第15話 Happiness 幸福というもの 加筆修正有2021.2.26/12.26
15.
" Idol アイドル "
バツイチ年増の女性と思い、引っ掛けてやろうとしてくるような
嫌らしさを絵に描いたような男性が多くいる中で、設樂課長は私の中で
別格だったけれど、私が見て感じる姿がじゃあ、ほんとにほんとの
理想とする家庭人なのかと問われれば、それは又別の話かな・・なんて
思ってた。
だってプライベートな部分は何も判らなかったから。
泥の中に咲いた一輪の蓮、この人の部下として働けて私は
恵まれているのだなと、改めて実感した。
「私もね、慎一さんとのことぜひ考えてみてほしいと思ってるの。
慎一さんと夫は性格は違うけれど根が真面目な所は同じだと思ってるの。
私は設樂家に黒崎さんが嫁いで来て下さったら・・もうwelcome welcomeだわぁ~!!」
奥さんとご両親達が、ぜひ考えてやっていただけませんか
と言って下さった。
ご両親からは慎一さんの出身大学や勤めている会社のこと、小さな頃の
慎一さんと課長との楽しいエピソードなんかも話していただいた。
浮ついた男性が多い中で今の彼らを形成したのはしっかりと
地に足のついたこのご両親に慈しみ愛されて育ったことが大きいのだろう。
2021.10.3-14/19
15-2.
「皆さんからそのように言っていただいて、本当にうれしいです。
ですが、肝心のご本人がどう思われているか、それとおそらくですが
わたくしの方が年上かもしれません」
年上のこともだけど、もっと私には言いにくい過去があるのだ。
「2年前に転属になってこちらに来られた課長はご存知ない
かもしれませんが実は私、バツイチなんです。
25才で結婚30才で元夫とはお別れしました。
それからはずっと7年間独りできました」
バツイチと言わなければならないことは、結構きついものがあり
続けるべき次の言葉がなかなか出て来なかった。
「離婚の理由は聞かなくていいですか?」
と聞いた戸惑いを隠せない私に・・設樂課長、奥さん、ご両親、素敵で
普通の善良な人達は
「誰だって人生長く生きていれば、話したくないことや胸に
秘めておきたい思い出はあるものだから、話したくなった時
に聞かせて貰えればいいのよ」
と言って下さった。
私はそんなご両親達だから、簡単なことしか話せなかったけれど
元夫に借金癖があったことを告白した。
やさしい夫だったけれど借金の大きさに怯み、彼と一緒にいることが
できなかったと。
15-3.
「好きな人と別れるのはつらかったでしょうね。
うちの慎一は欠点もあるけどあまり贅沢をするような子じゃないし
ギャンブルもしないから安心してね。
前の奥さんには浮気されちゃったけど、最後まで慎一と別れたくないって
泣いてたくらいだから、寂しくてつい他の男性の所へフラフラっと一瞬
よろめいちゃっただけで、ひかるチャンはずっと慎一のことが好きだった
みたいでね。
ひかるチャンが頑として慎一と別れないって言い張って・・そんな中
浮気相手がしゃしゃり出て来るわで、ほんとに最後までグダグダで慎一が
可哀想だったのよ!」
とお母さんから慎一さんの元奥さんのお話を聞かされた。
前の職場では慎一さんが激務で、元奥さんはその寂しさに負けて
元彼と遊び、子供ができてしまったのだとか。
浮気だけだったなら慎一さんは彼女を許し再構築しようと考えていた
のだけれど、そんな矢先に元奥さんの妊娠発覚。
元奥さんは中絶してでも慎一さんとやり直したいと、最後まで離婚に
難色を示していたけれど、元奥さん有責なので離婚はすんなりと
決まったそう。
やさしい慎一さんも流石に他所の男の子供を宿している妻(ひと)とは
暮らしていく自信がないと、泣く泣く離婚に踏み切ったと聞いた。
2021.10.4-13/10
15-4.
「私達もねひかるチャンやそのお腹の子のことを考えて
ひかるチャンには恨まれるかもしれないけど、お腹の子の
父親とこれからの人生を歩いていったほうがいいと思って
ね。慎一の決断を後押ししたのよ。
幸い、浮気相手の男性がひかるチャンに本気だったのも幸いしたわね。
相手がただの遊びだったらと思うとぞっとするものがあるわ。
慎一もあなたもひとつのつらい別れがあったけれど、こうして出会えた
のも何かの縁。
新しい出会いで結ばれて幸せになってほしいわ。
皆で幸せになりましょう!」
そんな風に言って下さった。
「あ~なんだか私達多勢で結婚、結婚って口を揃えて交際を
申し込んでさぞかし吃驚しているでしょう?驚かせてごめんなさい」
とお母さんがおっしゃった。
次に設樂課長が話を続けた。
「前の結婚があんな風に終わったから慎一には幸せになって貰いたくて
焦ってるんだよ、僕ら。
人も家も・・って一緒にしてはいけないけど、いいって思ったらすごく
気に入ったものは、早く手に入れないとね。
特に僕はそう思っててね。
ところが君をクリスマスパーティに招待してからは僕以上に
両親や妻が君に魅了されてしまってね。
本人のいない所で大合唱のアプローチで吃驚してるだろう?」
「実を言うと、かなり驚いてます!」
「慎一はね、知らない人間が聞いたら気持ち悪がられるかも
しれないけど、僕達家族のアイドルみたいなもンなんだ。
身内のしかも男兄弟の僕が言うとよけいイヤらしいかもしれないけど
顔良し、お頭(ツム)良し、性格良しってこの性格がね
あの顔をつけてても、女子に対してすごく真面目な奴でね
かわいいヤツなんだ。
だからさ、僕のお気に入りの女性をぜひ慎一の奥さんに迎えたいんだ」
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