FLY HIGH

「CANDY、慌ただしくてすまんな。」

今度こそ正真正銘のトリプルビルが画面に登場した。


「お気遣いなく会長。それよりも火急な用件とはなんでしょう?」

情況は十分理解しているつもりなので、早速用件伺いに入った。


「うむ、先に事情を説明しておきたいのは山々なのだが、電話やメッセンジャーでは話せんのだよ。なのでキミにこうして来てもらって直接対面した上で、説明したいのだ。」


「なるほど、判りました。今はこうしているしか有りませんから、お話はお会いした時に伺いましょう。」


「本当にすまんなCANDY。なおキミに何かあっても当局は一切関知しないので、そのつもりでいてくれ給え。」

ん、何処かで聞いたことのある台詞ね。


「なおこのパソコンは30秒後に自動的に消滅…」

あたしはPCの電源を強制オフした。

会長には申し訳ないが、煩わしいアメリカン・ジョークに愛想笑いをする気分じゃない。

まったくなんであたしの周りにいる連中はこうなのだろう?

おかげで退屈はしないが、毎回悪ふざけに合わせる身にもなって欲しい。

あたしはウエストバッグからiPodを取り出すと、マーシャルのヘッドホンを耳に装着した。

ニッケルバックの重厚なギターリフが、あたしの中に溜まったストレスの塊を全て吹き飛ばしてくれた。



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