はた迷惑な神の御使い

 自称大学生の私ですが、ただ今夏期休暇中でして、実家に絶賛帰省中。

 ゴミ捨てお願いねー、と母に頼まれて、ゴミ袋を両手に道を歩いていたわけなのですが、おや、遠くに見えるゴミ捨て場に何やら黒い影がうごめいているではありませんか。

 カラスです。二、三羽集まってぎゃあぎゃあとやってます。あちゃー。


 それにしてもカラスというのは不思議な鳥ですね。あの黒さと言ったら、身近な動物の中でもトップクラスでしょう。くちばしから尾羽に至るまで黒づくめ。これほど象徴的な黒さを持った動物が他にいるでしょうか。

 とはいえカラスは必ずしも黒いとも限りません。色素が欠けて真っ白なアルビノのカラスなんぞは、たいそう神々しいものであります。

 そういえば、ギリシャ神話だとカラスは元々白かったんだとか。神話ではアポロンの使いだったんですが、何かでアポロンの怒りを買って、罰として真っ黒になってしまったんですって。

 やっぱり昔の人も、あのカラスの黒さには何か理由が欲しかったんでしょうね。

 おっと、神様とカラスといえば、日本の八咫烏やたがらすも忘れちゃいけません。

 こちらも神様の使いとされる八咫烏ですが、太陽に住んでいるとか言われたりもします。何でも太陽の黒点をカラスだと考えたんじゃないか、とか。


 さて、そんなことを考えていると、いつしかゴミ捨て場の前に来ていました。カラスどもは相も変わらずぎゃあぎゃあやっています。

 私はすう、と息を吸い込みました。


「やい、カラス! お天道様が見ているぞ!」


 私の大声にびっくりして、カラスは一目散に飛び立ち――ません。何ともまあ図太い神の使いです。

 えいやっ、とゴミ袋を振り回して一先ず撃退しましたが、たぶんまたやって来るでしょう。

 アポロンでもスサノオでも何でもいいから、ちょっとこいつら懲らしめてくれませんかねえ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る