第十八話 『真田幸隆』を成敗する会

 それから半年後。幸隆ゆきたかはキョウとイチャつくようになり、彼は佐太夫さだゆうにかまわなくなっていた。佐太夫が城の門の日陰で寂しそうに立っていると「やあ、佐太夫。佐太夫じゃないか。」と言葉遣いは上品だけど中身がともなってない奴を地で行ってる喋り方をする者が彼に話しかけた。

 佐太夫は驚き「オッス。お前は誰だ!?」と彼に尋ねた。

 その上品もどきは「失礼な。」と失笑する。

 そのあとすぐ、佐太夫はハッとした顔をすると「思い出した。成績がぱっとしない甘粕景持あまかすかげもちだ!!」とまあまあな失礼発言をお見舞いした。

 景持は真顔で「そ、それは失礼すぎだ。」と言った。しかし、真顔であったが内心は非常に傷ついてそうであった。

 佐太夫はそれを察して「ゴメン。......許してくれ。」と深々と頭をさげる。

 そして、景持はニヤリと意地悪い顔をして「よかろう。僕の話を聞いてくれたら、許してやろう。佐太夫は、今の真田幸隆さなだゆきたかをどう思う?」と佐太夫に尋ねた。

 その質問をうけて思うところのある佐太夫は怒った口調になり「最近の幸隆は調子のりすぎだ。キョウと付き合いだしてから、俺をかまってくれない!!。」と子供のように地団太を踏んだ。

 すると、景持もなぜか怒りが最高潮に達して「それでいて!!奴の成績は俺よりイイ。そのうえトラにも迫る勢いだ。」とその一見マジメそうな顔をゆがませた。

 佐太夫は地面を何度も激しく踏みつけて「あんな奴。さっさと天罰がくだればいいんだ。」と大声をあげた。

 景持は微笑を浮かべて「奇遇だね。実は、それを僕も思っていたんだ。佐太夫、僕と手をくもう。幸隆とキョウは僕たちの力で別れさせるんだ。まずはキョウなみ、それ以上のカワイイ娘をかき集めるんだ。そして、女遊びをする幸隆をキョウに見せつける。物事を悲観的に考える癖があるキョウは、その光景を見て自信を喪失。見事二人を別れ成功という訳だ。」とクックックと笑うのであった。

 その光景を見て佐太夫はニコっと笑い「おもしろい作戦!!。でも、作戦が終わったら、俺に話かけるなよ。俺は嫉妬深い奴嫌いなんだからな。」とそよ風で吹いたかと勘違いするほどサラっと言った。

 景持はツバを飲み込み、少し考えたあと「......ちょっと寂しいが、いいぞ。」と寂しそうに言うのであった。

 佐太夫は町で景持の指示を受けて「お前、美人だなツラ貸せよ!!」的な感じで娘を集めていた。しかし、当たり前だが一人も娘も集められないでいた。

 佐太夫が苦戦していると、なんと、そこへ幸隆が通りかかり「テメェ、なんつう口説き方してんだよ。いくらなんでもボケすぎるだろうよ」とその鋭い目を蹴鞠かと思うほどに丸くした。

 すると、佐太夫は誤魔化すように「......幸隆。じゃあな」とその場を立ち去ろうとするのであった。

 幸隆は当たり前のように「おい佐太夫。今、隠し事したよな?」とサラっと佐太夫を問いただした。

 佐太夫はバレたことに動揺して「な、な、なななななんで気づいた。」としどろもどろになっていた。

 そこをすかさず幸隆は「ほら、気づいたって言った。」と、さらに佐太夫に詰め寄るのである。

 佐太夫は真顔で「俺は何も隠していない。」と言った。真顔といっても、口元はピクピク動いている。

 すると、幸隆は悪魔のような微笑をうかべて「ほら、テメェの大好きな、甘い菓子だ。」と両手一杯の菓子を佐太夫にみせびらかした。

 菓子を見た佐太夫は「ありがとう。実は景持と一緒に、幸隆のことを罠にハメようとしてたんだ!!」といとも簡単に景持のことバラしてしまう。

 幸隆は佐太夫にまあまあ激しめのデコピンをくらわし、うずくまる佐太夫をよそに「クタバレ、ボケ野郎!!。俺は、今からキョウと遊ぶ」と言って、その場をあとにした。

 ちなみに、このあと景持は幸隆の罠にかかり鳥のフンまみれになる。

 次の日、景持は町の焼き鳥の店に佐太夫を誘い反省会をした。景持は怒鳴って「なに、バラしてんだ!!バカ!!!。使えねぇな!!!。あのあと僕は幸隆に襲われて鳥のフンまみれになったんだ...」と荒れ狂っていた。そして、鳥のフンまみれになった男が鳥を食うという異常な状況が展開されていた。

 佐太夫はその異常な状況の中シュンとして「...スミマセン 。」と言うのであった。

 景持はさっきまでと表情を変えて優しい顔になり「仕方ない、僕は、僕で美女を一人捕まえた。バカと違ってね。きた、きた。」と一人の娘を出迎えた。

 景持の横に娘が座ると彼女は「私、千代女、よろしくね。」と佐太夫に自己紹介した。


こののち千代女と佐太夫は恋仲となることは言うまでもない。

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