第四十一話 度胸試し
そんな、ある日のことだった。
幸隆はほんの少し意地悪く笑うと、晴信に「なんだ??ボケが。度胸試しかよ。だったらそれはテメェの負けだ。」とキッパリと言うのであった。
すると、晴信は笑い返して「貴様に兵士千五百人を預ける。精々、昔の仲間を殺しまくってくれ。」とこちらは低く、こもった嫌味たっぷりな声で言った。
幸隆は晴信をにらみつけて「必ずや手柄をあげてやるからな。デブドラが。」声をたぎらせた。
それに対して、冷たく、見下すように「貴様、手柄あげれなかったら、武田を辞めろ。虫ケラのガリガリめ。」と晴信は淡々とた表情をした。
次の日。幸隆は武功をあげるべく上野の地へとむかう。幸隆率いる千五百の兵は志賀城を包囲した。
陣地の建物の中で幸隆は「暇だぞ、ボケ。」と椅子にもたれて、死にかけのトカゲのようにぐったりしていた。このとき城を包囲して十日はたっている。
一方、
それを聞いた幸隆は「ザケンナ、ボケ!!佐太夫。それでも、俺の相棒かよ。」と番犬さながらの大声を張り上げた。
すると、幸隆の横をズバッと矢が飛んできて、佐太夫に刺さりかけた。彼は、それを避けると「おーい!?今、俺を殺そうとしたろ???」とさっきの優雅な猫から打って変わって暴れ狂う犬のように幸隆に詰め寄った。
幸隆は「うるせぇボケチビ!!」と大声を張り上げた。それが原因で、スッテンコロリンと佐太夫は転倒してしまった。
幸隆はニヤリと笑うと「お、やっときたか。」と佐太夫の命を奪いかけた矢にくくられてる紙を広げた。紙を見た瞬間、幸隆はさらに顔をニヤけさせ、鬼畜のようになるのであった。
幸隆の鬼畜顔に驚いた佐太夫は目を、いつものように目を丸くして「どうしたってんだ幸隆?」と彼に尋ねた。
幸隆はガラの悪い表情をたもった状態で「どうしたも、こうしたもあるか。偵察隊からの吉報だ。佐太夫、兵士を百騎ほど集めてこい。」と佐太夫に命令をくだすのであった。
佐太夫は「うっす。」と敬礼。
そして、幸隆は最後に「あの森のなかに奇襲部隊が潜んでる。奇襲される前に、こっちから奇襲してやる。佐太夫、かつての仲間だからって手は抜くなよ、ボケ。ボコボコにしてやれ」と神妙な面持ちで言った……
こののち、佐太夫は敵の奇襲部隊を返り討ちにし、援軍がこないとわかった志賀城の兵士も降伏した。武田軍を幸隆が勝利に導いたのであった。これから真田幸隆は、武田方の将として躍動することになる。
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