RAINBOW CHASER
「なら永遠に眠ってなさい!」
あたしは、身体をくるりと捻って反転すると、上昇気流に身を任せて浮かび上がった。
仮にもトレジャー・ハンターを名乗る冒険者たる者、二回めともなれば、風を操る位は朝飯前よ。
「冷たいわね~!」
ROXYが慌てて後を追ってついてくる。
彼女も言うだけのことはあって、それなりに経験は積んでいるようだ。
でも前回と違い、実は今度のダイブでは大きく異なる点があるの。
正体不明の敵の目を欺くために、ただ落下するだけではなく、このまま国境を越えてキューバへと潜入しなければならないのよね。
え?不正入国じゃないかって?ま、まあね。それがボスであるトリプルビルの命令なんだもの。例によって、潜入した後の準備は既に整えてくれてあるって訳。
そうして今あたしとROXYは、この不恰好なウイングスーツに身を包み、高度数千メートルの上空をムササビの様に滑空しているところ。
計画通りにことが進めば、あたし達はスカイフライングしたまま、国境警備の手薄なエリアから、悠々とボーダーラインを飛び越えられるはず。
そのためにも慎重に落下地点を見定めて飛行し続けなければならないわ。
理系女のあたしは垂直落下する重力加速度運動に、ウイングスーツによって生じる空気抵抗と揚力とを加えて計算し始めた。
その横でROXYはというと、先程あたしが投げつけたチョコレートをのんきにむしゃむしゃと食べている。
ちょっとそれ、別にあんたにあげるために投げたんじゃないんだからね!全く気が散るったらないわ。
いけないいけない。今は頭をグールダウンさせて、計算に全神経を集中させなくっちゃ!
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