第2話

とまぁ〜ここまでとんとんとんとやって来ましたが、とうとう今日は発売日から一ヶ月記念です!

付き合って二ヶ月半です。はい。

いや〜何度も経験はしてますがドキドキして眠れないし売れているか結果を知るのが怖いです。


「それでは水瀬みなせ優先生。結果をお伝えします」

ゴクリと唾を飲み込む。

「嬉しいニュースと悲しいニュースどっちから聞きますか?」

「悲しいニュースからお願いします」

美梨みりさんはカバンから先月発売した作品の売上表を見せてくれた。

新作作品は僕の作品ともう一作品ある。

もう一作品の作者は僕の高校の直接の後輩で、僕作品を読んで小説家になろうと決めてくれたかわいいこうはいだ。

後輩も僕と同じでデビュー作はヒットしたが、それ以降はぼちぼちらしい。

そんな後輩と同時期に新作をだした。

そして、かなりの大差をつけられ負けた。


正直言うと後輩に負けたのは悔しい。

しかし、僕にはまだまだ挽回できるチャンスはある。

僕のデビュー作である「内田まことの武勇伝」(略語は『うちぶゆ』)のネット配信ラジオ番組が僕にはある。

内田まことはアニメ化もした作品で、原作が終わったのにも関わらずラジオ番組は名前が少し変わったがまだ続いている。

パーソナリティーは内田姉弟きょうだいこと内田咲彩さあやさんと内田風馬ふうまさんだ。

次回が確か僕がゲスト出演するので丁度いい機会だし宣伝もさせていただこう。

「優先生。相談があるのですが・・・・」

 美梨さんも同じことを考えていたそうでラジオで宣伝させていただくことになった。


「嬉しいニュースは・・・・」

僕の作品が発売された全ての売上表のデータを見せてくれた。

「嬉しいニュースは今まで出した作品の中で一番多くの方に買っていただけたことです」

自信作だけあっていろんな皆さんに手に取っていただけたことはとてもうれしい。

「しかもですよ! ネットの声も良いコメントが多いですし、ファンレターもこんなに来てます」

初めてかもしれない。

ネットの声でうれし涙を流すのは。

ファンレターがデパートの大きめの紙袋一枚にあふれるくらい届くのも。

これもすべて美梨さんが気づかせてくれたこと。

感謝の気持ちを込めて目を閉じてもらい重ねた。


 《リアルと妄想》


「咲彩と風馬の姉弟ちゃんねる! 今回も始まりました」

「元々は水瀬優先生のデビュー作『内田まことの武勇伝』のインターネットラジオ番組として始まったこの番組ですが、早いこと第一回の放送から今日の放送を数えますとなんと――――」

「百回目でございます」

 スタジオから大きな拍手や花束がパーソナリティーの二人に渡される。

 「そして今回は百回目にふさわしいゲストの方が来てくださっています。そではお呼びしましょう。水瀬優先生です」

「みなさんお久しぶりです。三回目の登場の水瀬優です。よろしくお願いします」

スタジオの雰囲気が温かく、何度か話したことのある二人がパーソナリティーだったこともあり、妄想のように緊張することなく話せた。

ふつおたやゲームコーナーなど色々なコーナーを楽しんだ。

 時間の流れは速く、あっという間にラストのコーナーに入った。

 「ラストはお知らせのコーナーです。今日は水瀬先生よりお知らせがあるんですよね?」

 「はい。そうなんです。僕の最新作『放課後の宮殿。』が先月より銀文庫さんより発売しました」

 スタッフさんが用意してくれたのか机の上には『放課後の宮殿。』第一巻が置いてあった。

 はじめはイラストについての話が膨らみ、それからストーリーの話に入った。

 「どんなストーリーなんですか?」

 「それはですねぇ~」

 「お姉ちゃん」

 お姉さんの咲彩さんはシュンと首を縮こませる。

「今回の『放課後の宮殿。』はお二人に主人公とヒロインを演じていただいた『内田まことの武勇伝』のようにバトル系の物語です。『うちぶゆ』とは違い中学生を主人公とし、恋愛要素も含まれています。ごくごく普通の中学生で野球少年だった主人公の杉並太陽すぎなみたいようがリザードマンのような姿のドラグレスと言うタクティス(悪者)を仲間と一緒に倒して封印していくという物語です。各書店で税抜き五百三十円で販売されていますのでぜひ買って読んでください」

