第五章 新たな出会い
第三十九話 武田信玄、登場。
すると、それを見た
その光景を少し距離をとって見ていたキョウは「……あの二人、微笑ましいわね。」と言って、かつての幸隆と自分との関係を思い出して苦笑いした。
彼女の隣にいた幸隆は「キョウ、なんだ、その懐かしそうな目は。」とキョウの隣にいるとは思えないほど遠い目で見つめながら語りかけた。
キョウは幸隆の目線を外すと「……別に。」と答えた。
そんな二人の心情を知ってか、知らずか千代女はハツラツとした声で「さぁ、武田晴信が待ってるよ」と声を張ると一番先に躑躅ヶ崎館にはいっていった。その次に佐太夫。そのあとから幸隆とキョウの夫婦が入っていった。
四人は館に入り、とある一室に入ると猛々しい鋭い虎の如き目をした岩石のような体格をした男が一人座っていた。その男こそが
幸隆は、とりあえず「そうです。」と答えてみた。
晴信は、肩の力を抜くような素振りをみせたあと「貴様は血が怖い、腰抜けらしいじゃないか。」と言って、鼻息を荒くして笑うのだった。
「……」
晴信は畳み掛けるように「貴様、先の大事な戦いでも、腰抜け、さらしたらしいな?」となおも罵声を浴びせた。
「……く」
晴信は、これでもかっていうほどにイヤらしい顔になり「何も、言い返せないか、腰抜け。通りで俺が簡単に倒した、
幸隆が怒りのあまり「テェンメェエエ!!」といいかけた、そのときだった。
キョウが横からサラリと「……アナタ、女にモテないでしょ。」と鋭い小声でしゃべりだした。
晴信は驚き「ん!?」という間抜けな声をあげた。このとき、虎のような顔が、一瞬子猫のようになった。
キョウは、小さな声で「顔は不細工だし、立場が上だということを利用して暴言ばかり、おまけに不潔そうな着物きてる」と胸に刺さる言葉を短刀を投げるように晴信に浴びせ続けるのであった。
その瞬間だった。晴信の子猫のような顔は一転し、虎の化け物のような顔をしたあと「言いたいことは、それだけか!!クソ女!!!」とドデカイ声をあげた。
「……あと、政略結婚で救われましたね。制度に感謝にしろよ。」
このときの、キョウの顔はひきつった笑顔だった。
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