第十二話 関東管領の脅威

 一方その頃、すっかり快晴となった空をウットリとみながら海野幸義うんのゆきよしは城の縁側で寝そべり、ゴロゴロと太った体を揺らして「ワレの一日は災難続きだ。塩まみれにされるわ。塩まみれにされるわ。塩まみれにされるわ。塩まみれにされるわ。最悪にもほどがある。まさに地獄だった。」と悟りでも開いたかのようにボヤいていた。

 そんななか、海野家の家来の一人が伝言をしに屋敷の敷地を走り縁側の幸義のとことまでかけより「幸義さま、大変です源心様が武田との戦いで討ち死にしました。」と悲報を届けた。

 驚いても大して大きくならない目を大きくした幸義はあわてふためき「ぷぷぷ。そんなバカな。源心が!?貴様、それは本当???それが本当なら武威が失墜した小県に誰か攻めてくるかも...」とゾッとした顔をした。

 そんなとき、またしても家来が伝言を言いいに幸義のところまできて「幸義さま、これ見てください。」とお決まりの言葉を言うのであった。そして、その家来は矢を幸義に渡した。

 幸義もビビりながら「......今度はなんだ。ただの矢だろ。」と矢を受け取った。

 家来「矢にくくられている紙を見てもらいますか。」と矢の根元を指さした。

 紙を解くと文字が書かれていて名家である※関東管領をの家紋があしらわれていた。そして、その文を読むなり幸義は「ぎょえええええ!!」と叫び、化け物のように彼の目は半開きになってチカチカしていた。

 家来は幸義の驚きようを見て、驚き「幸義様。どうなさいました??」と幸義の体をさすった。

 幸義の目に生気が戻ると、途端に冷静になり、家来の胸倉をつかんで「平賀源心の死をうけて、海野なんか余裕で倒せると思った関東管領の軍が攻めてくる。父上に伝令!!。早く人質を立てなくちゃ。......奴らに海野が滅ぼされてしまうぞ。人質は真田幸隆で!!」と言うと、すぐさま家来に幸義の父の海野棟綱のもとへよこした。


※関東管領 室町時代に幕府が関東統治のため設置した鎌倉府の長官である鎌倉公 方(かまくらくぼう)を補佐するために設置した役職名。任命権が足利幕府・将 軍にあるので、当時は権威のある役職だった。


 次の日の朝。真田幸隆さなだゆきたかは久しぶりに自身の小屋に行き、幸隆はルンルン気分で書物を読みあさった。ルンルン気分の理由は佐太夫さだゆうに言われた「俺はお前の最強の刀になる!!!」という発言が、とても嬉しかったからだ。

 すると、幸隆の弟の頼綱よりつなが小屋の扉をガタっと開けて「おい。腰抜け小屋のクソ住人の真田幸隆。」と怒りながら入ってきた。

 幸隆はニッコリとマブしい笑顔で「なんだ、童貞のボケ弟か。」と言い返した。

 その返答にイライラしながら、頼綱は歯切れの悪い早口で「相変わらず、口が悪いな。武士の恥。」とボソボソ言うと幸隆に近づいた。

 幸隆はなおも笑い続けて「なんだよ、武士の恥って失礼だな。」と言うのであった。

 頼綱は肩をスタった落とし「なんで、もっとマジメに生きなかったんだよ!!」と言うと、うっすらと涙を浮かべた。

 幸隆は頼綱の異変に気づき「なんだ?」と彼に尋ねる。

 すると、頼綱は唐突に「こい!!腰抜け小屋に別れを告げろ。明日からアンタは上野で人質生活だ。」と言った。

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