 しっかりと宣伝し三十分のインターネットラジオを楽しんで家に帰った。


 《リアルと妄想》


家に帰り、美梨の手料理を食べた後、優は二巻目の続きを書き始めた。

 二巻目には新キャラクターの『紅葉もみじ』が登場する。

 紅葉は・・・・ある事情により多くのことは話せないが、太陽たちの新しい仲間だ。

 「○○なのじゃ」と語尾に特徴のある紅葉ちゃんはみんなの妹的存在になるのではないかと優は思っている。


 《リアルと妄想》


今日は一巻の発売から三ヶ月が過ぎ二巻目の発売日です。

 今日まで一巻の売り上げを聞かずにいたのでラジオの効果が出ているのか楽しみであり、とても不安です。

 「それでは行きます。じゃじゃん!」

 美梨さんが取り出した三ヶ月の合計売上表を見ると後輩を二倍近く抜いていた。

 「うぉぉぉぉぉぉおおおおおおおおお! 新記録こぉぉぉぉぉぉおおおおおおおおおおしんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんだぁぁぁぁあああああああああああ!」

 「よかったです。本当によかったです。もしも、売れ行きがッヒク、伸びなッヒクかったら辞めてッヒクもらおうかとッヒク思ってました」

 美梨さんも泣きながら喜んでくれた。


 《リアルと妄想》


二巻も無事に売れ行きが順調に伸びていき、書店に在庫が無い状態が続くようになった。

波に乗って三巻を出すと銀文庫さんより、嬉しいお声がかかった。

銀文庫さんは来年で創立二十年を向かえる歴史を持つ出版社だ。

創立二十年を記念して次回の四巻にドラマCDを付属するというありがたいお言葉をいただいた。

そして、今日は『放課後の宮殿。』ドラマCDのキャスト決めだ。

「頑張ってきてくださいね。よく耳がタコになるって聞きますがタコにならないで帰ってきてくださいね」

「うん。頑張っていい人選んでくるね」

まだ付き合って八ヶ月だが、出かける時は今や新婚夫婦みたいですね。はい。


 《リアルと妄想》


オーディション会場につきいろんなお偉いさんに挨拶をし、所定の場所に移動し開始まで待つ。

オーディション会場はピリピリとした緊張感がこちらまで伝わってくる。

僕の好きな水瀬ゆんさんもヒロイン役のオーディションに参加してくださってる。

もうヒロインは決まりですね。

って好き嫌いで決めたら失礼だからそんな事では選ばないけど・・・・。

などと考えているとオーディションが始まった。

主人公の『杉並太陽すぎなみたいよう』は中学生で、声変わりもしているので男性声優の方にしてもらいたいが、女性声優の方も多く受けてくれているので慎重に選ばなくてはいけない。

ヒロインの『大宮桜おおみやさくら』は中学生なので少しロリっぽい声の声優が好ましい。

幼なじみな『吉川夏美きっかわなつみ』は声の高さでいえば高い方を狙い目に。

モコはフランス語を話す事もあるのでフランス語をうまく話せる方。

紅葉もみじ』は「この人しかいない!」と思わせてもらえる人がいなければ『悠木赤井ゆうきあかい』さんしかいないと思う。

内田姉弟も参加してくださっていてもう声優好きにはたまらないですね。はい。


 《リアルと妄想》


僕の作品だからなのかあまり新人声優さんをみない。

二人まで絞った結果、今回候補が上がった皆さんはこの方達。


杉並太陽  → 内山昴うちやますばる・内田風馬


大宮 桜  → 水瀬ゆん・内田咲彩


吉川夏美  → 山下九海やましたここみ田中依海たなかいなみ


モ  コ  → 佐倉萌音さくらもね徳井海とくいうみ


紅  葉  → 悠木赤井・高橋依李たかはしえり


ここまで絞ったが監督さんは内田姉弟を押してくるのは前回の影響だろうか。

前回の作品ではドラマCDだし、アニメ化になったらキャスト変えもあるから今回は作家がこんな声がいいっていう方を選んでくださいと、適当そうな監督さんだったが今回は簡単には行かなさそうだ。


僕と監督さんの討論は誰も入れないくらい白熱していた。

「なぜ内田姉弟を選んだんですか? 前回の作品が姉弟でやって売れたからですか?」

「そのとおりです。ドラマCDなら確実に売れた方がいいと思います。私が聞いた話によるとドラマCD付きと付いていないのでは、よっぽど好きな声優さんやこの組み合わせ面白いっていう声優さん出なければドラマCDが付いていない方を買うという人が多いいです」

「監督さんは好きな声優さんなら売れると言いましたよね? 今や水瀬ゆんさんは水樹夜々さんくらい知名度があり名前が出るなりファンの方ならこの作品を読んだことのない方でも買っていただけると思います」


ヒロイン争いの結果は僕の勝ちでキャストはこうなった。


杉並太陽  → 内田風馬


大宮 桜  → 水瀬ゆん


吉川夏美  → 田中依海


モ  コ  → 徳井海


紅  葉  → 悠木赤井


アニメ化までたどり着き、僕の思ったキャストにしよう。

優はギアを変え、決意を固めた。

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