第3話

付き合って一年が経った。

そして、今日はドラマCD付き第四巻の発売日だ。

キャスト・監督など今回のドラマCDに関わっていただいた皆さんのお陰でとても面白いドラマCDが発売された。

どのくらい売れているのか気になり今、美梨みりさんと本屋やアニメショップ巡りをしている。

ゆうさん! ここのお店も売れきれですわよ。これで五件連続売り切れです! キャスティングであんなに白熱したかいがありましたね」

「うん。やっぱりゆんさんをヒロインとして入れられたのが大きいかなぁ」

ニヤニヤしていたのか、あまり無い脂肪を美梨さんはつまむ。


 《リアルと妄想》


その後、僕が目を覚めたのは二日後の病院のベッドだ。

美梨さんと二人で本屋めぐりをした所まで覚えているが何故ここにいるのかは分からない。

体も痛い。

腕と足が全く動かない。

窓を見ると雲一つない綺麗な青空。

「優さん。大丈夫ですか?」

美梨さんが病室に入ってくる。

「大丈夫では無さそうだね・・・・。僕はどうしてここにいるの?」

「本屋めぐりをしている途中にアクセルとブレーキを間違えて踏んでしまったと言うご老人に引かれてしまったんです。かなり遠くまで跳ねられて生死をさ迷っていたんですよ。もお本当に起きてくれて良かったです」

そうか。事故にあったんだ。

「主に左側が強く当たったらしく、左腕と左足が折れています。骨折なのでもう少しで退院できますので安心してください」

何もする気にならずただぼっーと空を見上げることを退院するまでやっていた。


 《リアルと妄想》


入院していたので、五巻の発売を一ヶ月送らせていただいた。

内容は入院中に少しは決めていたのですらすら書ける。

「優さん・・・・締切もありますけど締切のせいで寝たきりだった体をいきなりーーーー」

「ありがとう。大丈夫だよ! ほぼ骨折で入院していただけなんだから。でも、心配してくれてありがとう」

優はこの時、ある重大な決意を固めた。


 《リアルと妄想》


骨折した所もだいぶ繋がってきた。

毎日片手でこつこつ書いてきた五巻も完成した。

何度も直しと美梨さんに言われて泣きそうになった事もあったが何とか完成できてよかった。

今日は久しぶりに美梨さんとデート中です。とても楽しいです。はい。


ほぼ普通の暮らしが出来るほど完治してきたが、まだ体を動かすのは怖いので家から少し離れた巨大ショッピングモールに来ていた。

本当ならアミューズメント施設へ行って体を動かすつもりだったのだが・・・・申し訳ない。

どれほど巨大なショッピングモールかというと東京都にあるドームが三個丸々入るくらいの大きさだ。

三百以上の専門店が入っている巨大ショッピングモールには映画館もあり一日いても飽きない施設だ。

美梨さんが立ててくれた今日の日程は映画→お昼→買い物の予定だったのだが始めから予定が狂ってしまった。

『apple』と言ういま流行りの恋愛キュンキュン映画を見たかったらしいが流行りということもありチケットが夜の部しか残っていなかった。

それも最後の二枚。

ギリギリ二枚買えたがよく隣同士が残っていてくれたと二人でチケットに感謝の気をこめた。傍からみると変人カップルに思われたかもしれない。


車で来ていたので買い物→お昼→買い物→映画の予定に変えた。

大雑把にショッピングモールの中を説明すると

一階・食品売り場

二階・洋服や日用品売り場

三階・家電製品や本屋など多目的

四階・フードコートなどの飲食店

五階・映画館やゲームセンター

なので、午前中に三階を回って、午後は映画の時間まで一・二階を回ることになった。

まず行くところは二人とも行きたかった本屋だ。

「っひろー!」 「っでかー!」

家の近くにある本屋と違い規模がでかくライトノベルコーナーを探すのが大変だった。

一番広く設けられていた銀文庫の中で『放課後の宮殿。』が一番広く設けられていた。

「優さんやりましたね! こんなに広く設けて頂いているのにも関わらず今の時点では一番売れてますよ!」

「ドラマCDの効果もあったのかね! 本当に美梨さんを始めからいろんな人に感謝だね」

そんなことないです。感謝して下さるのは嬉しいですが締切ギリギリに書き終わるのではなく余裕を持って取り組んでくださいとか言われるのかと思ったが僕の腕を両腕で抱きついてくる。

とても可愛く嬉しいのだがいつもの威勢がないのが少し心配だ。

かおもあかくなってるし、大丈夫かなぁ?

お昼を食べ、二階で洋服を買いお待ちかねの映画の時間となった。

可愛い洋服などは車の中に置き、映画館へと向かう。

『apple』はある事件で亡くなった彼氏のため過去へ行き事件を解決し、彼氏が亡くなった未来を変えるという物語。

塩味のポップコーン(Lサイズ)と飲み物(Mサイズ)を買い映画館の中へと入る。

前の方の席で少し首が痛くなりそうな席だが見れるだけましだよね?

CMが終わりそろそろ映画が始まる。

ポップコーンを食べようと手を伸ばすがあ、あれ?

Lサイズのポップコーンが映画が始まる前にすべてなくなっている。

美梨さんの口の周りには塩がいっぱいくっついてる。

ハンカチで優しく口の周りを拭いてあげるとその腕をそのまま自分の胸元にもっていき抱きかかえる。

手のひらは足と足の間。

腕は胸と胸の間。

ごめんなさい。最高です。

映画が始まっていたらしくいきなりキュンキュンするシーンだったらしく抱きかかえていた腕をさらに強く抱きかかえる。

もう胸には完全に当たってますね。

キュンキュンするシーンでは毎回強く抱きかかえ、それ以外のシーンでも強く抱きかかえる。

要するに腕が折れそうです。

幸福を味わったから神様からの罰ですか?

神様は道程なの?


 《リアルと妄想》


映画が終わり腕も解放された。

太陽は姿を消し外は暗くやっていた。

このショッピングモールは海の近くにある。

浜風に当たりたくなり海へ向かう。

太陽がいない時間には当たり前だが浜辺に人はいない。

「映画にもこんなシーンがあったね」

映画では高校時代に二人で夜遅くの海へ行き水をかけあっていた。

「私たちも行きましょ!」

美梨さんは僕の手を引っ張り海の中へ入っていった。

「優さん! 行きますよ〜」

映画のワンシーンのようにバシャバシャとかけあう。

とても寒い。でも、寒さなんか忘れさせてくれるくらい楽しい!

どのくらいかけあっただろうか。

優はぴたっと体を止めた。

「優さんどうしたの?」

優は走り出し、美梨に抱きつき唇を奪った。

「んう」

美梨さんから力が抜け今にも倒れそうだ。

倒れそうな美梨さんを立たせ跪く。

映画には無かったシーンで美梨は何が起きたのかわからず固まる。

優はポケットから小さな箱を取り出し箱を開け美梨に中身を見せた。

「美梨とこれから先、ずっと一緒に笑っていきたいと思う。結婚してほしい」

何もひねらず直球勝負をした。


 《リアルと妄想》


五巻が発売されると同時に嬉しい知らせが来た。

「優! 嬉しいニュースだよ! ついに放課後の宮殿。が、アニメ化までたどり着いたよ! これからはいっそう頑張らなくちゃね! まぁどうせ無理だとは思うけどね♡」

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リアルと妄想 わ→たく。 @yuu_minase

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