第15話 カモがネギ背負う船戦

船戦ふないくさで勝たねば、平家は滅びぬ」

何時になく真剣な面持ちで戦議を語る義経。

「今、梶原殿が船を集めておるが…期待できまい」

「いかがなされます?九郎殿」

正直、策の無い義経。

三郎がニヤリと笑う

「その心配はご無用、それがしに秘策があり申す」

「えっ?マジ?」

思わず本音が零れる義経。

「心配ご無用…じきに強力な援軍が到着します」

「誰?どこ?」


「……ちゃ~」

「義経ちゃ~ん」

海岸でアウトドア軍議の最中に1そうの船、そのへさきで大きく手を振る若い女性…鼻にかかった声…。

「静ちゃん?…静ちゃんだ…お~い静ちゃ~ん」

こちらも大きく手を振る義経。


海岸に乗り付けた船から、ピョンと飛び降りる静。

「三郎ちゃんに頼まれて、お客さん連れて来ちゃった♪」

船からヌッと顔を出す厳つい男…熊野別当湛増くまのべっとうたんぞう

兵二千、船籍200艘を所持する、熊野水軍の長である。

「静…店外逢引てんがいデートと聞いていたが…随分とむさ苦しい場所へ誘ったようじゃの…」

「ごめんね~、湛増ちゃん♪…でも義経ちゃんに会ってほしかったの」

「源氏の九郎殿か…常勝不敗の将と聞いたが…見えぬな」

「見た目で判断するとは、熊野水軍の長の目も大したことなさそうだな」

どうも相性は悪いようである。


この男が、平家に就くか?源氏に就くか?で勝敗は決まる…そんな空気が立ち込めていた。

「平家は滅びぬ」

「いえ滅びまする」

う~む、どうにも話が進まぬ…。

他の将たちは飽きて海岸で釣りをする者、海水浴を楽しむ者、様々である。


そんなとき

「Boy カニ タベル?」

ベン・ケー…朝から姿が見えぬと思えば、カニ捕りに勤しんでいたようだ。

「あらっ?ベン・ケーちゃん」

(ベン・ケー…だと…)

静の声に湛増たんぞうが振り向く。


視線の先には、懐かしい筋肉黒ダルマ…。

「ベン・ケー!おぬし、元気であったか!」

走り寄る、黒いダルマ。

「オヤカタ~!」


(知り合いか…)

義経が小首を傾げる。


積もる話を聞いてみると…。

どうも、海賊時代に知り合って、日本に連れてきたのが湛増たんぞうらしい。

負傷した湛増たんぞうを介抱したのが、ベン・ケーだったそうだ。

しばらく、熊野水軍に身を置いていたようだが、ある日、散歩に出かけたっきり戻ってこなかったというわけだ。

「長い散歩であったな、ベン・ケー」

「マイゴ 二 ナッテマシタヨ~」

(でっけぇ迷子だな…おい…日本一目立つ迷子だと思うが…)


話はまとまった!

熊野別当湛増くまのべっとうたんぞう!九郎殿に命お預けいたします」

情けは人のためならず…。


とにもかくにも、義経は平家を滅ぼすための切り札を手中にしたのである。


「目指すは平家、最後の拠点 長門彦島ながとひこしま!」


――

「そうか…熊野水軍は源氏に就いたか…臆するな!海の平家の底力、存分に迎え撃て!」


義経 知盛とももりが兵に激を飛ばす!

『決戦は壇ノ浦!』

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る