第14話 叱責…そして

――後白河法皇御所ごしらかわほうおうごしょ

義経は法皇に呼ばれていた。


「鎌倉のやりよう…さぞ悔しかろう、九郎よ、ソチの功は誰よりも麿まろが認めておる。そこでじゃ、ソチに従六位検非違使左衛門少尉じゅろくいけびいしさえもんのしょうじょうに任ずる」

「身に余る光栄。なれど…鎌倉から無断の任官は許さじとのおふれが…」

「なんと!それは鎌倉が…頼朝よりとも麿まろの権限を認めぬということか!」

「いや…そのようなことは…」

「任官を決めるのは麿まろぞ、義経、今日から判官ほうがんじゃ」


――鎌倉

「なんと!義経め!勝手に任官を受けたとな!」

「殿…これは罰せねばなりませぬぞ!功もないうえ、勝手に任官を受けるなどあってはならぬこと」

北条(恐妻)政子…言葉と裏腹に愉快といった表情を隠せぬ陰湿な女帝であった。


義経は激しい叱責を受け、平家追討の任も外された。

「余は嫌な予感がしたんだよ~」

ヒックヒック泣いている義経である。

ベン・ケーがオロオロしながら、猫で義経を慰めようと奮闘中である。

「ハッキリしたじゃねえか殿」

三郎がキレ気味の面持おももちで義経に話しかける。

「謀反でも起こさせようって腹じゃねぇのか?鎌倉殿は!」

「バカなことを口にするな!」

忠信ただのぶが三郎をいさめるが、その表情は三郎に負けないキレっぷりである。

頼朝よりともの底意がわかったじゃないの~帰ろう~奥州へ」

嗣信つぐのぶは心底嫌になったって顔をしている。

「どうすれば良かったというのじゃ~!」


その頃、範頼のりよりが平家追討の任を受け九州へ向かっていた。

しかし、知盛とももりの策にハマり、周防すおうの国に完全に閉じ込められていた。

この大苦境を打開すべく、鎌倉がだした決断は…まさかの義経投入である。

結果だけ見れば…常勝の将、苦々しくも、他の物で勝てる気がしない頼朝よりともの本音だ。


出発したはいいが、船もロクに揃わない源氏で九州で戦になるのだろうか?

なるわけないのである。

(船を揃えないとな~)

ぼんやりと考えながら、馬に揺られる義経。

「ダイジョウブ Boy? キモチワルイノ?」

乗り物酔いを気にするベン・ケー。

そう自身も船酔いに悩んだ経験から、乗り物酔いの辛さは知っている。

「コレ、カムトイイネ」

なにやら葉っぱを差し出すベン・ケー。

ボーッと言われるままに口に含む義経…。

(にげぇ…)


少数の船しか持たない義経であったが、奇襲により平家を海へ追いやるのだが…。

いかんせん、そこまでである。

海に出られると、手出しが出来ない。

そんな折、海岸で平氏と対峙していた義経に教経のりつねが放った弓が襲う。

「殿!」

ドスッ!

嗣信つぐのぶ!」

嗣信つぐのぶが馬上から身を投げ義経を庇う。

「ぼーっとしてんじゃないわよ…」

「大事ないか?」

「あ~、傷が残ったら嫌ね~…責任取りなさいよ…ね……」

嗣信つぐのぶ……嗣信つぐのぶ――!」


「義経、家人に救われたな!次は必ず…射抜いてみせる!命預けたぞ!」

教経のりつねは、平家は退いた…。


忠信ただのぶ…すまぬ…」

「なんの、兄上は死なぬ…」

詫びる義経…そもそも討たれたのは、自身の弓を海へ流したことに気を取られたからだ。

「すまぬ…詫びる以外ない…」

「奥州へ返したぜ」

三郎が顔を出す。

(死なねぇよ…死なせねぇよ…)

密かに唇を噛む三郎であった。


義経は頭を悩ませていた。

「ダイジョウブ Boy? アタマイタイノ?」

「コレ、カムトイイネ」

(にげぇ…)

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