第12話 馬鹿は4つ足

「生田の森の陣の裏を突く、これが義経の策…三草山には兵二千を向ける、そして敗れよ…」

「はっ?」

「敗れて良い…そして夢ノ口にて兵五千、教経のりつね!ここで義経を討て」

「そして、一ノ谷には帝の守護、もっともここに源氏は来れぬがな」

「私は生田の森で兵一万で大手の相手をしよう」

知将 知盛とももり 必勝の策をもって義経を源氏を迎え撃つ気である。


三草山。

「思うたより…弱い…あっさり退いたな」

三郎が首を傾げる。

ベン・ケーの高笑いが木霊する三草山でありました。

HAHAHAHAHAHAHA!


「九郎殿!」

「これは土肥とひ殿…どうされた?」

「このまま、夢ノ口へ出るとか?」

「いかにも、生田の森の陣の裏を突くつもりです」

「結構!大手の軍とはさみ打ちになりますな」

「ええ、それともうひとつ…策があります」

土肥とひ殿は、このまま夢ノ口へ行かれよ」

「義経殿はどうされるので?」

「一ノ谷に奇襲をかけます!」

「はっ?」

「夢ノ口に兵が潜んでいなければよいが…策が読まれれば、必ず夢ノ口に兵は置くはず、土肥とひ殿は二千の兵をそのまま進めていただきたい」

「しかし、義経殿…どうされるので…」

「兵は百騎程で構いませぬ!」

義経の後ろで三郎と忠信ただのぶがフッと笑う。



そして…。

生田の森、大手 範頼のりより軍 と 知将 知盛とももり軍がぶつかる。

範頼のりより軍は完全に押されていた。

「だから勝てぬと言うたのに…義経めー」

梶原景時かじわらかげときが馬上で叫ぶ。


夢ノ口…。

土肥とひ軍は平家最強 教経のりつね軍とぶつかるのである。

「われは、能登守のとのかみ 平教経たいらののりつねなり!源義経みなもとのよしつね!一騎打ちを所望いたす!」

(義経殿の不安が的中したか…)

土肥実平とひさねひらが唇を噛む。

「義経どこじゃ!」

狂ったように太刀を振り回す教経のりつねを止めらずに、完全に劣勢の平家 土肥とひ軍。

「勝てぬ…すまん義経殿…」


平家、完全劣勢。

そして義経は、一ノ谷の城を見下ろす断崖絶壁の上にいた。

「着いてみれば…なるほど難攻不落」

嗣信つぐのぶが天を仰ぐ。

「兄者…口を慎め」

忠信ただのぶがいさめる。

馬上の義経…想像を超える絶壁ぶりにちょっと後悔していたのだ。

(断崖絶壁って…ここまでとはね…まさかの垂直ぶりだよコレ)

なんなら泣きそうである。

その表情から、忠信ただのぶは悟ったのである。

義経の気持ちをあざ笑うように鹿が軽々と跳ねて降りていく。

(鹿になりたい…)

義経の頬を涙がツツーと流れる。


どよ~んとした空気が重くのしかかる義経軍。

空気を変えるべく、三郎が

「伊勢三郎 参る」

(えっ?)

一同の視線が三郎に注がれる。

「なんの佐藤忠信さとうただのぶが先陣仕る!」

(おっ!)

「ちょっと、忠信ただのぶマジ?」

小声で嗣信つぐのぶが聞く

「こうでも言わぬと、誰も降りぬ…」

「アンタ馬鹿ね~」


「いや、この源九郎義経みなもとのくろうよしつねが参る!」

「どうぞ!どうぞ!」

お約束であった…。


先頭でゴクリと唾を飲む義経。

「鹿も降りれるのじゃ…馬が降りれぬ道理は無い!…と思う」

最後の「思う」は大分小声である。


「オリレバイイノ?Boy」

振り返ればベン・ケーが馬から降りて立っていた。

ベン・ケーは自分の馬を、崖に放り投げた。

(はっ?)

転がりながらも馬は見事に降りきったのである。

「デキルヨ!」

HAHAHAHAHAHAHA!

ベン・ケーは手当りしだい馬の尻を思い切り叩きだす。

パーン!ヒヒーン! パーン!ヒヒーン!

悪夢のような光景である。

断崖絶壁を必死で降りる馬、いや落ちる馬。

その馬上でしがみ付く武者…、落ちる武者…。

阿鼻叫喚の叫び声。


いつの間にか三郎達も、崖の中腹部で必死の形相である。

最後にポツーンと残された義経…。

義経を肩車したベン・ケー。

もはや、硬直して身体が動かない義経。

「Go! Boy Rock'n Roll ロックンロール!!!!!!!!!」

ベン・ケーが勢いよく


一ノ谷の城は、空から馬と武者、そして黒い筋肉ダルマによって、アッという間に


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る