第16話 ファッションセンス

自分に自信を付けようと、もうひとつ努力していたのは、ファッションセンスだった。


自分に自信が持てなかった原因を、まともに考えたわけじゃなかった。

だが、それでも、原因としてなんとなく感じ取っていたものはあった。

ひとつは、他の誰にも負けないと思えるスキルがなかったこと。

もうひとつは、自分の容姿に自信がなかったことだった。


先に書いたとおり、自分が嘲笑されていたのは、自分のファッションがダメダメだったからだろう、となんとなく考えるようになった。

だったら、自分はファッションセンスを磨くしかない。

自分はオタクだ。

おそらく、自分のファッションには、オタクと見えるような要素が何かしらあるのだろう。

それをどうにかしなければ、ダメなんだ。

オタクに見られないようにしなければダメなんだ。

大学5年目までは、自分のファッションについて、がむしゃらにあがいた時期でもあった。


まずは、ファッション誌を購入するようになった。

ファッションセンスのある友人Nの薦めてくれたファッション誌を、毎月購入するようになった。

これが、わたしのファッションセンスがよくなったベースになった気がする。


次に、自分のお金で洋服を買うようになった。

大学1年目までは、いつもユニクロで、親の金で買ってもらっていた。

大学2年目以降、自分のお金で、自分でちゃんと選んで買うようにした。

さらに、ユニクロ以外の場所で買うようにした。

とは言っても、当時の自分は大して洋服屋を知っていたわけじゃなかったので、地元のしまむらのようなお店とか、Right-onが多かった気がする。


そんなふうにして、自分のファッションセンスをどうにかしようと、あれこれとやった時期だった。

だが...それもまた、留年を重ねてしまった一因だった。

自分のファッションをよくしなければと思い詰めるあまり、ファッションがまともじゃなければ、大学に行くことはできないと思いこむようになってしまったのだ。

自分に対してOKが出せないような、自信がない容姿で大学に行くことができなくなってしまったのだ。

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