続、魔女

死なない男がいるのなら

願いを叶えてあげましょう

私の大事なあのひと

会わせてくれると言うのなら

願いを叶えてあげましょう


だって私は魔女だもの


小柄な男に手をひかれ

王の前に進み出る

瞼を閉じた魔女の言葉に

王は頷き答えを返す


わかったきっと会わせよう

だからどうか

眠らせてくれ

そこに座る銀髪の

娘を永く眠らせてくれ


それではそれでは

晴れた夜

次の晴れた満月の夜

御髪麗しき御息女には

眠っていただくことにしましょう


ぼんやり見上げる王女の顔に

自分の顔を近づけて

魔女は瞼をゆっくり開き

甘く小さな声で

囁く


綺麗な色ね

昔々あのひとと見た

竹の色にそっくりよ

きっと

目覚めさせてあげるわ


こぼれる黒髪に隠されて

瞳の色は見えないけれど

微笑む姿は聖母のようで

王はその目を奪われた




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