RAINBOW CHASER

白波の立つの波間の向こうに切り立った崖が見える。

この辺りは波も高く海流も複雑なの。例えベテランの船乗りであっても、小型の船で岸に寄せるのは難しいとされている。

そこにきてあの険しい断崖絶壁が切り立ち、やってくる者を阻んでいる。そのおかげもあり、こちらの方角からの侵入の可能性は低いと考えられているって訳。

あたしとROXYはアイコンタクトをすると、最も崖の高い方向へ舵を取った。

ROXYはあたしの背後に回り込み、一列縦隊を組んだ。

島の付近まで来たところで、海鳥が風に舞い上がって遊んでいるのが見えた。

当初の狙い通り、崖に沿ってうまい具合に上昇気流が吹き上げられている証拠だ。

あたしはROXYにハンドサインを送ると、パラシュートの紐を引っ張った。

そして、ROXYも後に続く。

気持ちいいくらいに強めの海風がふたりを舞い上げてくれた。

見慣れない人間の接近に警戒した海鳥がせわしく鳴き始めた。きっと巣が近いのだろう。

いい感じで崖を越えると、頂上付近の降りるのに都合のいい草叢に見えた。

あたしはROXYに2度目のハンドサインを送って降下場所を指し示し、彼女を先に行かせることにしバックアップに回った。

ROXYも頷いてサムアップする。

無事降下するまでは、気は緩められない。

しかしである。離陸まであと少しという所で、突然風向きが逆風に変わった。


「飛び降りるのよROXY!」

あたしがそう叫ぶと同時にROXYはパラシュートを外して飛び降り、ギリギリ頂上の際に着地する。

よし!

だが後方のあたしは間に合わない。

マズイ!このままじゃ海に吹き戻される!

そう覚悟した瞬間、ROXYの十八番の鞭が風を斬り裂いて、あたしの手首に絡み付いた。

引き戻され、危うく斜面の岩肌にしがみついたあたしをROXYが鞭ごと引っ張り上げてくれた。


「フゥー助かったわ。サンクス」

正直ふたりでなかったらヤバかった。ゴーグルを外し冷や汗を拭うと、あたしは彼女に礼を言った。


「ピンチの時はお互い様よ、CANDY」

まさかROXYが謙虚な返答を返してくるなんて!?不気味だわ。雹でも降らないといいんだけど・・・。でも、今は素直に感謝しておこう。



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