第五十七話 武田信玄はロリコン

 幸隆ゆきたかは、晴信はるのぶが新たに用意した真田さなだの正規兵が待っている原っぱへとむかった。すると、そこには千を超す兵士たちがひしめき合っていた。大勢いる兵士の中から一人の男が幸隆へ近づくのであった。

 

 「よう、幸隆」


 「よう、十兵衛」


 その兵士は板垣信方をハメるのに幸隆に協力した筧十兵衛であった。それ以外の兵士も見覚えがある。皆、板垣を追い詰めるのに協力した者ばかりであった。十兵衛はニッコリと笑うと「今日から俺達が、真田の正規兵だからよろしくな。ピーピーうるさい小笠原おがさわらの軍をとっちめに行くぞ」と大声をあげた。

 幸隆も続けて「今後とも、よろしくな。じゃあ、真田隊、いざ出陣だぜ!!」と声を張り上げた。

 

 幸隆たち武田軍は兵を進め、数日後の夜、塩尻峠しおじりとうげという場所についた。つくやいなや、武田の将兵は勘助かんすけの指示のもと陣を敷いた。

 そして、明くる日の朝、幸隆は峠の先端の絶壁で立ちションをするのであった。


 「ん!?」


 幸隆は絶壁の下を見て驚き、すぐさま陣にあるイスに座ってる勘助に「勘助、アイツら、なんで踊り狂ってんだ」と尋ねる。

 勘助は、なにを今更という顔をしたあと「アイツらは、アッシらが攻撃しないのをわかってるぞぃ。」と途方もなく苦笑いした。

 

 「あ、なんでだ?」

 

 勘助はハハハハと笑ってから「どうやら、アッシらが進軍最中に板垣の旧臣たちが謀反を起こして諏訪姫すわひめを拉致したらしいぞぃ。そんで、奴ら、諏訪姫をエサに小笠原にくみしたらしいぞぃ」と言った。

 

 「晴信がガチ惚れしてる諏訪姫か?」

 

 勘助はあーあという顔をして「そうだぞぃ。変に、今、敵方を攻撃して勝っても、人質の諏訪姫が殺されれば。甲斐に帰ったらアッシたちが晴信様に殺されること間違いなしだぞぃ。切腹だぞぃ。」と言うのであった。

 幸隆は首をかしげ「晴信様は、なぜ、そんなにゾッコンなんだ?」と尋ねた。

 勘助は真っ直ぐな目で「諏訪姫の顔が幼顔だからだぞぃ。しかも、晴信より年下だぞぃ。声も高くてカワイイぞぃ。」言うのであった。

 幸隆はアゴがハズレながら「アイツは、あんなジャガイモみたいな顔して、そういう趣味か?笑える、ウケル、ギャハハハハハ。諏訪姫の顔見てぇ。なめ回すように。バカにしながら!!!クソみるみたいに!!童顔好きの殿様に思いを馳せながら」と手拍子しながら笑った。その顔は、まさに悪鬼であった。

 勘助はブサイクな顔をさらにブサイクにさせて「その遊び、アッシも加えさせて!!」と笑うのであった。


 そう、武田信玄は今でいうところのロリコンだったのである。

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