RAINBOW CHASER
ふわっふわの綿菓子みたいな白い雲を斬り裂いて、旋回した飛行機が雲海を抜けると、遥か遠くの水平線まで続いていそうな雰囲気のオーバーシーズ・ハイウェイが見えてきた。
ってことは、この先はキーウエストね!
飛行機はそのままハイウェイ上をトレースするかの様に、低空飛行で飛び始めた。
おそらく初めてフロリダを訪れたあたしを観光案内代わりに楽しませてやろうという、会長の粋な計らいなのかも知れない。
あたしはちょっぴり嬉しくなった。
でもね、この程度の恩着せで飛行機から突き落とされた恨みは忘れやしないんだから!
しばらくの間ハイウェイ上空を優雅に滑空していると、照りつけていた太陽が雲隠れした途端、大粒の雨滴が二重窓を勢いよく叩きつけ始めた。
雷光が外を走り、小さな嵐が機体を小刻みに揺らすので、ヒヤヒヤさせられる。
でもそれもほんの束の間で、激しいスコールが通り止んだかと思うと、太陽のきざしがまばゆいハレーションを伴って戻ってくる。
目まぐるしい天候の変化に目をパチクリしてしまう。
今にも天上の音楽を奏でながら、雲間から射し込む金色に輝く光の梯子を伝って、美しい天使たちが舞い降りてきそうな瞬間だった。
昂奮度MAXのあたしが急いで後ろを振り返ると、隣のROXYはとても気持ちよさそうに爆睡していた。
今、叩き起こしたら彼女怒るかしら?
・・・まあいいか。ンフフとっておきの絶景を独り占めね。
さらにタイミングよく、ひたすら長く伸びるセブンマイル・ブリッジがその美しい姿を現した。
7000マイル近くも真っ直ぐと続く海上の道を見ていると、この先、世界の果てまでも行ける様な気がする。
最果ての水平線を眺め見ると、その向こう側に壮麗な180度の虹が架かっていた。
この世のものとは思えないあまりに美しい光景に言葉もなく息すら止めてうっとりと見惚れていると、
「知っているかね?夢を追い続ける者のことをRAINBOW CHASER(レインボー・チェイサー)と呼ぶのだが、他にも冒険者のことを指す意味もある。すなわち君達のことだ。」
通路を挟んだROXYの向こう側から、会長がなんとも素敵なお話を聴かせてくれた。
うん、突き落とされた恨みはこの際忘れてあげることにしよう。
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