第10話 旭将軍と巴御前

「Boy スゴロク シマショウ ベン・ケー マケナイヨ」

「ほう、自信があるようじゃの~」


「ツギ、シックス ダシマス!」

コロンと転がるサイコロ……六である。


「スリー デマス!」

三である。


「ぐぬぬぬ……やるではないか……」

ベン・ケーに負けっぱなしの義経。

それを忠信ただのぶが口を押えながら笑いを堪えて眺めている。

「なにか怪しいの……サイコロを見せい!」

「No!Boy!」

でかい手の中から、サイコロが6個、コロンと落ちた。

「これはなんじゃ?」

「殿、余興ですよ、余興!」

忠信ただのぶが割ってはいる。

サイコロの目は全部、同じ数字が刻まれている、六面全部1~6まで計6個のインチキサイコロである。

HAHAHAHAHAHA!


「ときに、嗣信つぐのぶと三郎はどうしたのじゃ?」

「兄者は、また……」

「皆まで言うな!聞きとうない、三郎は?」

「三郎殿は、梶原殿と軍議でござる」

「余は聞いておらぬが……」

「殿……立場がござりませぬな~」

HAHAHAHAHAHA!


「殿、明日、京に行くぜ!」

「左様か……」

若干のスネ気味の義経である。

「兵は5百……勝ち目薄いぜ~、というか無理だ」

「畠山殿は?重忠しげただ様は一緒なの?」

「あぁ、一応参加してくれるそうだ」

「そう♪、じゃあアタシはソレでいいわ」

「で、策がいる……梶原は殿を勝たせる気が無い……というか頼朝よりともに無いと言ったほうがいいだろう」

「三郎!言葉を選べ」

忠信ただのぶが三郎を制す。

「なんの!なにが悪かろう!このやりよう、殿を捨て駒に使ったんだぞ、大手(主力)は5千!殿は5百だ」

「言うな!三郎」

義経が声を荒げた。

一同、義経を見る……めっちゃ泣いていた、シクシク泣いていた。

「みんなに嫌われてる気がする~」

「Boy……ミー ファミリーヨ」

「そうだ!だから策がいるんだ!正攻法じゃ勝てねぇ……」


――翌朝

「時が勝負じゃ!急げ!」

義経一行は、先頭を譲らぬ騎乗を見せていた。

その移動速度に、かちはおろか、騎馬すら脱落するものがでるほどである。

「よ、義経殿、童猪わっぱいのししも大概にせよ!」

梶原景時が義経を制すが、義経は聞かない。

「空に月があるうちに宇治川へ、木曾兵を夜明けと同時に叩く!」

奇襲しか手はない。

一行の立てた策である。


たつこく(午前7時~8時)

矢合わせの鏑矢かぶらやが放たれた。


畠山重忠はたけやましげただ瀬踏せぶみ仕る!」

最初に飛び出したのは、嗣信つぐのぶの思い人、畠山重忠はたけやましげただその人であった。

「いや~ん♪かっこいい♪」

「お前も行けよ!嗣信つぐのぶ!」

三郎が激を飛ばす。


「ここで止まるな!目指すは御所だ!続けよ!」

三郎とベン・ケーが義経に続く

嗣信つぐのぶ忠信ただのぶ!殿の道を作れ!」



「義経が京に入ったのか?」

「はっ!大手に気を取られたが敗因か……搦手からめてにしてやられたな」

「ふっはっははは、顔を見に行くぞ!いとこの、この俺を出し抜いた男の!」

義仲よしなか出陣。


京の端から、騎馬が迫る。

迎えるは、旭将軍あさひしょうぐん 木曾義仲きそよしなか、従者は巴御前ともえごぜんたった2騎。


「九郎 義経!一騎討ちを所望いたす!」

刀を振りかぶる義仲よしなか

「なんの!伊勢三郎いせさぶろうがお相手致す!」

「下れ、下郎!殿は一騎討ちを所望じゃ!下人の相手など、このともえが務める」

飛び出した三郎を、巴御前ともえごぜん薙刀なぎなたの切っ先が制す。

「よい!手を出すな!」

義経が、スラリ太刀を抜く、騎乗で睨み合う両者、気迫では後れを取らない義経だが、太刀での技量では遥かに劣る。

(殿……ダメだ……義仲よしなかは強い……)


「いざ……尋常に……勝負!」

馬が走ると同時に、義仲よしなかが騎乗から転がり落ちた……。


「ファミリー ケンカ ダメ!」

義経の後方から、ベン・ケーがブンッと投げた薙刀の義仲よしなかの額にスコーンとHITしたのだ。


「Boy Shed tearsシッド ティア~ズ(泣いている) タタカワナクテイイヨ」


義経は、めっちゃ泣いていた、シクシク泣いていた。

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