、いいのかなぁ?
助かってはいるけれど、どうせしばらくしたら二人とも離れていくだろうし……今は流れに身を任せよう。
「それにしても、やっぱに似合ってるね。どこからどうみても、可愛い女の子だよ」
「うっ、嬉しくない」
「その姿と服装だと、本当に嫉妬するくらいの美少女です……」
このままじゃ、色々と不味いので必死に説明していく。脱げないことと、スキルのことを説明する。
「なるほど、それなら納得です。お兄様が女装に目覚めたのかと思いましたが、違ったんですね」
「違うから」
「もしそうだったら、お母さん達は大喜びだろうね。あ、スクリーンショットを撮って、お母さん達に送ろうっと」
「やめて。嫌な予感がする。それにスクリーンショットって何?」
「スクリーンショットというのは……」
ディーナからスクリーンショットについて教えてもらった。簡単に言えばゲーム内で使える写真のことだった。
「お願いだから止めてっ!」
「残念」
「まったく……それで、これからどうするの?」
「レベル上げだよ」
「その前にフレンド登録ですね」
「うん。フレンド登録しよ~!」
アナとディーナからフレンド登録が申請されたので、許可を連打する。
【アナスタシア様とフレンド登録を致しました。ディーナ様より万能型魔導機械人形D-777のマスター申請を受諾しました】
「え?」
「マスター申請?」
「はい。マスターがいないと、私の力を十全に発揮できません。それに人形である私は人形師のお兄様と組むことでより強くなれます」
「そうなんだ。わかったよ」
ステータスの部分にディーナの項目が増えていた。それどころか所持金はボクとディーナの物が合算され、アイテムも全部所有権がボクの物となっていた。しかも、ディーナの所有権もだ。
スキルを見る限り、契約には三段階有り、一番軽いのがマスターと所持金の共有だ。これを行うとステータスが同一パーティーの時1.5倍となり、マスターが倒されるとステータスが半減される。
次にアイテムの共有、現在位置の情報を常にマスターへと知られるようになることでステータスが3倍となり、習得経験値2倍となる。マスターが倒されると戦闘不能になる。
最後に装備から何から何まで操作権を与えることで、ステータスが3倍となり、経験値3倍、リキャストタイム半減、マスターの下への転移、リミッター解除を使用することができる。このリミッター解除は射撃タイプなら全武装による一斉砲撃、近接タイプなら高速戦闘が可能になるようだね。デメリットはマスターが倒されると爆発し、レベルダウンが起こる。リミッター解除時の場合は更に装備は全壊となる。
「いいの? 色々と見れちゃうけど」
「お兄様なら構いません」
「そう。まあ、見ないようにするよ」
「見てくれてもいいのに……」
「はいはい、次はアナスタシアだよ。アナスタシアはなんと、吸血鬼だよ!」
「ああ、だから日傘ね」
「うん。昼間はステータス半減で、太陽の下だとバッドステータスの火傷を負ってかなりのダメージを受けるの。日傘がないと太陽がでている間は外に出ることも駄目。でも、夜だと強いよ」
「夜しか役に立たないです」
「まあ、普通ならだけどね! そこは抜かりなく、ラストワン賞で手に入れた全デメリットを無効化する死霊王の心臓を習得してるから大丈夫。種族がヴァンパイア・プリンセスだから経験値はいっぱいいるよ」
完全なアンデットタイプだね。光魔法を使う奴の相手は大変そうだ。
「アナスタシアが魔法タイプということで、私は妨害と援護射撃などを行うサポートタイプをメインにしました。お兄様は確か物理タイプですよね? 違うなら私が前に出ますが……」
「うん、ボクは殴るのが基本だね。人形達も使うけど、連携して戦ったりするのも楽しい。けれど、人形だけで戦わせる時もあるかも」
「なら、問題ありませんね。基本的に前衛をお願いします」
「任せて。二人はボクが守るから」
「よろしくお願いします」
「任せるよ!」
嬉しそうに返事を返してくる二人。続いて装備を確認していく。ディーナは多数の銃を扱い、アナスタシアは盾や杖として使える傘を武器にするようだ。その後、ボクの持っている装備品を渡して3人で楽しい狩りへと出かけることにした。
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