第七章 姫君を救え

第五十五話 新たなる戦い

 梅雨が明けて初夏。真田さなだ夫婦は自身たちの館で将棋を競っていた。


「……勝った」


「ボケ、嫁が。」


「……なによ」


 幸隆ゆきたかは悔しさで、少し顔を赤くしながら「挟み将棋で俺に勝ったぐらいで調子ブッコクな、ボケが。」と言うのであった。

 キョウはニヤリと珍しくヤンチャな顔をして「……負け惜しみカッコ悪い。これじゃ村上に、いつまでたっても勝てないわよ。……ボケが」と最後に幸隆の声をマネしながら言った。

 幸隆は、痛いところをつかれ「いつになく、挑発的じゃねぇかよ。……チンピラ野郎」と渋柿より渋い声をだした。

 キョウはかなりのエッヘン顔をしたあと「……当たり前よ。村上って、幸隆の父上の仇なんでしょ?」と幸隆に尋ねる。

 幸隆はキョウに影響されたのか小さな声で「……そうだが。」と返答する。

 すると、キョウは、怖くなるほどのメッチャ真顔で「こんな、遊びにすら言い訳してたら勝てるものも勝てなくなっちゃうわよ。」と言い放った。

 幸隆は幸隆で、キョウの声真似をして「……うるせぇぞ。……ボケ嫁め。……………地獄に落ちろ。」と最後にキョウに聞こえるか聞こえないか分からない声で地獄に落ちろと言うのであった。

 キョウは少し怪訝な顔をして「……え!?今、なんて言った?」と聞き返した。

 すると、そのとき屋敷の玄関から「幸隆殿!!アッシだぞぃ!!勘助だぞぃ!!」と山本勘助やまもとかんすけの無駄に大きく、やかましい声が聞こえてきた。

 幸隆は、キョウを置いて、玄関へスタスタと走っていき、玄関につくと「うるせぇぞ、ブタヅラブサイク。」と勘助に暴言をあびせた。

 勘助は嬉しそうに「だれの顔がフン転がしフンみたいな顔だぞぃ」と舞を踊った。

 それにイラッとした幸隆は「ボケ、フン転がしに失礼だろ。この超絶汚ねぇ、ブサイク野郎!!クタバレカス!!」と、これでもかと暴言を並べた。

 さすがの勘助も、これには傷ついたのか「幸隆殿。それは言い過ぎだぞぃ」と少し、声の抑揚を落として言うのであった。

 幸隆は「ごめんな、ブサイク。」と謝る気がないのに謝った。

 勘助は、無駄にムカツク変顔をかましたあと「幸隆殿!!心がこもってないぞぃ!!」と言い放つ。

 幸隆は少し、面倒くさくなり「はい、はい、はい、要件は?」と勘助に尋ねる。


「今すぐ、佐太夫を連れて躑躅ヶ崎館までくるぞぃ。また戦争が始まるぞぃ。」

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