第四十七話 晴信の作戦。
大きな、いかにも王様が使ってそうなイスに座る晴信は、イラついた顔で「……あ、なめてんのか?」と彼に尋ねたのであった。
幸隆はあたりめぇだろという顔をしたあと「おいデブ。俺は大マジだぞ。」と高らかに言った。
晴信は不信そうに「……そうか。」と独り言のように小さな声をあげた。
そのあとのことだった。幸隆はブッキラボウに「何だテメェ、その顔は!!」と怒鳴り声をあげるのであった。ほぼほぼギャクギレである。
晴信は、不信そうな顔を続けて「貴様は、俺を裏切るか?」と幸隆に尋ねた。
幸隆は少しばかし動揺した様子で「なに言ってんだ??」と晴信に返事をした。
晴信は「その顔は裏切らなそうだな。板垣の家来が、貴様の屋敷に子を返してほしかったら裏切るように使者がくるはずだ。裏切ったフリをしろ。」と言って意地悪くニヤリと笑った。
幸隆は気が抜けたように「おう。」と言うのであった。
晴信は幸隆をニラムように見ると「実は板垣に誘われて、板垣と俺とで村上と戦うことが決まっている。ちなみに村上義清は、そんなに強いのか?」と尋ねる。
幸隆は苦虫を噛み潰したような顔をして「強い。」と言うのであった。
晴信はまたしてもニヤリとすると「そいつを利用して板垣を、ハメ殺すぞ。」と言った。
幸隆は、突然の急展開に驚きつつ「で、どうするんだ?」晴信に尋ねる。
「次の村上の戦い。俺たちは静観する。俺たちが何もしない間に村上に板垣を討たせる。貴様は、板垣のところへ潜りこんで離反者を、できるだけ多くださせろ」
それから、数日後。幸隆は板垣の使者の要請を受けて彼の屋敷を訪れた。屋敷は晴信の本拠である躑躅ヶ崎館と大差ないほど大きなものであった。
幸隆が板垣の部屋に着くと、晴信以上に大きなイスに座った板垣の姿があった。彼は「アチキの元へ来てくれてありがとう。幸隆殿。土下座しろ。」と目を合わせたばかりとは思えない。かなり横暴な言い方をした。
幸隆は一瞬戸惑ったが、すぐさま「ははあー」と言って土下座した。
板垣は目の前で土下座している幸隆をマジマジと見て「さっきから土下座しながら、震えておる。アチキの威光に震えてるのか」と尋ねるのであった。
幸隆はイライラが爆発しそうだったが「……はい」とだけ返事をする。
その返事を受けて板垣はご満悦な表情をした。
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